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 夜。 家の廊下の奥から、かすかなすすり泣きが聞こえた。


 みことはベッドに横になっていたが、その声に目を開ける。

 静かな声――でも、それが誰のものか、すぐにわかった。


🎼👑(……らんらんだ)


 部屋を抜け出すと、リビングの隅にらんがいた。

 電気はつけられず、月明かりだけが照らしている。

 肩を小さく震わせ、声を殺して泣いていた。


🎼👑「……らんらん」


 呼びかけると、兄の体がびくりと震えた。

 それでも、振り向いた顔は――泣きはらして、真っ赤だった。


🎼🌸「みこと……起こした?」


🎼👑「ううん。勝手に起きただけ。……ねえ、らんらん、俺の前で泣いていいよ」


 言葉にすると、胸の奥がきゅっと痛んだ。

 ずっと知っていたのだ。らんが夜になると、ひとりで泣いていることを。

 でも――気づかないふりをしてきた。


🎼👑「俺ね、らんらんの涙、ずっと知ってたよ」


 らんは息をのむ。

 言葉を探すように口を開きかけたが、結局何も言えなかった。


 その代わりに、みことの手をぎゅっと握る。

 それだけで、答えは十分だった。


🎼👑「俺もなつも、もう小さい子どもじゃない。……らんらんが、なんでも抱えなくていいんだよ」


 震える声だった。

 でも、それは本心だった。


 そのとき――廊下から足音が近づく。

 慌ててふたりが振り向くと、買い物袋を下げた背の高い人影が見えた。


🎼🍵「あれ……?」


 やわらかい声。

 塾の近くのスーパーでよく見かける大学生――すちだった。


 みことは驚いて立ち上がる。

 けれど、その目は、なぜか懐かしい人を見つけたように揺れていた。

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