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「あいちゃん、そんなに震えて……どうしたの?」無一郎の声は、あくまで柔らかく、まるで子どもに語りかけるように優しかった。
けれど、その手に握られた刃のような冷たさと、笑みの奥に潜む狂気が、全身の肌を粟立たせる。
あなた──あい──は、彼の手の中で怯えていた。
逃げようとしても、無一郎はすぐにその細い指先で首元をそっと押さえつける。
「大丈夫。怖くないよ」
「だって僕、優しいから」
その声に、涙が一粒こぼれ落ちる。
優しいのに、なぜ。
なぜ、こんなにも逃げられない。
「ねえ、泣かないで? かわいそうなあいちゃん」
「でも、泣いてる顔……すごく、きれいだよ」
無一郎は微笑みながら、あいの髪に指を滑らせる。
そして耳元に顔を寄せ、囁く。
「もっと、泣かせたくなる」
ゾクリと背中が震える。
優しく抱くような手付きで、彼はあなたを床に座らせると、
太ももへ、ふわりと手を置いた。
「……ここも、触ったら泣いちゃう?」
「泣いていいんだよ、ほら。僕が、許してあげる」
「優しい言葉で、壊してあげるから──ね?」
あいは、もう言葉を返せなかった。
ただ、彼の“優しさ”の中で、静かに崩れていくしかなかった。