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そんな僕を見ながら、天馬くんは少しだけ照れくさそうに笑っていた。
「水瀬さ」
「……うん」
「やっぱ、水瀬も、水瀬の絵も好きだわ」
「…え?」
思わず顔を上げる。
「人に影響受けやすいとか、繊細すぎる部分もあると思うけどさ」
「……」
「そういう水瀬の全部が、絵に出るんだろうなって思う」
「全部……」
「人の良いとこも悪いとこも全部見て、全部吸収して、それで傷ついた分も全部絵で吐き出して。それが、水瀬の絵だと思う」
僕は何も言えなかった。
ただ、彼の言葉が胸の中に染み込んでいくのが分かる。
誰も気づかなかった僕の癖や、僕自身も知らなかった弱さ。
天馬くんはそれに真正面から向き合って、肯定してくれた。
さらに心がぎゅっと締めつけられる。
こんなふうに正面から褒めてもらえることがどれだけ尊いことなのか。
僕は、それをちゃんと理解していたつもりだった。
でも本当の意味で、実感として受け止めることができたのはこのときが初めてだった。
「……ありがとう、天馬くん」
自然と口から溢れた感謝の言葉。
それを聞いた彼は、優しく微笑んだ。
「こっちこそ」
心の奥に温かい灯がともる。
この人と出会えてよかった。
僕は改めてそう思った。
この時の僕は
その先にどんな未来が待っているのかまだ知らずに、ただ静かに笑い合っていた。
◆◇◆◇
放課後のチャイムが鳴り終わるころ
「水瀬」
「?」
昇降口で靴を履き替える僕に天馬くんが声をかけてきた。
「今日さ…もし予定ないなら」
少し間を置いて続ける。
「うち来ない?」
「……え?」
突然の提案に戸惑う。
他人の家に行くなんて経験がほとんどない。
「えっと…」
「いや、無理強いするつもりはないけど」
天馬くんは肩に鞄をかけながら言う。
「親父が昔使ってた画材とかあるんだ。俺も使ってるやつだけど……よかったら見てみてほしいっつーか…」
その言葉に僕の心が動く。
「絵の道具……?」
「うん。油彩から水彩までいろいろあるし、絵筆とかパレットとか……水瀬の好みに合うものがあるかもな~って」
確かに僕の持っている画材は古びたものばかり。
新しく揃える余裕もない。
「天馬くん……迷惑じゃない?」
「全然」
笑顔でそう言われると断りにくい。
「それに」
天馬くんの声が少し小さくなった。
「水瀬とゆっくり昨日みたいに話せたら……って、口実だけど」
「……っ」
その言葉に心が揺れた。
「あの……じゃあ…少しだけ」
「マジで?よっしゃ!」
天馬くんがぱっと顔を輝かせる。その表情に胸が高鳴った。
#シリアス