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みどり side
いつもとは異なる視線が集まったことで緊張して、少し顔をこわばらせながらも絡まりそうな舌を一生懸命動かした。
「ソレジャア…」
カッ!とスポットライトが当たる。
【第一発見者、みどりいろの発言】
まずは発見当初の話をしようか。
らだおくんにベッドを譲って、代わりに布団を一枚貰ってクローゼットの中で寝てた。
おかげで朝になる頃には身体中が痛くなって目を覚ましたんだよ…目を覚ますには随分と早い時間…三時ぐらいのことだったと思う。
寝足りなかったけど、もう一度クローゼットや床の上で寝る気にもなれなくて、顔を洗いに一回の風呂場にある洗面台に向かって顔を洗おうと思ったんだ。
…そしたら、レウさんが…死んでたんだ。
【発言終了】
話終わってから震える息を吐く。
ここからは、みんなが気になる点を一斉に質問してくるはず…俺が犯人では無いと思わせなきゃ、俺は犯人としてきっと死ぬことになる…それは嫌だ。
『では、議論を始めましょう』
【第一議論】
らだおくんが恐る恐る手を上げた。
「何でみどりはその時の時間が三時だってわかったの…?時計は一階の玄関ホールにしか無かったよね?」
らだおくんの質問に何だかすこし呆れながら言葉を返す。
「時計ハ行キニ確認シタ」
風呂場の洗面台まで向かうには、当たり前だけど階段を降りて玄関ホールを通って、左側の通路を通っていかないといけない。
その時に確認した時間と、部屋を出た時間に大きな差は無いだろう。
「みっどぉはその時のレウさんを調べなかったの?治癒魔法を使えたみっどぉなら、まず確かめてみそうなものじゃないかな?」
コンちゃんの疑問の言葉に小さく首を振る。
「俺ガ使エタ魔法ハ、コレダケダヨ」
そう言ってその場でフワリと浮いて見せる。
元々の特性である浮遊しか残されなかったようだ。
この世界では、魔法は一あれば百あり、と言われるほど応用した技がたくさん存在する。
だからこそ俺だけ制限が強く、これしか許されなかったのだと推測している。
もっとも、能力の使える使えないに関しては個人でしかわからないから、この話を詰めるとなると水掛け論になってしまうと思うのだけど…
「そっか…うん、ありがとね〜」
コンちゃんはそれを理解しているようで、他のみんなも同じように一旦頭の片隅に置いておこうといった具合の反応だった。
どんな理由であれ、仲間に犯人扱いされるのはやっぱり居心地が悪いものだな…
そう思いながら、どうにか犯人のレッテルを剥がそうとして、俺はそっと疑問を返した。
「コンチャンコソ…使エル能力ハ、収納ダケジャナイヨネ」
ピクリとコンちゃんの目元が僅かに動いた。
あの時、レウさんの死体を見つけた時に見えた蠢く影は、間違いなくコンちゃんのオトモダチが陰に潜んでいる姿だった。
普段でも敵の情報を集めたいときなんかに使用している、コンちゃんの能力…
問題は、どうして、あの部屋でレウさんが死んでいるとわかっていたのに、オトモダチはコンちゃんに報告をしなかったのか。
「使役、デキルンデショ?」
「え、え…え?」
らだおくんの視線は驚いたように俺とコンちゃんの間を行ったり来たり。
きょーさんはまだ混乱したままで、誰を疑えば良いのかわからない、といった感じだ。
コンちゃんは俺の追求にニッコリ笑う。
「そお、使えるんだ。繋がりは落ちてるから、性能がここにくる以前と変わっていないなんてことは思わないで欲しいかな…」
自分の影にオトモダチを使役して見せながら言ったコンちゃんを見ていたきょーさんが、少し躊躇いながらも口を開いた。
「その能力と今回の事件に、いったい何の関係があるんや?」
俺が今回一番疑問に感じていたことを話すと、全員が驚いたように目を開いた。
…全員が、だ。
「コンチャン、知ラナカッタノ?」
「えぇっ…知ってたら助けに行ってたよ。あ、でも…簡単な応急処置しか出来ないし、それで助けられたかどうかはわからないけど…」
…だめだ、これ以上は何も無い。
あとは水掛け論の話ばかりになるだろう。
【議論終了】
・ ・ ・
『さて、続いては第二議論です…ジッ…ハジメテでしょう?…ジジッ…お手伝いします』
柵の上にある小型の投影機を通じて、ウィンドウと同じくらいの半透明な画面が浮かび上がる…そこには、第二回目の議題のテーマが記されていた。
【第二回議論テーマ:死亡理由】
…どのように死んだのか、について話す。
大した証拠もないのに…どうやって…と普通ならばみんながそう考えるだろう。だが、俺はそれを即座に否定したい。
コレは理不尽な裁判、そんな証拠集めの時間も、それを主張する権利も、俺たちには当然のように存在しないんだ。
『凶器はこちら…ジッ、ジジッ…キッチンに置かれていたごく普通の包丁のようです』
円形に立っている俺たちの真ん中にある台座がぐるりと回転すると、白黒のチェック模様に酷く目を惹く鮮やかな赤が現れた。
「ゥ…」
あの惨状を思い出して顔を顰める。
あの赤は、レウさんだったものの赤だ。
「…滅多刺しやった」
両手で目元を覆いながら、きょーさんがポツリと溢した。
【第二回議論】
【きょーさんの発言】
俺はその日、どりみーが何度も部屋の扉を叩く音で目を覚ました。
その後のどりみーの話で、もしかしたらレウに何かあったんじゃないか…そう思って、現場に向かったんや。
…死因はその包丁で間違いない。
レウが刺された傷口は抉れたみたいになって…随分と、酷い傷口やったから。
犯人は、苦しまずに殺したかったんじゃないかと思う…けど、上手く心臓に刺せなかったんやろうな…何度も、刺しとったから…
【発言終了】
きょーさんは俯いていて、その表情は暗い。
いつもの優しい声も、悪そうな笑顔も、ふざけたような高い声も…どこにもなかった。
「…心臓を刺すって…そもそも何で殺されたのがレウなの?あの日の夜に疑われてたの、俺だったじゃん…」
ホロリとらだおくんの目から涙が一筋、頬を伝って彼の袖を濡らした。
らだおくんの言葉には、誰もが黙って目を逸らす…あの時は疑うしかなかった、と自分勝手な言い訳を自分勝手に胸中に並べながら。
「だれだよ、殺したの…今すぐ名乗れよ…」
怒りと侮蔑を煮込んだような声が、円筒形の部屋に良く響いた。
こんなに怒っているらだおくんを見るのは、何年ぶりだろう…滅多に見ることのない本気の怒りに、フルリと手が震える。
「レウを殺してそんなに楽しかったか!?そんなに、アイツのことが嫌いだったか!?」
ずっと、怒っていたんだろう。
こんなふざけた裁判に。
こんなふざけたゲームに便乗してレウさんを殺した犯人に。
「…」
…裁判、なんて…形だけ。
「ち…ぅ…」
要するに、犯人に苦しい思いを味合わせることが出来れば…ここが現実じゃなければ良いと願うほどの悪夢を見せることが出来れば、それで良いのだ。
「違う…」
蚊の鳴くような小さな声を震わせながら、縋り付くように柵に手をついて膝から崩れ落ちたのは…
「違うんや…レウのこと、殺したいなんて…そんなわけ、なかったのに…」
…きょーさんだった。
【議論終了】
・ ・ ・
シンと空間が静まり返る。
あんなに怒っていたらだおくんすら、きょーさんの自白とも取れる言葉の真意を探しているのか、どこか茫然とした面持ちで固まっていた。
「…」
…あぁ、この裁判は、こんなにも簡単に終わってしまうのか。
「ぅ、あぁ…ぁぁあ…」
壊れたように顔を覆って小さな水溜りを作るきょーさんの姿は、酷く小さく映った。
…すごく辛いよね、すごく苦しいよね…ごめん…ごめんね、きょーさん。
色々な感情が混ざっていたけど、まず最初に出てきたのはそれだった。
「…キョーサン、ドウシテ?」
「………ぇ…?」
心根の優しいきょーさんが、中のいいレウさんを殺すなんて軽率に行うわけがない。
その理由が、あるんでしょう…?
微かな呟きの後、顔を上げたきょーさんの仄暗い琥珀色の瞳をジッと見つめる。
「…あれは…本当に…」
【きょーさんの独白】
本当に、偶然のことだった。
…少なくとも、俺はそう思わないともう誰に合わせる顔も無くなってしまう。
昨晩の、夕食まで時間は戻る…
『…っ、なんや…?』
その日の夕食はカレーだった。
時間がそこまでかからなくて、一食でも満足してもらえる料理を作るには食材が少ないとレウが言っていた。
一口食べた時に違和感を感じていた。
『ゔ…』
誰も気が付いていなかったけど、俺の料理にはあからさまな違いがあった。
毒だとすぐに理解した。
何故かはわからないけど、俺が知るはずのない毒の知識…それがどんな毒で、どんな効果があるのか…それが、元から知っていた情報かのように頭に浮かび上がっのだ。
『…!?』
すぐにレウを疑った。
料理を盛り付けてくれたのはレウだったから…調理の過程に誰かが細工をすれば、一つの鍋で調理するカレーなのだから、全員に効果が出るはず。
それにも関わらず俺だけに効果が出たとするならば、チャンスは一回きり。可能な人物だって限られている。
『レウ、夜に…すこし話がしたい』
『え、あ…うん、了解』
夕飯はそれ以上手をつけず、体調が悪いからと少しソファーで休んだ。
最後に風呂を入って、部屋に戻ってみんなが寝た頃…一時ごろに風呂場に待ち合わせた。
今でも、なんで風呂場なんかに待ち合わせようとしたのかはわからない。
もしかしたら…その頃から、万が一にはレウのことを殺す、ということを前提に動いていたのかもしれない。
『料理に毒を持ったのはレウなんか…?』
『…えっ!?…ど、毒!?』
俺は普通じゃなかったのかもしれない。
仲間だと思っていたやつに殺されそうになった…正直に言ってくれれば、一度くらい許してやろうと思っていたのに、疑わしい人物は一向に認めようとしない…これを有耶無耶にしたら、よくないことが起こるかもしれない…いや、きっと起こるに違いない。
『これ以上嘘は吐かないでくれ…頼む、れう』
隠し持っていた包丁を向けて脅した。
今考えれば、そこからおかしかったんだ。
でも、ずっと感じたことのない不安がピッタリ体にくっついているような感じがして、耐えられなかった。
おかしな被害妄想が止まらなくて、理性なんてカケラしか存在していなくて。
『だからっ、正直に言ってくれれば黙ってるって言ってんだろ!?』
『ご、ごめんなさい…でも、でもっ、俺じゃな…ぃ……?』
グサリと、気が付けば突き出していた包丁がレウの心臓に深く刺さっていた。
『ぇ……?』
どうしてだ?
何で突然?俺は動いていないのに…何で?
おかしい、こんなの俺じゃない。
嫌だ、そんなの望んでなかった。
『や、やめ…っ』
どちらの声だったか、震えた声が聞こえた。
『ぁ、ぁあ……あぁぁ…!?』
狂ったように上下に動く包丁の、鈍く光るシルバーが目に焼き付いて離れない。
止まらない、止められない、体の自由がすこしも効かない。
どうして、なんで、こんなはずじゃ、俺が、俺が殺したのか、仲間なのに、ちがう、そんなつもりはなかった、ほんとうに、ほんとうなのに、なんで止まらないのか、どうして、どうしてどうしてどうして……
【独白終了】
優しいきょーさんの面影はもう少しも残らずその男の中からは無くなっていた。
虚な瞳が揺れて、手足もガクガクと震えている。頭を押さえてひたすらにうめいている。
「こんなの…夢だったらよかったのに……」
誰かがポツリと言った。
「…ゆ、め…」
きょーさんがつぶやいた。
その瞬間、きょーさんが糸の切れたマリオネットのようにカクンと力を失って倒れる。
小さな悲鳴が上がって…沈黙。
『ジジッ、ジーッ……お見事、よくがんばりましたね…ジッ…これにて裁判は閉廷します』
ラジオが止まると、パッと視界が切り替わって館に帰ってきたのだとわかる。
館には、もう三人しかいなかった。
「レウサン…キョーサン…」
……本当に…よく頑張ったね。
・ ・ ・
らっだぁ side
…誰かが言っていた。
人が死ぬのは本当に突然だという。
その人がどんな人だったかあまり覚えていないけど、その人を思い出そうとすると、真っ先にタバコの匂いと、甘いお菓子の匂いが思い浮かんだ。
『お別れって突然やから…らっだぁが早死にしたら、俺が天国までの案内したる』
『じゃあ…地獄に堕ちるようだったら俺がらっだぁを地獄から逃がしてあげよう』
きょとんとタバコを片手に不思議そうな顔をする誰かは、お菓子を作っている誰かに向かって首を傾げた。
『案内じゃないんか…?』
『え、うん。地獄にいてほしくないし…』
『それもそうやな!』
賑やかな笑い声…あぁ、誰だったかなぁ…
顔も思い出せない誰かさん、本当にきょーさんもレウも突然死んじゃったよ。
そう言うもんだって言ってたけどさ…
「でも、こんなのは…」
唇をかみしめて床を睨みつける。
無性に腹が立って仕方なかった。
どうして俺たちがこんな目に遭わなきゃいけないんだよ、どうして、どうして…!!
「…っ、クソッ…!」
一人にして欲しいとみどりを部屋から追い出してしまった。コンちゃんも貼り付けたような微笑みを浮かべてフラフラと何処かへ行ってしまったし…孤独でしょうがない。
…自分で追い出したくせに。
「はぁぁぁ…ぁ?」
深くため息をついて、伸ばした手から力を抜いた時に触れたポケットがカサリと音を立てた事で、昨晩のことを思い出した。
「あの時のメモ見てなかったな…そうだ、何が書いてあるんだろう…」
ポケットから少しシワのついた紙を開いて、中に何か書いていないか確認する。
“ここは現実じゃない”
“思い出せ、ここが夢か現か”
子供っぽい字…筆跡は、どことなくみどりに近いものを感じる。
そう言えば、みどりはあそこで泣いたっきり全然泣いてなかったな…きょーさんがコトン、と死んだ途端、誰かにスイッチでも押されたのかってくらい。
「…何でこんなことになったんだろ」
ボーッと部屋の天井を眺める。
…もう、どうだって良いのかもしれない。
ここから先また誰かが死んだら、残った一人を殺して俺も死んでしまうのが良いのかも。
そんなことを考えていた時だった。
「やっほ〜、らだおくん」
コンちゃんが随分と晴れやかな笑顔で部屋に入ってきた…血に濡れた、大きな青い杖を手に持って。
「は……?」
言葉を失い動けないでいると、杖が振り上げられる。杖の先は菱形になっていて、あんな尖った部分が当たったら、人外であろうと呆気なく死んでしまうだろう。
なにより、その杖の先についた血は、誰のものなんだい…?
「急で悪けど、俺、らっでぃには今すぐにでも死んで欲しいんだけど〜」
「や、やめ…!」
ぶんっ…と振り下ろされた杖と、本気で俺を殺すつもりのコンちゃんを見て…俺の中で何かがプツンと切れてしまった。
「………あ…死んだ」
我に帰った時には、杖を振りかざしていた男は血だらけで床に倒れており、その手足はあらぬ方向へと折れ曲がっている。
真っ赤な液体と冷たい人形の肉を前に、らっだぁはとにかく血を洗い流そうと思い腰を上げてドアノブに手を伸ばしたところで、ふと思った。
「ラジオが鳴らない…?」
てっきり錯乱したコンちゃんがみどりを殺した後、俺の事も殺そうとしたのかと思ったけど…それにしてはラジオが静かすぎる。
どうして?裁判とやらはしないの?
パッとコンちゃんの死体を振り返ってその姿を確認するものの、偽物というわけでもなさそうだった。
「誰かに見つかったらラジオが鳴るのか?」
じゃあ、生きているであろうみどりに見つからなければ…裁判は起こらない?
そんな考えが頭をよぎった時だった。
「アリャ…コンチャン負ケチャッタカァ…」
聞き覚えしかない声が、死んだ仲間とその仲間を殺した本人を見比べて、何の感情もなくそう言ってみせた。
・ ・ ・
みどりくん side
コンちゃん負けちゃった、やっぱコンちゃんの言う通りだったな…こうなったら最後に残さず、一番最初にらだおくんが死んじゃうように仕組めば良かった。
ウンウンと一人反省会を開いていると、らだおくんが信じられないものを見るような目で俺に血に汚れた震える手を伸ばした。
「み、どり…お前……黒幕、だったの…?」
「ンー…マァ、ウン」
素直に頷けば、らだおくんは怒りを滲ませた顔で俺の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
やれ、何がしたかったんだ、だの…ずっとどんな気持ちで見ていたんだ、だの…仲間じゃなかったのか、だの…あーあ。可哀想。
「可哀想ダネ…騙サレチャッタノ?」
くすくす笑いながら、困惑か恐怖、またはその両方で緩んだらだおくんの手を払って、可愛い飼い犬にするように、その頭をナデナデしてあげた。
「魔法モ全然制限サレテナインダヨ、俺ダケネ」
ニコニコと笑って、その場に水の玉を浮かせたり、それを火で蒸気に変えたりしてみせると、らだおくんはますます愕然とした表情になった。
…でもそれじゃあダメだ。
チラリと冷たくなったコンちゃんだったものを見下ろしてらだおくんに侮蔑の視線を投げると、らだおくんはビクリと肩をすくめた。
「コンチャン殺シチャッタンダ…ヘェ〜…」
「これは、お前がっ!!」
「俺ガ仕組ンダセイダッテ?」
そんなまさか、と笑ってやれば、らだおくんは血だらけの両手を見下ろしてガクガクと唇を震わせて真っ青な顔を覆った。
…ごめんね、苦しいよね。
でも仕方のないことだから…本当に申し訳ないし、やるせないけど…頑張ってください。
「ネェ、死ンダラ?」
「!」
「コンチャンガ可哀想…」
俯いて方を震わせるらだおくんの姿に心臓がズキズキと痛む……でも、これなら…!
そう、俺が希望を持った時だった。
「く、ふふ…くふふふっ、ははははっ!」
「!?」
「みどり、一体何のつもり?」
腹を抱えて笑うらだおくんは、さっきまでの壊れそうな姿はどこへやら、生気に溢れる元気そうな顔で俺を見上げている。
言葉を失ったのは俺の方だった。
「みどりが俺のこと煽り出した時からなんか変だぞって思い始めたんだけど…ねぇ、みどり」
「…!」
ジリジリと後ずさったけれど、自分が閉めた扉のせいであっという間に退路を塞がれてしまった。
舌打ちしたい気持ちでグッとらだおくんを睨み上げると、らだおくんは優しい顔で俺を見返して、俺の真意を探ろうとしていた。
「みどり」
やめてよ、せっかくここまで準備したのに。
「みどり、どしたの?」
せっかく、ここまで助けられたのに。
「ねぇ。俺に話して、みどり」
このままじゃ、らだおくんだけ助からないかもしれないのに。
「みどり」
視界がぐにゃぐにゃと歪む。
目が熱くて、息が苦しくて、必死に嗚咽を堪えても、涙が次から次へと溢れてしまって全然止まらない。
「……タスケテ…ラダオクンッ」
数秒の黙秘の後、諦めて助けを乞うと、いつものらだおくんがガハハと笑った。
「俺にまかせろ!」