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Sideころん
ついとっさのことだったとはいえ、Lapisくんの口を塞いじゃったな。
ここは安心してもらう場所なのにこれじゃ手を出したも当然だ。
Lapisくんにあんなに悲しそうな思いをさせてどうする。
そもそも、だいきりにあんなにたくさんの荷物を持たせていたこと自体、僕の管理不足だ。
人手が足りないのはしょうがないことだし、常連さんたちも色々手伝ってくれて、ボランティアの子が来てくれて、これ以上ないくらい恵まれている環境なのは分かっているけれど……。
ただ、僕が一つ願うのなら、心音くんのように傷つく子が一人でも減ってほしいということだ。
それが簡単には叶わなくても、せめて居場所をなくしてしまった子たちの『家』になってあげたい。
心音くんが初めてここに来た時、何もかも諦めたような目で、全ての物事に怯えていて、僕は心のどこかで「可哀想」なんて思ってしまった。
でも、『可哀想』なんていうのは、僕自身が勝手につけたレッテルであって、それを決めるのは僕じゃない。
勝手に可哀想だと憐れむことは、本人への侮辱にしかならない。
それでも、僕はどうにかしてあげたいと思う。
『助けて』のサインを絶対に見逃しちゃいけないし、見て見ぬふりだって絶対にしない。
弱気になるな、ころん!
全部をどうにかすることはできなくても、目の前のことが少しでも変わるように、僕が!
「よし!」
パンッ、と自分の両手で勢いよく両頬を叩いた。
「!?」
少し強めに叩いたせいで、頬がヒリヒリする。完全に目が覚めた。
「よーし! これ、ちゃっちゃと片付けちゃうよ〜!」
「……? はいっ!」
僕がいつもの調子で声をかけると、だいきりも調子を取り戻したように元気に返事をして、散らばったアメニティを拾い始めた。
Side Lapis
それから数分間、俺はあっとさんに連れられて、他の部屋よりも少しこぢんまりとした個室にいた。
「手首、少し赤くなってるね」
あっとさんに優しく指摘されて、初めて気がついた。さっきぶつかって床に手をついたとき、何かしてしまったみたいだ。
「応急処置だけ、しとくね」
あっとさんは驚くほど手際よく、救急箱から湿布を取り出して俺の手首に貼ってくれた。冷たい感触が肌にじんわりと染み込んで、痛みが引くと同時に、不思議と心まで落ち着いていく。
そこへ、荷物の片付けを終えたころんさんたちが戻ってきた。
「やっぱり怪我してる! Lapisくん、あんまり我慢しちゃダメだよ」
「本当にごめんね……!」
ころんくんに心配され、だいきりさんが申し訳なさそうにあわあわと頭を下げている。
そのだいきりさんの顔をよく見ると、彼もあっとさんと同じように、左右の目の色が赤と青のオッドアイだった。あっとさんとはちょうど左右の位置が逆になっている。
(ここの人たちは、みんな個性的だな……)
そんなことをぼんやりと考えているうちに、胸の奥から、小さな勇気が湧き上がってきた。
「あの……ころんさん……」
「ん? どうしたの?」
「あの……俺、UNOってやつを、してみたいです……」
俺の口から出た予想外の言葉に、ころんさんは一瞬だけキョトンとした顔をした。
急に場違いなことを言ってしまったかもしれないと焦り、俺の心臓がまたバクバクと脈打ち始める。
「あっ……えっと、その……」
「いいね! さっき心音くんたちもやってたし、一緒にやろっか!」
ころんさんはすぐに満面の笑みを浮かべて頷いてくれた。その笑顔を見た瞬間、張り詰めていた心がすっと軽くなるのが分かった。
ころんさんと一階へと階段を降りていく。
何人かのお客さんやスタッフがいたはずのテーブルだったが、そこには、さっきの紫色の髪の男の子がポツンと一人で残って、散らばったカードを集めていた。何やらブツブツと悔しそうに独り言を呟いているその姿に、少しだけ驚いてしまう。
「心音くん、僕たちともう一回UNOしよう!」
ころんさんが楽しげに声をかけ、俺もその席に混ぜてもらうことになった。
彼自身の名前は『心音』というらしい。
……楽しかった。本当にいつ振りだろう。
結果は、俺の勝ちだった。
本当にたまたま配られたカードの運が良くて、偶然うまくいっただけなのに、まさか自分が勝てるとは思わなくて内心ものすごく驚いていた。
「Lapisくん、すごいじゃん! よくあそこから勝てたね!」
「たまたまでも、あそこから上がるのは本当にすごいよ」
二人があまりにも真っ直ぐに褒めてくれるから、どうしていいか分からなくて、少し耳が熱くなるのを感じた。
その時、カウンターの奥から元気な声が店内に響き渡った。
「心音くん、そろそろ時間じゃない?」
スタッフの人に声をかけられ、心音くんがハッとしたように壁の時計を見上げる。
「本当だ! ころんくん、また学校終わったら来ます!」
――『学校』。
たった二文字、それが聞こえた瞬間、世界の景色が一変した。
頭の中が真っ白になり、背中を冷たい汗がどっと伝い落ちる。
自分でその言葉を頭の中で考えるのとは、訳が違う。他人の口から生々しく放たれたその単語を聞いた瞬間、胸が壁で塞がれたように、呼吸の仕方が分からなくなった。
ヒュー、ヒューと、喉の奥が引き攣るような音が鳴る。うまく息が吸えない。
「ラピスくん……大丈夫?」
「具合悪いのかもね⋯」
遠くの方で、二人が何かを言っている。だけど、その声は届かない。
「心 く 、 っ ら い」
ころんくんの声が聞こえた気がしたけれど、もう何もかも分からなかった。
視界が急激に狭くなり、ぐらりと世界が大きく傾く。
ころんくんに肩を支えられながら、多分、二階への階段の前ところまで歩いていたんだと思う。
でも、そこで俺の視界は完全にシャットアウトされ、意識を真っ暗な闇の中へと手放した。
コメント
3件
Sideころんの「可哀想」と憐れむことが侮辱になるって気づき、めちゃくちゃ刺さったわ。それでいて目の前の子を救いたいって奮い立たせるところ、優しさがカッコいい…! LapisくんがUNOしたいって自ら言えたシーンは胸熱やったし、心音くんの「学校」の一言でフラッシュバックして意識飛ばすラスト、息できなくなった。続きがマジで気になる…!
ゆうな
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#みじかめです、!
夢仁羽
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