テラーノベル
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仁人side💛
あの日。
勇斗を引き止めた日から、
勇「仁人」
不意に名前を呼ばれるだけで、心臓が跳ねる。
移動中、いつもみたいに隣に座られるだけで、妙に落ち着かない。
ふわっと香る勇斗の匂いに、胸の奥がじわっと熱くなる。
確実に、ヒートが近づいている。
それに加えて、最近…なんか上手くいかない。
ラジオで、 話そうとしてたこと飛ばしたり。
勇斗に振られた話に、変な返しをして微妙な空気にしてしまったり。
あとから、あれ違ったなって一人で反省する。
収録中も、言葉選びが絶妙に噛み合わない。
前ならもっと自然にできてたのに。
自分でも分かるくらい、ズレている。
そんな中でも、勇斗は変わらない。
無理に距離を詰めてこない。
俺が少しでもしんどそうだと、ちゃんと引く。
触れたいくせに、我慢しているのが…分かる。
今日も収録と撮影のある仕事。
楽屋で、メイク直しを終えて、次の収録を待つ。
「じゃあ次、1人ずつコメント撮りお願いしまーす」
仁「はい」
返事して立ち上がる。
けど、足が妙に重い。
頭もぼんやりする。
カメラ前に立つと、ライトを向けられる。
視界の端、少し離れたところに勇斗がいる。
壁にもたれながら、こちらを見ている。
その視線だけで、また心臓がうるさくなる。
「じゃあ最後、一言お願いします!」
仁「えっと…今回の企画、すごく楽しかったので、ぜひ皆さんにも……」
そこで、言葉が止まる。
あれっ、何言おうとしてたっけ…
頭が真っ白になる。
数秒、沈黙が流れる。
「あ、大丈夫です!もう一回いきましょう!」
仁「……すみません」
笑って誤魔化す。
こんな単純なミス、らしくない。
ちらっと勇斗の方見る。
勇斗は何も言わず、ただ、少し心配そうにこちらを見ている。
撮り直し。
今度こそ、と思ったのに…
仁「ぜひ楽ち、楽しんで……くださる、くださっ」
「あっ一旦止めます…!」
仁「はは……っすみません、ごめんなさい」
自分で言ってて情けない。
スタッフさんは優しく笑ってくれるけど、それが逆にしんどい。
楽屋に戻って、ソファに沈み込むように座る。
深く息を吐く。
体がだるい。
熱い。
なんか、ずっと落ち着かない。
スマホを開いても、文字が全然頭に入ってこない。
その時、
勇「仁人」
低くて優しい声。
顔を上げると、勇斗が少し離れたところからこちらを見ていた。
仁「……なに」
勇「今日、無理してるでしょ」
心臓が大きく跳ねる。
仁「……してない」
反射的に返す。
勇「嘘」
即答。
でも、言い方が優しい。
責める感じじゃなくて、分かってるっていう声色。
それが余計に困る。
仁「なんだよ」
勇「コメント撮り、2回も噛んでた」
ちゃんと見られてた。
仁「……たまたま」
勇「たまたまって顔してなかった」
そう言いながら、勇斗が隣に座る。
近い。
肩が触れそうなくらい。
その距離だけで、また体温が上がる。
でも、嫌じゃない。
むしろ、離れてほしくない。
勇斗は、それ以上何も聞いてこない。
その沈黙が、妙に優しい。
変に励まされたり、無理に元気づけられるより、ずっと落ち着く。
ふと、勇斗の手が背中に触れる。
大きくて、あったかい手。
ゆっくり、落ち着かせるみたいに背中をさすられる。
その瞬間、張ってたものが、一気に緩む。
勇「頑張ってたじゃん」
小さい声。
優しく落ちてくる。
仁「頑張れてない」
気づいたら、口から漏れていた。
自分でも驚く。
勇斗は否定しない。
勇「うん」
静かに頷くだけ。
仁「最近さ……」
喉が少し詰まる。
でも、もう、止められない。
仁「なんか全部うまくいかなくて…」
仁「ラジオも変なこと言うし、回しも上手くできないし、喋ってても違ったってなるし…」
仁「さっきも…普通にダサかった」
最後、小さく笑って誤魔化そうとする。
でも、声が全然笑えてない。
勇斗が少しだけ眉を下げる。
勇「そっか」
それだけ。
そんなことないって軽く流さない。
無理に励まさない。
ただ、ちゃんと受け止める。
勇「しんどかったな」
その声が、びっくりするくらい優しくて。
胸の奥が、ぐしゃっと締め付けられる。
ああ、俺。
分かってほしかったんだ。
正しい言葉じゃなくて。
慰めでもなくて。
ただ、しんどいって、認めてほしかった。
勇斗の手が、またゆっくり背中を撫でる。
その温度が、あったかくて…
優しくて…
気づいた時には、ぽろっと涙が落ちていた。
仁「……っ」
自分でもびっくりする。
泣くつもりなんかなかった。
でも、止められなかった。
勇「え、ちょ……」
勇斗が少し慌てた声出す。
でも次の瞬間、ふっと優しく笑う。
勇「お前が泣くの…久しぶりじゃん」
その声が、あまりにも優しくて、
勇「こりゃあ相当溜め込んでたなぁ」
背中を撫でる手が、さらに優しくなる。
子どもをあやすみたいに、ゆっくり。
それが余計泣きそうになって、思わず顔を伏せる。
勇「よしよし」
小さく笑いながら、でも本当に大事そうに触れてくる。
その手が、安心する。
気づいたら、自分から少し勇斗に寄りかかっていた。
肩に額が触れる。
勇斗は何も言わない。
ただ、当たり前みたいに受け止める。
その体温が、静かに心を落ち着かせていく。
仁「……勇斗」
勇「ん?」
仁「……ありがと」
掠れた声。
でも、ちゃんと伝える。
勇斗が少し笑ったのが、肩越しに分かった。
勇「どういたしまして」
その声聞いた瞬間、また胸が熱くなる。
多分、もう分かっている。
勇斗だから、こんな風に弱くなれる。
勇斗だから、全部預けてもいいって思える。
しんどい日も、うまく笑えない日も。
こうやって隣にいてほしいって、自然に思ってしまう。
これから先も、何年後も。
仕事終わりに、当たり前みたいに隣にいて。
くだらない話をして、笑って。
疲れた日はこうして寄りかかって。
そんな時間を、ずっと勇斗と重ねていきたい。
なんて、そう思っていた。
勇斗の肩に額を預けたまま、ゆっくり息を吐く。
背中を撫でる手は、変わらず優しい。
一定のリズムで、落ち着かせるみたいに触れてくる。
その手の温度感じてるうちに、さっきまでぐちゃぐちゃだった頭が、少しずつ静かになっていく。
勇「落ち着いた?」
耳の近くで、小さく聞かれる。
仁「ん」
掠れた声で返すと、勇斗が少しだけ笑う。
勇「よかった」
その言い方が、あまりにも優しくて、また少し泣きそうになる。
でも今度は、ちゃんと堪える。
そのあと、残っていた収録に戻った。
正直、まだ体はだるかった。
熱も引いてない。
でも、さっきまでみたいな変な焦りは、なくなっていた。
「はい、じゃあもう一回お願いします!」
仁「はい」
カメラ前に立つ。
深く息吸って、言葉を出す。
仁「ぜひ皆さんにも楽しんでいただけたら幸いです!」
今度は、ちゃんと言葉に詰まらず、言えた。
「オッケーです!」
その瞬間、小さく息が抜ける。
視界の端。
勇斗が、少し離れたところで微笑んでいる。
ほら大丈夫じゃん?
そう言われたみたいで。
なんかむず痒くて、ちょっと悔しくて、軽く睨む。
でも、勇斗は楽しそうに笑うだけだった。
収録が全部終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。
「お疲れ様でしたー!」
スタッフの声が飛び交う中、メンバーたちが帰る準備を始める。
太「じゃあ先帰るわー」
舜「おつかれー」
柔「顔色まだちょっと悪いからちゃんと休めよ?」
仁「ん、あんがと」
そう返すと、柔太朗が優しく微笑む。
その横で、勇斗も荷物まとめながらこっちを見ていた。
俺たちは、今日はまだ帰れない。
後日ある、2人の仕事の打ち合わせが残っている。
「じゃあお二人、あと10分後くらいに会議室お願いします」
勇「はーい」
仁「はい」
メンバーたちも出ていって、楽屋の空気が急に静かになる。
ぱたん、とドアが閉まる音。
その瞬間、妙に勇斗との距離を意識してしまう。
さっき泣いたせいかもしれない。
肩を借りたせいかもしれない。
なんか、変に落ち着かない。
勇斗が、隣に座る。
さっきより近い。
でも、もう避けたいとは思わなかった。
勇「仁人」
名前を呼ばれる。
その声だけで、また胸が熱くなる。
勇「さっき、ちゃんと撮れてよかったじゃん」
仁「まあ」
勇「ほら、やっぱ考えすぎだって」
軽く笑いながら言う。
優しい目。
ずっと、俺のことを見ていた目。
仁「お前さ」
勇「ん?」
仁「なんでそんなちゃんと見てんの」
思ったまま口から出る。
勇斗が少し瞬きしたあと、ふっと笑う。
勇「好きだからだけど」
即答。
こういうとこ…
胸の奥が、またじわっと熱くなる。
勇斗は、恥ずかしがる俺見て楽しそうに笑っている。
その顔見ていて、ふと思う。
前から、すごい奴だとは思っていた。
周りをちゃんと見てるし、空気も読める。
誰かが置いていかれそうになると、自然と手を差し伸べる。
優しいのに、押し付けがましくない。
だから、メンバーとしても尊敬していた。
でも今は、その全部が…
好きなところに変わっていく。
しかも勇斗は、ちゃんと言葉にしてくれる。
勇「好き」
勇「今日もかわいい」
勇「仁人といると落ち着く」
恥ずかしくないのかってくらい、真っ直ぐ。
でも俺は、ちゃんと返せていない。
嬉しいくせに、照れて逃げてばっか。
勇斗ばっか、伝えてくる。
それが、ずっと引っかかってた。
だから、少しでも返したいと思った。
さっきまで賑やかだった空気が嘘みたいに静かで、エアコンの音だけが小さく響いてる。
勇斗はソファに座ったまま、ペットボトルの蓋を開けて水を飲んでいる。
喉が動く。
そんな何気ない仕草まで目に入って、また変に意識してしまう。
勇「ん、どした?」
視線に気づいたのか、勇斗がこっちを見る。
その瞬間、ちょっと言葉に詰まる。
でも、今は逃げたくない。
仁「……お前さ」
勇「うん?」
仁「普通にすごいよな」
勇斗が止まる。
ペットボトル持ったまま、瞬きをする。
勇「え?」
仁「周り見るの上手いし、気遣いできるし」
言いながら、どんどん恥ずかしくなる。
でも、止めたくない。
仁「あと、優しいし、俺が無理してんのも、すぐ気づくし」
仁「……そういうとこ、前からすごいと思ってた」
勇斗は、完全に固まっている。
仁「最近は、その……」
体がさらに熱を帯びていく。
でも、ちゃんと言いたい。
仁「尊敬とかだけじゃなくて…」
仁「普通に…好きだなって思う」
言った瞬間、心臓がうるさくなる。
恥ずかしすぎて、思わず視線逸らす。
でも、隣が妙に静かで、気になってちらっと見る。
勇斗は、片手で口元を押さえている。
仁「えっなに」
勇「いや…」
声が少し掠れてる。
勇「急にそんな来ると…思わなくて」
耳まで赤い。
珍しい。
仁「別に、思ったから言っただけ」
勇「やばっ…そんな急に来たら照れるんですけど…///」
小さく笑いながら、勇斗が深く息を吐く。
その顔見た瞬間、胸の奥が熱くなる。
心臓が、変にうるさい。
勇斗が好きだって、改めて実感させられる。
すると、勇斗の表情が急に変わる。
さっきまで笑ってたのに、少しだけ眉を寄せる。
勇「……っ」
小さく息を飲む音。
そのまま、ゆっくり深呼吸をしている。
仁「……勇斗?」
勇斗は、少し熱を帯びた目で、ゆっくりこっちを見る。
勇「仁人…」
低い声。
それだけで、どくんと胸が鳴る。
勇「最近、自覚なかった?」
仁「えっなにが……」
勇「匂い」
その言葉に、一瞬思考が止まる。
勇「めちゃくちゃ漏れてる」
言われた瞬間、一気に体が熱くなる。
勇「多分、ヒート…そろそろだろ」
優しく確認するみたいな声。
でも、その声もちょっと掠れてる。
……耐えてる。
俺の匂いに当てられてる。
その事実に、胸の奥がぎゅっとなる。
なのに勇斗は、無理に触れてこない。
ちゃんと距離守って、俺を優先してくれている。
その優しさが、また苦しくなるくらい嬉しい。
仁「予定的には少し先のはずなんだけど…ちょっと早まってるかも…」
自分で言いながら、また胸の奥がざわつく。
勇斗は、そんな俺をじっと見つめたまま、また少しだけ眉を下げる。
勇「それってさ」
小さく息を吐く。
勇「俺のせいだったりする?」
その声は、少し嬉しそうで、でも、どこか心配そうで。
勇「最近ずっと一緒いるし…刺激しすぎてたらごめん」
そんな風に言われて、胸がぎゅっとなる。
仁「別に」
視線逸らしながら返す。
でも、ちゃんと伝えたかった。
仁「大丈夫だよ」
勇「ほんと?」
仁「仕事はできてるし」
少しだけ間が空く。
喉が熱い。
でも、今なら言える気がした。
仁「それに……」
勇斗を見る。
優しい目。
ずっと、待ってくれてる目。
仁「勇斗もいるし」
言った瞬間、一気に恥ずかしくなって、思わず下を向く。
耳まで熱い。
その瞬間、勇斗が両手で顔を覆う。
勇「無理…///」
掠れた声。
勇「そんなこと言われたら、ほんと無理なんだけど」
小さく笑う。
でも、全然余裕のない顔。
勇「ただでさえ匂いでギリギリ耐えてるのに」
深く息吐きながら、勇斗がこっちを見る。
その目が熱くて、どきっとする。
勇「今、めちゃくちゃ抱きしめたい…っていうか、もう限界寸前」
そう言いながら、ちゃんと距離を守ってくれている。
勇斗の優しさが身に染みる。
そして、ふと、明日の予定を思い出す。
仁「そういえば」
勇「…ん?」
仁「お前、明日午前休だっけ」
勇「そう…だけど」
仁「じゃあ…」
言葉にした瞬間、また心臓が速くなる。
仁「今日この後……うち来ない?」
勇斗の目が、一瞬大きくなる。
仁「ま、まぁ?せっかくの休みだし、自分の家でゆっくりしたいなら、別にっ」
最後まで言う前にぐっと腕を引かれる。
そのまま強く抱きしめられる。
仁「っわ」
勇「行く」
即答。
しかも、声がめちゃくちゃ嬉しそう。
勇「こんな誘われ方して耐えられるわけない」
抱きしめたまま、勇斗が笑う。
その声が、ちょっと子どもみたいで。
思わず、ふっと笑ってしまう。
……かわいい。
そんなこと思う自分にも、前なら絶対、戸惑っていたと思う。
でも今は、嫌じゃない。
好きだと思ったことを、ちゃんと好きだと思える。
甘えたい時に、引き止められる。
一緒にいたいって、口にできる。
勇斗の前だと、少しずつ、自分を素直に出すことに躊躇がなくなっていた。
勇「こんな状態で仁人んち行って、俺ほんとに大丈夫かなぁ」
わざとらしくニヤニヤしながら言ってくる。
仁「……知らねぇ」
勇「え〜冷たいなぁ〜」
仁「とりあえず夜風で頭冷やしてこい」
そう言うと、勇斗が吹き出す。
勇「ははっ、ひどっ笑」
でも、笑ってる顔が嬉しそうで。
その顔見てるだけで、胸の奥があったかくなる。
もっと一緒にいたいって、自然にそう思っていた。
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本当に最高です。天才です。ありがとうございます!