テラーノベル
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「早くしろ!食堂埋まっちまうぞ!」
「分かってる。先に行っていろ。」
いつもの、慌ただしい昼休みが始まった。
この高校に入ってもう2年になるが、食堂で満足に食べた事はあまりない。
最近の人間はみな食べ盛りなのか?
俺は一ノ瀬論(いちのせろん)。
高校2年生。文系で、本が好きだ。
小説家志望。
名前の由来は“自分の意見はちゃんと持て”という母からの教えだ。
若干変な名前だが気に入っている。
「あっ、ロン!こっち!」
食堂に入ると、席はいつもとは比べ物にならないほど空いていた。
その1席で友人の中島が手を振っていた。
「席、取れたんだな。」
「おうよ!俺にかかればおちゃのこさいさい…と言いたいところだが、今日はこの通り、なぜだかガラガラだ!」
今日、何か行事でもあったか?
高校内での行事くらい把握している気でいたが。
「飯食ったら俺らも外、出てみようぜ!」
「喜んで遠慮しておく。」
「そんな!ノリがわりィ!」
「いつも通りだろう。」
中島がうるさいだけではないか?
「まぁいいや!俺は行くから!後で何があったか教えるな!」
「分かったから、早く飯を食え。」
小2か。
午後の授業の時間だ。って、あれ?
全然人がいないじゃないか。
いるのはひねくれ者の千鳥山と、皮肉屋の睦月のみ。……皮肉屋もひねくれ者の1種か?
「(中島までいない。)」
早くしなければ教師が来るぞ。
千鳥山が舌打ちをし、それを睦月が睨んだ。
と、その時。
バタバタバタバタバタ!!
大人数が駆けてくる音がする。
「高校生になってまで廊下で鬼ごっこか…。」
俺は呆れる。しかしはて、なんだか足音が近づいてきているような。
バンっ!ドアが開く。
「おっと、まさかここに入ってくるとは思わなんだ。」
「「やっ、やべぇぞ外!」」
そんなに大声出さなくても、ここには君たちを抜いた3人しかいないから良く声は通ると思うぞ。
「チッ。たくうるせェな。ちっとは黙れ、自らがうるさかったんだと自覚するまで。」
「こればかりは千鳥山と同意見です。休み時間くらい静かにしてください。それともずっと動いていないと死んでしまうマグロなんですか?いや、マグロは静かだからそっちの方がマシですね。」
「おい千鳥山、睦月、言い過ぎだぞ。だが確かにうるさいと俺たちまで連帯責任で怒られるからやめて欲しい。人様に迷惑をかけるというのは、後になって後悔するものだ。今のうちに心を改めて席につき、他の人のためになることをした方がいいと思うぞ。」
それで上手く諭せれば良かったのだが、人間というものはそこまで甘くないのだ。
「とっと、とにかく見てみろ、ノリ悪3人組!百聞は一見にしかず!」
ノリ悪3人組って…俺たちをひとくくりにしないでくれ。
「っだークソ!センセー来るだろーが!てめェらさっさと席に、」
バゴーンっ!!!
千鳥山の言葉を遮るように、外で爆音。
「……何事だ。」
「だからヤバいって言ってんじゃん!」
「センセー達もみんな外出てるよ!」
なぬ、教師までもが?
「「「お、おぉ…?」」」
高校の庭園に出た。
教頭お気に入りの池やベンチをぶち壊して、謎の物体が煙を出しながら地面にぶっ刺さっている。
その状況を目の当たりにした俺、千鳥山、睦月の3人は声にならない驚きをどうにか音に出した。
謎の物体からは煙がもくもくと昇っている。
辺りを見渡すと、物体の近くで学校長と教頭と理事長と…見たことがない奴。
服装もおかしいし、この高校の人間じゃないのか?
俺たちは少し早足でふくよかな体型の学校長の元へ向かった。
声をかける。
「校長。何があったんですか?」
「あ、あぁ、一ノ瀬くんか…。千鳥山くんと睦月くんも来てくれたんだね。まぁちょっと…ややこしい事になっていてね…。」
汗をふきふき、学校長は謎の人物に目を向ける。ソイツは怒る教頭の前でヘラヘラとしていた。
「ほんとー、すいません。オレの不注意のせいですねー。」
「キミ!本当に謝る気はあるのか?!」
「ありますありますー。」
見た事のない格好。
ちょうど、テレビとか映画でよく見る、宇宙戦隊のような感じか。白いシャツの上にピチッとした上着を羽織り、同じようにピチッとしたズボンを履いている。また、小さなワイヤレスイヤホンのようなものも付けている。ついでにゴツいマスクも。
「おいテメェ。」
千鳥山がいつもの調子で話しかけた。
「高校に何の用だ。俺の時間が無駄になってんだから、ちゃんとした謝罪をしてもらわねぇと気がすまねェんだが?」
俺的には、あまり良くない態度だと思う。
初対面の人にこの態度は。
若干呆れながら、相手の反応を待った。
なんとなく、千鳥山の威嚇と覇気は学年で1番怖いと思うが…。
そんな心配を他所に、意外にも謎の人物は挑戦的な態度をとった。
「別に、ココに用はないよ?ちょーっと乗り物が壊れちゃってさ。あとキミの時間はボクに関係ないから。ごめんね?」
「あァん?」
「落ち着け千鳥山。挑発に乗っては相手の思うつぼだ。まずは話し合いをして、それでもダメだった場合のみ…解せぬが、殴り合いに入っていい。」
「いやよくないでしょう。なんで一ノ瀬はいつもどこか1つ抜けてるんです?」
むむ、俺はなにかおかしいことを言ったか?
「まぁとにかく。アンタ何なんです?」
「俺?宇宙防衛軍所属異星調査省実働部行動班副班長。」
予想だにしない漢字の羅列。
全員が1度行動を停止した。
数秒後、千鳥山が再び吠える。
「てめぇ、からかってんのか?!」
「えぇ?からかってなんかないよ。正直に答えたんだから、もうちょっと感謝してよね。」
腕を組んでそう言い放った宇宙なんちゃらの副班長は、嘘をついている訳では無いように見える。にしてもなんて長さだ。
「……すまん、多分睦月は名前を聞いた気でいたのだろう。お前の名前は何なのだ?」
「あぁ、名前ね!えぇとね、俺はトウドウ!」
東堂か。
見た感じ俺達と同じくらいの年齢だろうか?
「それでその、宇宙なんちゃらってなんだ?」
「宇宙なんちゃら?宇宙防衛軍のこと?キミら、宇宙防衛軍知らないの?!」
「すまないが、存じ上げない。」
トウドウは「えー!」と声を上げた。
「宇宙界中の憧れじゃん!知らないなんてありえない!」
「その、宇宙防衛軍とはどの機関が運営しているんですか?“宇宙”というからには気象庁?それともNASAの新しい開発?」
睦月が妥当な質問を投げかける。
しかしトウドウは、首を横に、一振り二振り三振り。
「キショーチョ?ナサ?なにそれ。宇宙防衛軍は宇宙防衛軍だよ。」
我々は目を見開く。気象庁もNASAも知らないだと?
「…アンタ、出身どこです?情報が入りにくいとこに住んでんですか?」
「生まれたのはナユカ。住んでる場所というか…今は定住してないんだ。」
なゆか?ますます分からない。
海外だろうか。
「定住してないって…遊牧民か何かかよ?」
冷静になった千鳥山が問う。
「ううん。俺が生活してるのは宇宙船だから、住んでる場所はないってこと。
「「「宇宙船??」」」
トウドウは何かを指さす。その先を見ると、地面にぶっ刺さった“アレ”。
「ア、アレ、ロケットなのか?」
「ロケットとはまた違うよ。“宇宙船”。わかんないの?常識でしょ?」
どこが『常識』なのか。
宇宙防衛軍、宇宙船、そして何よりトウドウの知識量の乏しさ。
これだけを考えると…正直、地球人とは思えんが。
「おいトウドウ、お前は地球人なのか?それとも宇宙人なのか?」
「一ノ瀬、なに『コーヒーにするか?それとも紅茶にするか?』みたいなノリで聞いてんですか。もっと重要なことでしょうに。」
「コーヒーで頼もう。」
「別に聞いてないです。というかそもそも宇宙人なんているわけが…、」
「俺は確かにこの星の人間では無いね。」
「いんのかよ!」
どうした睦月。いつもの落ち着きがないぞ。
何が彼をここまで動揺させたのだろう。
「オイお前。宇宙人っつーならショーコ見せろやショーコ!」
「証拠?えー、わかんなーい。そもそも、キミたちは何を持ってして『宇宙人』と決めているの?」
ふむ、難しい問いだな。宇宙人の定義か。
生まれた場所が地球ではない、というのが1番簡単な答えに思えるが、よく考えたら他の宇宙人から見ると我々も宇宙人である。
『外国人』という言葉と同じだな!
「うーん…。」
「なに時間かけて考えてるんですか。矛盾は起きれど、とりあえず“地球外で生まれた人間”としておけばいいじゃないですか。」
「いや、それだとまたおかしな事になる。よく考えてみてくれ。その理論だと地球外で生まれた地球人は地球人では無いことになってしまう。」
「頭こんがらがるわ!!」
よし、こうしよう。『地球外で生まれた地球人以外が宇宙人である』。
「うわぁ、天才の頭って気持ち悪い…。」
「天才というのは天から才を授かった人間のことで、俺は最初から才を授かっていた訳では無いから…。」
「あーあーうるさい、聞こえなーい。」
睦月が顔を顰めて耳を塞ぐ。
隣で千鳥山がトウドウに問いかけた。
「一ノ瀬の論で言うならオメェは宇宙人なんだな?じゃーなんで日本語喋っとンだ。」
トウドウは「そんなの分かりきったことじゃん」と笑う。
「翻訳機だよ。マスク型翻訳機。」
なんだその某探偵漫画のような機械は?
「喋ったことや聞いたことをリアルタイムで翻訳して発することができる…みたいな感じでしょうか?アプリならまだしも、マスク型でそんな機能を組み込む技術、まだ日本に…いや、世界にないですよ。」
睦月はトウドウが宇宙人という事実をまだ疑っているようだ。
とはいえ妥当な意見。そもそもマスクの奥からトウドウの本当の声が聞こえないし、AIの翻訳にしては発音がネイティブすぎる。
が、疑いの目線を送る俺と睦月にトウドウは心底驚いたような顔をした。
「えっ、無いの?この星の文明は発達してるって報告を受けていたんだけど…。言う程じゃないとしたら、そういや君達がさっきから変な質問をしてくるのにも納得できるね。」
千鳥山はまた威圧的な声をあげる。
「あ゙?馬鹿にしてんのか?」
「そうだよ。宇宙船も翻訳機も無い星なんてこの宇宙界じゃ発展途上星ってとこさ。ったく、もっと面白いものが見れると思って自ら志願したのに…!班長、騙したな。」
トウドウも眉間に皺を寄せて言い返す。
2人は睨み合った。
「星規模で馬鹿されるのは初めてだな。」
「だから、なんで一ノ瀬は冷静なんですか…。まだこの人が本当の宇宙人だとは断言できないんですから、とりあえず俯瞰した感想辞めて貰えます?」
コメント
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「定義」第2話、読んだよ〜🥀 タイトル回収が絶妙すぎる…!「宇宙人って何?」って話を、一ノ瀬が真面目に論じ始めたところ、めっちゃ好き。あの場面だけでこの作品のテーマがグッと深まった感じがした。 睦月のツッコミも千鳥山のキレも、それぞれキャラ立ってて笑っちゃう。トウドウ、翻訳機マスクって…某探偵漫画思い出したけど、リアルにあったら確かにすごいよね。 中島どこ行った?ってちょっと気になるけど、次も読むよ〜🖤