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「ありがとうございます。恭ちゃんでも、最後まで走ることができそうな距離でよかったね!」
「和臣に俺の心配をされるとは、思いもしなかった……」
「だって恭ちゃんはペーパードライバーなんだから、心配して当然でしょ」
「榊さん、大丈夫ですよ。普段乗らないからこそスピードを出しちゃいけないと体が自然とセーブするので、危ない運転にはならないと思います」
「そうなんですか。だったら普段運転する僕らは、気をつけなければいけないですね」
人当たりのいい佐々木の対応に、和臣は緊張せずに相づちを打ちながら嬉しげに笑った。
「雅輝の場合はどうなるんだろうな。普段の乗り方を考えると、コーナーを突き破ってしまうような気がする」
「陽さん酷い! そんな危ない運転、俺は絶対にしませんからね」
「宮本さんのご職業はなんですか? 普段の乗り方って……」
疑問に思ったのか、橋本と宮本の会話に割って入った佐々木。きょとんとした表情で、目の前にいる面々を見やる。真相を知っている榊と和臣は、互いに顔を見合いながら苦笑いを浮かべていた。
「えっと俺は、トラック運転手なんです……大きい車を運転してるからって、荒っぽいことは危ないからしていないというのに」
「ちなみに俺はハイヤー運転手で、隣のコイツはペーパードライバーだから、俺が代わりに運転手してる。和臣くんは会社の営業で、時々乗るんだったよな?」
しどろもどろに答える宮本を他所に、橋本は榊たちの分まで丁寧に説明をして、佐々木の返答を待った。
「あ~ドライバー同士だから運転のことについて、お互いいいネタになりそうですね」
「そうなんです! 陽さんは本当に容赦なく、いろいろ突っ込んでくるから」
「容赦なくコーナーに突っ込んでいるのは、どこのどいつだよ?」
普段見ることのできるふたりの様子に、榊は笑いを堪えながら話しかけた。
「はいはい、そこまで! おふたりが仲良くしているせいで、佐々木さんが困っているでしょう。そろそろ本題に入らせてあげたらどうです?」
「恭介悪い。雅輝は無視したままでいいから、佐々木さんどうぞ本題に移ってください」
食ってかかりそうになっている、宮本の視線を完全無視した橋本はきちんと前を向き、営業スマイル全開で佐々木と対峙する。そのことでしょぼくれた宮本と、崩れることのない微笑みを頬に湛える橋本、気を遣いまくる榊と和臣という微妙なカルテットができあがったのだった。