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一人の男が目を覚まし疑問を抱きつつ、見慣れない天井知らない場所のベッドにいた。首が異様に痒い、目が覚めたことに気が付いた看護師らしき一人が声をかけて来た。「ようやく目が覚めたんですね、今先生呼んで来ますね。」
と言いどこかに消えて行った、頭が回らないが記憶を巡らすと自分は探偵と記者をして…、何か大切な者を忘れている。そこに医者と思われる初老の男性が来た、何故か自分が首を吊って死んだことになっているらしい。窓の外で散っている椛を見て、涙が頬を濡らした。引戸が開く音がしてその方向に目を向けると、青年がこちらを睨んで此方に来た、「少しお話聞かせて貰えますか」
声色が落ち着いていて少し冷たい印象だった。どう言う訳か自分の名前を知っていた、青年は新米刑事らしい。名前は仙四郎と名乗った、何故か苗字は教えてくれなかった。
しかし見たことのある様な顔立ちで懐かしくでもどこか切なかった、仙四郎はとある事件の捜査依頼に来たらしい。確かに矢太郎は事件を解決して少しは有名になったが警察にお呼びが掛かる程ではない。
どうして自分なのかと質問しても濁されて終わった、疑問を抱きつつ内容を聞くと矢太郎は原因不明の記憶障害が起こり一部の記憶が消えているらしい。仙四郎は医者に事情を話して良いか聞いたのち話し出した。「貴方は自殺をして失敗した。命を落とし掛けてこの精神病院に入院している。記者の仕事をしていた会社が、自殺をした記者がうちから出たことを隠蔽するために貴方は死んだことになっている。」
淡々と告げる仙四郎に正直助かった、きちんと言ってくれたお陰で頭の整理が出来た。
矢太郎はこれから警察の方で秘密裏に捜査をすることになり、相方として仙四郎が付くようだ。
陰の目的は矢太郎の自殺防止だろうと感ずいていた、仙四郎はたまに虚空を見つめて悔しそうな顔をする。仙四郎と出会ってから初めて事件の依頼が来た、そこそこ名が売れて来た小説家が嫁と毒を摂取して心中したそうだ。嫁は辛うじて一命を取り留めたようだ。矢太郎は自分の能力に嫌気が差した、哀しみに苛まれた様に蹲り嗚咽が哀しみをさらに象徴していた、それなのに周囲の傍観者に紛れた朱色の金魚に矢太郎は辟易した。仙四郎が何かを感ずいたのか「犯人がわかったのか?」
と小声で耳打ちした、矢太郎にはわからなかった、妻が小説家の夫を殺そうとしたのが。だがその事を考えても矢太郎に損も得もないため仙四郎に耳打ちした、仙四郎は一瞬驚いた表情をしたがそのままその場にいた警官に伝えた。矢太郎は犯人である妻に近き何故夫を殺したのかと尋ねた、返答は思ったよりも早かった。「あの人の書いた小説は私が書いた、妻は夫に尽くす物だと毎度言われて書いた小説を自分の物だと言い小説が売れてからは浮気が激しかった。」
多分妻は心中に見せかけて自分だけ助かる様にしたのだろう、その方法は矢太郎に考えることを放棄させた。その後妻は捕まり、獄中で小説を書いたらしい。
まだ謎の多い仙四郎にどこか懐かしさを覚えてはいるが思い出せない、矢太郎はこれからまたこの能力を使い事件を解決するだろう。