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めっちゃ長いです💧
ゆっくり読んでくださいヽ(•̀ω•́ )ゝ
◆ 第1章 孤独の旅 ――どこかで、風鈴のような音が鳴っていた。
夢の世界の空は、その人の心を映す鏡だ。
輝くときもあれば、どす黒く濁ることもある。
そんな世界を、少年は今日も漂っていた。
ユメト。
人の夢に入り込み、その中で遊ぶことで生きる、夢の住人。
けれど、夢は変わってしまった。
昔は色鮮やかで温かくて、触れるだけで胸が躍る場所だったのに。
今では誰の夢も、疲れと不安に沈んでいる。
「……ここも、暗い夢だな」
少年はふわりと宙を歩きながら、沈んだ灰色の世界を見回した。
地面にはひびが走り、空は薄紫に濁り、
遠くで誰かの叫び声のような風が吹いた。
人間の心が疲れているほど、夢は重くなる。
そんな夢に入り続ける日々に、ユメトはゆっくりと、
孤独の重さを感じ始めていた。
会っても、どうせ朝になれば忘れられる。
遊んでも、それはただの“夢の影”。
自分が誰かの記憶に残ることは決してない。
「……また明日も、この調子かなぁ」
ため息が、白く淡く形になる。
透明な身体が少し震えた。
そんなときだった。
ふいに――遠くの闇の向こうで、ひとつだけ、
強く澄んだ光が瞬いた。
「……え?」
目を細めて見る。
まるで星がひとつ、夢の空に生まれたかのように、
美しく、まぶしく、静かな光が漂っている。
ユメトは息を呑んだ。
こんなに“温かい光”を見たのは、いつ以来だろう。
胸の奥がじんわりと熱くなる。
「……行ってみよう」
気づけば身体は光へ引き寄せられるように進んでいた。
まるで光に触れた瞬間、自分が救われるとでも思っているみたいに。
光の中心に辿り着くと、世界がふっと変わった。
青い空。
金色の草原。
風が頬を撫でる。
まるで絵本のように優しい景色。
夢の世界では滅多に見ないほどの“輝き”。
「……すごい……」
ユメトは目を見開き、胸を押さえた。
心が久しぶりに――跳ねた。
そして、草原の真ん中に、一人の少年が立っていた。
柔らかな黒髪。
どこか寂しそうな、でも無邪気な表情。
名前も知らないその少年は、空を見上げて笑っていた。
「綺麗だな……」
その声に、ユメトの胸がさらに熱くなる。
理由は分からない。
ただ、本能的に――
この少年の夢だけは、他の夢と違う。
そう思えた。
「ねぇ、君!」
ユメトが声をかけると、少年が振り返った。
透き通るような瞳がユメトを捉えた瞬間。
世界がぱっと光を帯びた。
その光に照らされながら、ユメトは気づいた。
――ああ、俺、久しぶりに“生きてる”って感じた……。
それが、ユメトと少年・遥の初めての出会いだった。