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#シリアス
二人で並んで歩きながら住宅街に入る。
「ここ左な」
道案内する天馬くんに従っていくと、小綺麗なマンションが見えてきた。
エントランスを抜けてエレベーターに乗り込むと4階のボタンを押す。
「意外と近いんだね」
「近いっていうか……歩いて10分くらい?」
「そっか……」
他愛もない話を交わしながら到着を待つ。
天馬くんの家は3LDKのファミリー向けのようで、玄関には植物が飾られていた。
「ただいまー」
「お邪魔します……」
靴を脱ぐと中へ通される。
「誰もいないから楽にしていいぞ」
「え?」
「親父も母さんも仕事で遅くなるし、弟も剣道の練習中だから夜まで帰ってこないんだよな。だから今日は俺一人」
「そうなんだ……」
リビングに入るとソファーに積まれた服と漫画本が目につく。
「あ、そこ座ってて。飲み物持ってくる」
そう言って天馬くんがキッチンに消える。
言われた通りソファーに座るものの落ち着かない。
他人の家の匂いや生活感に包まれるのは新鮮だった。
「コーラでいい?」
「あ、うん……ありがとう」
テーブルに缶ジュースが2つ置かれる。
天馬くんは向かい側ではなく隣に座ってきた。
「水瀬さ」
「なに?」
「緊張してる?」
「してるよ……っ」
思わず声が裏返った。
「ふはっ、分かりやす」
天馬くんが笑いながら言った。
「じゃあさ」
缶ジュースを置いて立ち上がりながら続ける。
「絵描いてればちょっとはマシになるかもな」
「え?」
「言ったじゃん。画材見せてやるって」
天馬くんの部屋は二階にあるらしい。
階段を上がると少し狭めのスペースに出た。
「ここな」
ドアを開けると、一面壁沿いに設置された棚には大小様々な絵の具チューブが並び
使い込まれたキャンバスが立てかけてある。
「すごい……」
「親父が昔使ってたやつ。自由に使っていいって言われてるから」
天馬くんは机の引き出しを開けながら続けた。
「水瀬、好きな色選んでいいよ」
「え?いいの?」
「もちろん。新品もあるし」
差し出された油絵セットは埃一つついていない。
大切に保管されていたのだと思うと感慨深い。
「じゃあ……青系とか……」
「OK。それ貸して」
天馬くんが素早く道具を取り出す。
「ここで描いてもいい?」
「もちろん」
促されるままに床に敷かれたカーペットに直接腰を下ろす。
久しぶりに本格的な画材に触れる感覚に胸が躍る。
「なあ水瀬、頼みなんだけど。俺のこと描いてみてくんない?」
天馬くんが真正面に座った。
「え?天馬くんを?」
「ほら、水瀬たまに人も描くって言ってたし……どう?」
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