照が失恋した。
一週間そこそこで、翔太に振られたらしい。俺はじきにこうなることがわかっていたけど黙っていた。照が翔太と付き合いだしてすぐ、翔太の方から『やっぱなんか違う』と言われて振られたと聞いた時は、気の毒だけど、予想通りすぎてちょっと笑ってしまった。
拗ねた顔で照に、
💛「気晴らしに山登りに行くから阿部も付き合って」
と、誘われ、わざわざオフの日を合わせてこうして他県の山のふもとまでやって来た。ここへ来る道中、照と交互に運転し、ふっかと行くより楽だわと喜ばれたのは嬉しかった。 照の心の傷も思ったより浅そうで安心した。
ネットの知識を総動員し、見よう見まねで山歩きの装備を揃えてきたけど、照にはまったく似合わないと笑われた。
山道へと入っていく。
歩く速度がまるで違う。
気を抜くとあっという間に照に置いていかれるので、必死に付いて行ったら、山の中腹で、一気に視界が開けた。
澄み切った青空の下、田んぼや家が点々とある懐かしい田舎の原風景が広がる。俺は子供の頃行った遠足を思い出した。汗ばんだ身体を冷ますように、風が髪を靡かせた。
💚「きもちいい」
俺は一休みしたくて、そこらへんの切り株に腰を下ろした。俺が立ち止まったのに気づき、照が軽快な足取りで戻って来る。
💛「もうへばったの?」
💚「さっきからへばってるよ。もう少しペース落とせよ」
文句を言い、ペットボトルの水を飲み、山の澄んだ空気をたっぷり吸って、目の前の景色をもう一度見る。隣りに照がいるせいか、さっきよりも景色が綺麗に見えた。
💛「ほら」
照が手を差し出した。
💛「もうすぐだから、頑張れ」
💚「あと1分だけ休ませて」
💛「阿部にもっと綺麗な景色を見てほしいんだよ」
殺し文句にやられ、俺は照の手を取った。
コメント
2件
これって最初からあべちゃんはひーくんのこと好きな設定???