侑目線
─文化祭当日
朝女子に手渡された少し大きな紙袋。そこにはメイド服が入っていた。
黒い生地に沢山の白いフリル。
これでもかと短くしたスカート。ユニフォームよりも全然短い。
想像していたものの何倍もインパクトがある。
この服で接客をしなければならない事に憂鬱になる。
でもせっかく昼休みや放課後を使って作ってくれたのだ。
着ないという選択は出来ない。
腹をくくってスカートに足を通す。
スカートを履いたのは小学校ぶりだろう。
(あの文化祭事件)
履きなれていないスカートは股がスースーして嫌な感じだ。
着替え終わり、更衣室として使っていた教室をでると、そこにはクラスメイトが数名いた。
「侑君よぉ似合っとる!」
凄くキラキラした目で見てくる。正直もっとバカにされると思っていたのに。
「まじで似合っとんなぁ…侑めっちゃ人気出るんちゃう? 」
「んな訳あるかい。普通にキツイやろ。」
冗談抜きで、本当に皆が言っている事が理解出来なかった。
身長も皆より大きいし、筋肉だって運動部 相応って感じだ。
なのに似合ってるーとか、可愛いーとか。
うーん、分からない。
「何考えとんの?悩み事か?唸り声出てんで。」
声が漏れてしまっていたようだ。
バレーのチームメイトで同クラでもある銀が声を掛けてきた。何かと世話を焼いてくれる、優しくて良い奴だ。
「ん〜、いやなんもない」
「そうか?明らかなんか考えとるーみたいな顔しとるけど」
そんなに顔に出ていたとは。自分でもびっくりだ。
「てかなんで銀は裏方の仕事やねん!!」
「しょがないやろ。女子が決めたんやし 」
「侑は変な奴に絡まれへんように気いつけーや」
「分かっとるし!」
耳にタコができるほど言われ続けたこの言葉。
何かの行事の時。どこかへ出かける時。
春高やIHの時だって言われる。
過去に変な奴に絡まれたこともまあまああったがそれは小さい頃の話。
そんなに心配する必要は無いのに。
「侑!銀!もうそろそろやで!」
扉のガラスの部分から覗いてみると結構人が並んでいた。そういえばクラスのイラスト部の子がポスター書いてたな。きっとそのせいだろう。
あぁー、めっちゃ緊張してきた。バレーでもこんなに緊張することないのに。
「侑!気ばれや!」
「無理やってぇ…ほんまに憂鬱でしかないんやもん…」
「侑、いい事教えたる。文化祭で稼いだお金で皆でどっか行くらしいで。」
「まだどこ行くか決まってへんの?」
「なんかいっちゃんお金稼いだやつが決めていいらしいで。メイドの中でな。」
「えー、トロ食い行きたい!」
「だから侑が沢山お金稼げばええねん!」
「!そうやんな!俺頑張るわ!」
「その意気やで!じゃあ俺もそろそろ戻るわ!頑張りーや!」
「おん!任せとき!」
ガラガラと音を立て開けられた扉と共に、勢いよく生徒達が入ってくる。
侑にとって最も長い2日間が今始まった。
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コメント
4件
わわわ!!!!✨ほんと最高です!😱次の作品も待ってます!!( * ॑꒳ ॑* )✨