テラーノベル
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デスクに戻ると、空気が一気に現実に引き戻される。
キーボードの音。
電話の声。
モニターの光。
全部が少しだけ、うるさい。
「おはよー」
横から声がして顔を上げる。
コンちゃんだ。
「おはよ…」
「声ちっちゃ。」
「今ちょっと省エネモードだから…」
「それいつもじゃん。」
軽く笑われる。
コンちゃんは一瞬こっちの顔を見て、少しだけ眉を上げた。
「……大丈夫?」
「まぁ、なんとか。」
「“なんとか”って言うやつ大体なんとかじゃないよね〜。」
「ぅ゙っ…」
図星すぎて何も言えない。
「無理しないでね。今日普通にだるい日だから。」
「だよねぇ…」
即座に同意する。
コンちゃんはいつも、俺のことを良く見ている。
しんどいのは、俺だけじゃない。
それだけで、少しだけ気が楽になる。
作業を始める。
画面を見て、手を動かして、確認して。
やること自体は変わらない。
でも、今日はやけに時間がかかる。
「……進まないと、」
思わず呟く。
頭の中にワンテンポ遅れて理解が来る感じ。
自分の処理速度が落ちてるのが、はっきりわかる。
「だよねー。」
コンちゃんの声が飛んでくる。
「今日、世界ちょっと重いよねぇ。」
「重い…」
「昨日より重力強い。」
「それはさすがにないでしょ。」
思わず返すと、少しだけ笑いが起きた。
ほんの一瞬だけ、空気が軽くなる。
でも、しんどいのは変わらない。
昼を過ぎたあたりで、だいぶ限界が見えてきた。
集中が続かない。
同じところを何回も見直してる気がする。
「……やば、」
思わずつぶやいたタイミングで、
「ちょっといい?」
後ろから声をかけられた。
振り向くと、上の人。
嫌な予感がする。
「これなんだけどさ、今日中にお願いできる?」
渡された資料を見て、一瞬止まる。
…量、多くない?
ていうか、
「今日、ですか。」
「うん、できれば。」
会社で言う”できれば”っていうのは、大体”絶対”だ。
「……わかりました。」
とりあえず頷く。
断れる空気じゃない。
去っていく背中を見送りながら、ゆっくり息を吐く。
「……終わらん気がする。」
「終わらせるんだよ〜。」
いつの間にか隣に来ていたコンちゃんが言う。
「無理じゃない?」
「無理でもやるんだよ…」
「ブラック発言やめて。」
「現実だよ〜。」
さらっと言われて、笑う気力もない。
「……やるしかないか」
椅子に座り直して、資料を開く。
紙面が少しだけ滲んで見えた。
…目眩、まだ残ってる。
深呼吸を一回。
指をキーボードに置く。
「……頑張るか」
小さく言って、作業を再開した。
今日は、ちゃんと帰らないと。
NEXT=♡1000
コメント
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レウさん、こんちゃん、、、 無理しないで、( ; ; ) 上司はピーーーーして、ピー、ピーーー しとくから!!任せて!✨