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【君の花に】
陰でき
⚠なんでも許せる方のみ
⚠学パロ
今日も、ぼーっと窓際の席からあいつを眺めていた。
俺の席は一番端、窓側。
教室の端っこ。ちょうどいい距離。
あいつは──「陰キャ転生」なんて呼ばれてるくせに、
いつも輪の中心で笑ってる。
楽しそうに。
自然に。
作ってる感じなんて、どこにもない笑顔で。
……別に、興味があるわけじゃない。
ただ、視界に入るだけだ。
そう、自分に言い聞かせる。
「はぁ……」
小さく息を吐いて、窓の外を見る。
そこにあったのは、
風に揺れる黄色い花と、日陰に咲くオレンジの花。
揺れて、光を浴びて、綺麗に咲いてる黄色。
その隣で、静かに影にいるオレンジ。
──一瞬だけ、重なった。
「……偶然だろ」
そう呟いて、また教室に目を戻した、その時。
「……あ」
目が合った。
しまった、と思った瞬間にはもう遅くて、
あいつはこっちに向かって歩いてきていた。
「なぁ」
「……」
「お前だよ」
「……俺?」
「お前以外に誰がいんだよ」
さっきまでの笑顔とは違う、少しだけ低い声。
その温度差に、胸の奥がちくっとした。
でも──
話しかけられた。
それだけで、少しだけ息がしやすくなる
。
「お前、よくこっち見てるよな」
「……気のせい、じゃないですか」
「いや、絶対そう」
逃げきれなくて、結局うなずく。
「……はい」
あいつは少しだけ笑って、
そのまま俺の隣に座った。
距離が、近い。
今まで遠くでしか聞こえなかった声が、
はっきりと耳に届く。
少しの沈黙。
「……なぁ」
その声は、さっきよりも少しだけ低かった。
「お前、いいよな」
「……え?」
あいつは窓の外を見たまま、続ける。
「みんなと関わらないで、生きてける」
風が、少しだけ強く吹いた。
黄色い花が、大きく揺れる。
その横で、オレンジの花は揺れない。
──なんで、そんなこと言うんだよ。
そう思ったのに、言葉は出てこなかった。
ただ、
「……うん」
それだけしか言えなかった。
少しの間のあと、あいつはいつもの顔に戻って、
「じゃ、戻るわ。またな!」
そう言って、笑った。
完璧な笑顔だった。
その瞬間、
窓の外で、黄色い花がきらっと光った。
昨日の雨の名残が、光を反射していた。
「……またな」
小さく、誰にも聞こえない声で返した。
それから、あいつは時々こっちに来るようになった。
気づけば、隣の席になって、
当たり前みたいに話して。
笑って。
……近くなったはずなのに。
時々、ふとした瞬間に、
どこか遠くにいる気がした。
ある日、あいつが来なかった。
次の日も。
その次の日も。
嫌な予感が、頭の中にこびりつく。
教室の空気が、ほんの少しだけ変わっていた。
誰も何も言わないのに、
何かを避けてるみたいな、そんな感じ。
窓の外を見る。
黄色い花は、少しだけ色を失っていた。
──やめろよ。
そう思った。
あいつの顔が浮かぶ。
笑ってる顔。
その奥に、隠してたもの。
やっと届いた連絡は、
「ごめん」
それだけだった。
短すぎて、意味が分からなくて、
でも、嫌な想像だけは簡単にできてしまう。
震える指で画面を見つめていると、
もう一通、届いた。
「俺、転校することになった」
……は?
理解が追いつかない。
転校?
なんで?
どうして?
聞きたいことは山ほどあるのに、
何も打てなかった。
あいつがいなくなった日。
窓の外を見ると、
黄色い花は、もうなかった。
残っていたオレンジの花も、
色を失って、静かに枯れていた。
気づけば、窓に手を伸ばしていた。
触れられるはずもない距離。
それでも、少しでも近づきたくて。
でも、
指先は、何にも届かなかった。
「あーあ……」
小さく、笑う。
「俺も、ちゃんと咲けてたら」
「守られてるだけじゃなくて」
「……守る側になれてたのかな」
あいつが背負ってたもの。
あいつの立場。
全部、分かってたはずなのに。
何もできなかった。
だから、せめて。
遅すぎるって分かってても。
俺は影じゃなくて、端っこじゃなくて、
「君の隣”で”咲いてたかった。」