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うーん……なんだかふわふわするなぁ。

私は重い身体をゆっくりと起こして、辺りを見回した。

ここ、どこだろう。知らない天井と、知らない部屋とそして……

私は隣で眠る人物をまじまじと見た。

魔法だろうか、ぼんやりとした灯りが宙に浮かぶ中、隣で眠る人物がいた。

つまり私はベッドで誰かと一緒に眠っていたわけだ。

そして隣に眠るのは黒い髪に褐色の肌の……

って、アルフォンソ、様?

なんでアルフォンソ様が隣で寝てるの? しかも裸で……ってちょっと待って?

私は慌てて自分の身体を見る。

どうしよう、私も裸だ。

私は慌てて時計を探す。ベッド横にある台の上にある置時計を見ると、時刻は八時半を過ぎていた。

パーティーは六時からで、私がアルフォンソ様と話したのは……何時位かわからないけど、大して時間は経っていないだろう。

そしてこういうパーティーは十二時過ぎまでやるのが常だから……まだパーティーはやっている、はず!

でもどういうこと?

なんで私、裸でアルフォンソ様と寝てるの? やばい、覚えていない……何にも思い出せない。

でも頭は痛くないから飲み過ぎたってわけじゃないと思うんだけど……どうしよう。

とりあえず逃げよう。

そう思った私はもぞもぞとベッドから這い出て服を探す。するとドレスや下着が、きれいに畳まれてソファーに置かれていた。

どうしてもがさがさ音がしてしまい、彼が起きるんじゃないかと心配だったけどそれどころじゃない。早くここから逃げないと。

そう思いながら私は急いでドレスを着て部屋を出た。

そうよね、ここ、クリスティのお屋敷よね。見覚えのある廊下にほっとする。

理由はわからないけど、クリスティのお屋敷の一室で寝ていたらしい。

私はとにかく帰ろうと思い、廊下を急ぎ階段を駆け下りた。


屋敷に帰り、お風呂に入って私は一息つく。

身体を見た感じ、違和感はないけど……どうしよう、何があったんだろう?

パトリシア、冷静に思い出せ。

アルフォンソ様と話をしていて、ワインを何杯か飲んで……そして、どうしたっけ?

あー、肝心なところが思い出せないんだけど?

もしかして私、彼と寝た……? いや、ただ寝た、って意味ではなくその……

あー、考えただけで顔中が熱くなっていく。

どうしよう、私。もし本当にそうだったら……? でもそんな形跡ないしなぁ……

初めて会った相手と寝るなんてありえない、みたいな話をしてたのになんで? 何でそんなことになるの?

意味が分からないんだけど、私。

どうしよう、もうどうしたらいいかわからない……

あー、何もしてないといいんだけどでも、何かしましたか? なんて本人に聞けないし……

どうしよう……なにもしてない、何も。たぶん。

そして翌日。

私は一日中部屋に引きこもっていた。ベッドに寝転がって何があったのか必死に思い出そうとする。

昨日の夜……昨日の夜何があったの本当に……

何もする気になれないし、何も思い出せないし……どうしよう……

いっそ、仕事をしていれば気分も変わっただろうけど。

皆に祝福されて辞めたのに、あの話は無くなりました、なんて言えるわけがない。

でも私、しばらく遊び歩くって決めたしなぁ。どこか旅にでも出ようかしら……

そうしよう。北の温泉地で一か月くらい静養してこよう。お金はたくさんあるし。

その時、扉を叩く音がして私は慌ててベッドから起き上がって扉の方へと向かった。


「はい」


「あの、お嬢様。お客様がお見えなんですか……」


遠慮がちな侍女の声が聞こえ、私は不思議に思いながら扉を開けた。


「お客様って?」


「応接室でお待ちなのですが……その、フレイレ伯爵家のアルフォンソ様という方なのですが……」


その言葉を聞いて、私の心臓がばくばくと音を立てる。

ア、ア、ア……アルフォンソ様ですって? 居ないって言いたい。でもそういうわけにはいかないわよね。だって相手は貴族、うちは商人とはいえしょせん平民だもの。


「と、とりあえず準備ができたら行くから……」


「はい、あの、お早めにお願いします」


「わかってるわ」


私は扉を閉めて慌てて着替えをして部屋を出た。

アルフォンソ様がなんで私の所に来るのよ。あーもうどうしよう。私、何にも思い出せていないのに……とりあえず様子をうかがうか……

一階にある応接室の扉の前に立ち、私は意を決して扉を叩いて中に入る。

するとそこには、黒のズボンに黒の半そで、それに深緑色のジレを着たアルフォンソ様がソファーに腰かけてお茶を飲んでいた。

彼は顔を上げ、私をみてニコっと笑う。


「お待たせいたしました、アルフォンソ様」


軽く頭を下げて、私はソファーの前に立つ。


「いいえ、突然訪問したのはこちらですから」


と言い、彼はお茶の入ったカップを置いた。

そこに侍女が私のお茶とお菓子を持って来てくれた。

お菓子はクッキーとチョコレートだ。甘い匂いが漂う。

湯気を上げるティーカップを手にして、私はアルフォンソ様におそるおそる言った。


「き、昨日はお世話になりました」


正直覚えていないけれど、たぶん何かしらの世話になった可能性を否定できないから頭を下げて見る。

すると彼は微笑んで首を横に振る。


「こちらこそありがとうございました。おかげでふっきれましたし」


私何かしたかな……なんか色々言ったような記憶はあるけど……


「す、すみません、私、昨日の事を余り覚えていなくて……」


「そうなんですか?」


驚いた顔になるアルフォンソ様。


「あぁ、だから目が覚めたら……」


なんて呟くものだから、私は顔が熱くなるのを感じた。


「す、すみません、だからあの……昨日のことは忘れてください。私は何にも思い出せないし……それに初めて会った相手と……」


そして私は気持ちを落ち着かせようとお茶を飲む。

その時空気がピン、と張りつめたような気がした。

え、何? アルフォンソ様の方を見ると、とてもまじめな顔でこちらを見つめている。

何これ怖いんだけど……え? 私、まずいこと言った? どうしようこれ……でも何にも覚えていないし……

彼はずい、と身体を乗り出して私に顔を近づけてくる。


「貴方は、俺があのようなことをして何の責任も負わないような相手だと思ってらっしゃるんですか?」


そ、そうじゃない。そうじゃないけどでも、覚えていないのが申し訳ないしでも……


「そ、そういうわけではないのですが……え、あの、私本当に何も覚えていなくて……だからあの……まさか本当に……?」


アルフォンソ様の言った、あのようなことってつまりその……そういうことよね? やだ、私、初めてなのに何にも覚えてないとか最低じゃないの。

あーもうどうしよう……

頭の中でぐるぐると考えるけれど何にも出てこない。

あー……私のバカ。嘘でしょ、だって、初対面の相手と寝るなんて最低でしょ?


「パトリシア嬢」


低く響く声で名前を呼ばれ、身体がビクン、となる。

アルフォンソ様はとても優しい、怖くなるほど優しい微笑を浮かべて言った。


「貴方も俺も、今婚約者はいませんでしょう?」


「え、あ、は、はい。確かにそうですけど……」


「ならば俺と貴方の間に何があっても問題はないでしょう?」


そ、それもそうですけど。怖い、なんだかアルフォンソ様の目に闇を感じるんですけど……?

心の中で怯えていると彼は言葉を続けた。

「俺、今週の頭から二週間の休みをいただいているんです。騎士団にも噂は広まっていて、気を使った騎士団長の命令で。貴方も時間、たくさんありますよね?」


「は、はい……」


「じゃあ俺と付き合ってください」


つ、付き合うってどういう意味?

訳が分からないけれど、アルフォンソ様の圧に負けた私は頷くしかできなかった。

捨てられた者同士、婚約するのはありですか?

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