麗華との壁は、母だけじゃなく、私との間にもあった。
その壁はなかなか崩れなくて、どうしようもなく厚かった。
新しい母親と姉が気に入らないのはわかる、でも、麗華の言葉はいつも私達の心を深くえぐった。
私の2歳下、23歳、172cmでくっきりした目鼻立ちの美人。
ブラウンのロングの巻き髪で、メイクもバッチリ。
その美しい顔立ちとスタイルを活かして雑誌モデルとして活躍している。
男性関係もかなり派手で、特定の彼氏はいないみたいだったけど、いつも誰かの影がチラついていた。
そんな娘を心配した父が、麗華と九条さんのお見合いを提案し、九条社長も賛成して実現した。
麗華はあっさりお見合いを受け入れたから、私は2人が相思相愛なんだと……ずっと思ってた。
だから……
あの夜のことが本気だったのか嘘だったのか、九条さんの気持ちが結局今もわからないままで。
とにかくそんな環境の中でも、義理の父にあたる一堂 誠之助は、母と私を大切に思ってくれた。
実の娘のように可愛がってくれて、それが本当に有難かった。
私が雪都を妊娠したと告げた時もすごく喜んでくれ、子どもの父親のことは「彩葉の好きな人なんだろ? お前はもう大人だから」とあえて聞かないでいてくれた。
その対応にどんなに救われたか。
孫と一緒に暮らしたいと懇願され、期待には応えたかったけど、やはり一堂家で子どもを産み育てるわけにはいかなかった。
せめてマンションの費用だけはどうしてもって言ってくれて、悩んだけどその援助は受けることにした。
仕事のことではちょっと厳しい社長だけど、プライベートの父は本当に優しい人。
見た目も長身で渋くて、年齢の割には若く見えてカッコいい。
母と同じくらい大好きで大切な家族だ。
今はたまに雪都に会うのを1番の楽しみにしてくれて、デレデレのおじいちゃんになってる。
雪都の本当の父親が誰なのかを知ったら……
そう思うと、父にも麗華にも申し訳なくて苦しい。
麗華のいない時に実家に戻ったりしてる自分が、コソコソしててすごく嫌だったけど、妊娠がわかった時も「父親のいない子を産むなんてどうかしてるわ」と散々言われ、私の中で麗華に対する感情は複雑なままだった。
妹なんだから、できることなら家族として笑顔で話したい。
なんでも相談し合えるような存在になれたらどんなに嬉しいだろうか。
今まで何度もそう思ってきた。
でも……その願いは叶わず。
今の私には麗華との距離を縮める方法なんてわかるはずもなかった。
麗華のことになるといつも冷静な判断ができなくなる。
情けないよ……私はお姉ちゃんなのにね。
母親、仕事、家族……
まだまだどれをとっても未熟で中途半端な自分。
年齢だけは当たり前に増えていくのに、中身は全然伴わなくて。
だけど、母が私をここまで育ててくれたように、今度は私が1人で雪都を育てなきゃいけないんだ。
母親と、そして父親としての役目も、できる限り頑張りたい。
みんなに甘えてばかりじゃいけない。
雪都がいるこの生活を幸せだって思えることに感謝して、しっかり地に足をつけて1歩前に踏み出していきたい。
必ず幸せにするよ。
誰が何と言おうと、雪都は私が守り抜くから。
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