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あーーーーつまんない!ふっかぁ」
「なぁに?さくちゃん」
2人の美青年が宮殿のバルコニーで話している。
1人はピンクの髪をふわりと揺らす甘くかわいい顔をもつ青年。
もう1人はさらりと靡く黒髪と見透かすような目でキャラメルのような美しい声をもつ青年だ。
「ていうか、メイドさんいるんだから[ふっかさん]とかにしないとまたお父様に怒られるよ?」
ピンク髪の青年はムッと顔を顰めてから
「俺ら兄弟じゃん…やだよ、さびしー…」
そんな彼を優しく撫でて「腹違いだけどね」と辰哉は呟いた。
「でも俺の母さんの名前でふっかは呼んでくれるから好き!」
とにっこり大介が笑えば、辰哉もまた微笑んだ。
「あれ、辰哉様と…ああ、大介か」
本を片手にもう1人青年が入ってくる
「阿部ちゃん、おつ〜」
「辰哉さんは苗字で呼ぶのお好きですね、ふふ」
本をとん、とベンチに置いて帝国を見据えるように外を眺めている。
「いやぁ…俺以外は皆んな、育ててくれた母さんがいるだろ?大事にしてほしくてさ。
…忘れないで欲しいんだ」
「忘れるわけないじゃん!ふっか変なのぉー」
バルコニーの扉からメイドの失礼します、と声が聞こえた。
「入って良いぞ」
そう辰哉が言えばメイド3人、皇太子1人1人の専属メイドが入ってくる。
「夕食のお時間です。大広間へ」
辰哉はジャケットを翻しコツとヒールを鳴らし歩みを進める。
その後ろを亮平は「呼んでくれてありがとう、忘れてたよ」とにこやかに返し
髪型を指で少し整えればその後ろを歩いていく。
大介は緊張気味な面持ちで「はぁ、行くか」と呟きその後に続いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「皇帝陛下のお成りでございます」
9人の皇太子が揃う大広間で行う晩餐。
家族全員で行うという決まりがあるが、家族といっても腹違いの兄弟のみだ。
女は全くいないなんとも仰々しいもので…この雰囲気が大介にとっては苦痛だった。
「では、いただこうか」
そう言えばまた各々食事を始める。
第一皇太子
深澤辰哉 深澤家は唯一の皇太后に選ばれた家である。
しかし、皇太后は辰哉を産んですぐなくなってしまい、母の顔をろくに知らない。
第二皇太子
阿部亮平 側室の子
第三皇太子
渡辺翔太 側室の子
第四皇太子
佐久間大介 貴族の子
第五皇太子
宮舘涼太 側室の子
第六皇太子
岩本照 貴族の子
第七皇太子
向井康二 平民の子
第八皇太子
目黒蓮 商家の子
第九皇太子
ラウール 他国の王族の子
生まれた順や地位、身分や出来によってこの序列は変わる。
第七、八、九の3人は最近入ったのでまだ少し怯えている。
「ご馳走様でし…た」
ラウールがそう言っても誰も反応しない。
オロオロしているラウールを横目に「ごちそーさん。アカリ戻るぞ」そう言って照は専属メイドと自室に戻ってしまった
「あ、メル、も、戻ろ?」それに便乗してラウールも戻って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ、こんなん味しねーよ」
「にゃ?!やっぱそうだよね?!」
またバルコニーでだらだらと酒を飲めば、不安も薄れていく。
そんな思いで辰哉は酒をあおり、大介は飼い猫をわしゃわしゃしている。
ふと気になって辰哉は大介を見つめ
「なあ、皇帝…なりたい?」
「んえ、…わかんない…でもこのまんま行けばふっかが皇帝っしょ?」
「ああ、そうだな」
「嫌なの?」
「…かもな。」
はあとため息をついて酒の小瓶をテーブルに置く
「さく、話したい他の兄弟とかいないの?」
猫をぎゅっとしながらうーんと悩んだ後
「ね、皇帝っているのかな。俺兄弟みんなと仲良く生きたい。
殺されるなんてごめんだよ」
他国では民主制が取り入れられ、皇室を国の象徴として扱う国が増えている。
いずれ我が国も…と思ってはいたが、今の皇帝は聞きやしない。
「…さくちゃん、聞いてること違うよ?」
「…辰哉様って呼ばなきゃになる?」
「なんで?」
「皇帝になったら。そう、じゃん?」
「考えすぎだ。…仲良し計画でもするか?」
「にゃ…したい、よ。」
「シャロン、…そうだな、翔太に連絡とってくれ。今から行く」
そう言うと専属メイドは「かしこまりました」と扉越しに言った。
ーーーーーーーーーーー
こんこんこん
「…なに?」
「第一皇太子様、第四皇太子様がいらっしゃいました」
「は?…通せ」
扉が少し開き、辰哉が笑顔で、大介は少し緊張した感じで下唇をむっとしている。
「何の用ですか?辰哉様、大介。」
メイドにマッサージをやめさせバスローブを羽織ったほぼ裸体の男はそう言った。
「はわわ…美白ゥ」
「…だから何しに来たんだよ、大介」
大介は辰哉に導かれて中に入ると仲良し計画について話し始めた。
終始翔太は眠そうにしていたがなんだかんだ聞いてくれたことで大介は翔太に対して好感を持った。
「はー、要するに民主制に導く議員集めみたいなことしてんのか」
「みん…ぎ…?…にゃす!」
「で、辰哉様は何の用ですか」
「んー、便乗?みたいな」
「第一皇太子様がそんなんで良いんですか?未来の皇帝でしょう?」
「んー…なんかさ、飯不味いから。さくちゃんの話に乗ったら美味い飯食えるかなって」
あの時間の気まずさは誰もが感じていたことだと翔太は気付かされた。
そして自分自身も…
「は、そうっすか。…その話乗ったら俺もアンタのこと呼び捨てにしていいってこと?」
「そうなるな」
「ならいーぜ、元々合わねーんだよ。こんな喋り方」
「にゃ!いいのぉ?!」
「俺は皇帝になる気もなければ貴族に戻る気も無いしなぁ…
起業するまではお世話んなりたいし…まあ、楽な方が良いから乗ってやるよ」
案外チョロかった第三皇太子は無事2人と同じ道を志すこととなった。
「ところで何て呼べば良いんだ?」
「俺はね、ふっかって呼んでる!」
「それ旧姓だろ?もう母親は死んで…ったぁ、わり。」
辰哉の険しい顔を見て翔太は言うのを辞めた。
辰哉以外は母に育てられ、ここへ連れてこられた。
しかし辰哉だけは死別し教育係の人間に育てられたそうだ。
だから母親の苗字に固執してるんかなー…なんて
こいつも大介のことさくちゃんって呼んでるし、軽い共依存か。
「大介。お前旧姓が好きなのか?」
「にゃす!母さんの…名前だから!その、もう…会えないし」
原則帝国側に引き取られた人間は血筋でないものとは会えない。
こいつなりの安心に繋がっているんだろう。
「佐久間。で、いいか?…あとは、深澤?」
「やった!ありがとぉ、しょっぴー!」
「しょ、?は?!」
「良かったな、翔太wあだ名付いたぞwww」
「はぁ…もういいわ」
諦めた様に大介の頭をポンポンと軽く撫でる。兄らしい顔をするものだ、と辰哉は感じていた。
「これ、他の兄弟にもやってくのか?」
「ああ、大介がしたがってるからな」
「にゃすにゃす」
「ふーん…これさ、仲間だけで夕飯別の場所にしねぇ?」
「え?…でもそこまでご飯持ってけないだろ。流石に」
「はは、まかせろ。俺らの兄弟にそーゆーのが得意なやつがいんだよw」
翔太が紙にささっと言伝と名前を記し専属メイドのサラに渡す。
そしてこう言った
「行ってこい、第五皇太子がお待ちだ」
続く