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8月2日はバニーの日ということでね。滑り込み投稿です。
急いで仕上げたので、読みづらいところがあるかもしれません。
とある会議、大きな会議室には、多くの国が揃っている
議長である国連が場を締め、さっさと帰ったその直後、大きな声が僕らの注目を集めた
「よーし!じゃあ今日は“バニーの日”ってことで……みんなでバニーボーイになろうぜ!!」
声高にそう宣言したのは、いつも陽気なアメリカさん
どこからか大量の紙袋を抱えて来た彼は、興奮気味に言葉を続ける
「服は、俺が用意しておいたから!着替えてくるだけでいいぞ!な、楽ちんだろ?」
また変なことしだしたなあの人…
というか、あの服代いくらだよ。無駄遣いにも程があるって…
突っ込む気力もなくして溜息を吐く
同様に呆れた表情を見せる面々
アメリカさんの突然の発言に呆れるのはいつもの事
しかし、今日はなんだか様子が違った
「突飛な企画ですが…面白そうですね」
「…たまにはいいかもな、そういうのも」
「……悪くはない 」
僕の近くに座る、イギリスさん、ロシアさん、中国さんが肯定の意を示す
イギリスさんはともかく…ロシアさんと中国さんがアメリカさんに同意するなんて……
明日は世界が滅びるのだろうか
そう思ってしまうくらい驚いていると、フランスさんがへぇ、と口角を上げた
「お揃いの服を着て仲良くしようってわけか。いいじゃん」
「仲を深めることにデメリットはないからな。いいだろう」
珍しく、ドイツさんも肯定している
そして、イタリアさんが、目をキラキラと輝かせて僕の腕を掴んだ
「楽しそうなんね!日本もやろ〜!」
もちろん参加するよね?
そう伝えてくる無邪気な視線と、皆の目が、じっと僕を見つめる
圧を感じる雰囲気に少しの恐怖を感じながら、答えた
「……はい。まぁ、それくらいなら……」
バニーボーイというのが気にかかるが、控えめに頷く
断ったら場のテンションが下がりそうだし、何より他の国もみんな賛同している
お揃いの服で、仲を深める為
そう言われてしまえば、賛同しない訳にはいかなかった
「HAHA!!決まりだな!まあ拒否権なんて用意してなかったけど」
「強制だったんですかこれ」
ほんと強引だなこの人…
再び呆れる僕に、ハイテンションなアメリカさんが「これお前のな!」と紙袋を押し付ける
部屋の名前が小さく書かれた、厚い紙袋
何故か袋の中身は黒い布で覆われていて、上からは見えないようになっていた
「皆紙袋受け取ったか?それぞれ個別の更衣室で着替えて、ここに集合な!」
ちゃんと着てこいよ!
念を押してくるアメリカさんを背に、紙袋に記載された部屋へと向かった
****
指定された更衣室に行き、鍵を閉める
黒い布で覆われていた中身
ビニールに包まれたそれを開けると、そこにはとんでもないものが入っていた
(……えっ、なんで……!?)
確認のため服を取り出して、手がピタリと止まる
中に入っていたのは、明らかに“ボーイ服”ではない
うさ耳のカチューシャ、胸元がざっくり開いた、しっぽ付きの黒いレオタードそして、網タイツ
(バニーボーイって……こ、こういうのだっけ…?)
混乱する頭。そんなわけないだろと冷静な自分が着用を拒む
でも、了承してしまった以上、今さら着ないとは言えない
どうすればいいんだ…
上手く回らない思考の中で、一つ、ある考えが浮かんだ
…もしかして、他の国も同じようなドッキリをされてるのでは?
悪戯好きのアメリカさんの事だ、十分に有り得る
逆にそれしか考えられない。そうであってくれ
淡い期待を抱いて、着替えを済ませる
——そして、己の判断が甘かったことをすぐに知った
会議室に着いて、ドアを開ける
既に集まっていた他の国たちは、みんなちゃんとバニーボーイスタイルだった
襟付きのベスト、控えめなうさ耳、シンプルなスラックス——男らしくスマートにまとまっている
そして、唯一バニーガール姿のまま立ち尽くすのは、ただ一人、僕だけ
受け入れ難い現実に、ただ呆然とする
その時、アメリカさんがこちらを向いた
「よっ、日本!……って、おい……!!」
「……っ!?み、見ないでくださいっ……!!!」
せめてもの抵抗に腕で胸元を隠し、逃げようとする
しかし、ぬっと伸びたアメリカさんの手によって、ドアが完全に閉まり、退路が絶たれてしまった
「……本当に、可愛らしい」
「すごいね、日本。まさか、ここまで似合うなんて……」
柔らかな笑みを浮かべ、軽い足取りでこちらへ来るイギリスさんとフランスさん
まずい。彼らに囲まれたら、絶対に逃がしてもらえない
ドアがダメなら、いっそ窓から…
背を向けた瞬間、イタリアさん、ロシアさん、ドイツさんが壁のように取り囲んできた
「はい逃がさな〜い♡」
「その姿で逃げるつもりか?そっちの方が恥ずかしいと思うが」
「日本のこんな姿、他のやつに見せたくねぇ。大人しくここに居ろ」
背後から伸びる、たくましい腕
腹にまわったそれが、僕の体を分厚い胸へと引き寄せる
露出した肌に触れる冷たい温もりが、”もうお前は逃げられない”と告げていた
「ねえ日本……これは、ioのために着てくれたの?」
イタリアさんの指が頬を滑り、熱が昇る
色気と羞恥にあてられて、全身が発火してしまいそうだ
「ち、違いますっ!!これは……っ、そういう服が、入ってたからで……っ!」
そういう服を着ているという事実を再確認して、現実から目をそらすよう、俯く
潤む目を見られたくなくて、手で顔を隠そうとしたが、目の前にいたドイツさんに手首を掴まれてしまった
「やっば……それ顔……可愛すぎて……やばい」
顔を覗き込んだフランスさんの言葉に、羞恥で思考が止まりそうになる
目の前の国たちの視線は冷めない
むしろ、今この瞬間を焼き付けようとしているかのように、鋭くて熱い
「……日本さん、笑ってみてください」
「照れる顔もいいが…笑ったらもっといいんじゃないか」
左右から僕の手を取るイギリスさんと中国さん
優しいその手つきと言葉に、心が緩む
でも、緑と黄色の瞳に真っ直ぐ見つめられると、色んな感情でおかしくなってしまいそう
「や、やめてください…これ以上……恥ずかしくて……っ……!!」
「…じゃあ、記念写真撮ろう。それで許してやる」
ずっと静かだったアメリカさんが、静かにつぶやく
その言葉は救済か罠か
“恥ずかしい姿が記録として残される”というリスクに選択を迷っていると、イギリスさんが耳元で囁いた
「写真を撮るか、ずっとこの姿でいるか。賢い日本さんなら…正しい選択ができますね?」
悪魔の囁きとしか思えない、低く甘い言葉に脳を狂わされる
しおらしくなった態度が僕の答えだ
「撮るんね〜!みんな寄って〜!」
すかさず、イタリアさんが三脚にスマホをセットして、位置を調整する
「日本!ほら、ピースするんね!」
タイマーカメラのシャッターを押したイタリアさんと、しれっと隣に立つ中国さん
二人の腕がするりと絡む
肩、腰、腕。全てを拘束されながら、震える手で、無理やり形作るピース
もう二度と、同調圧力には負けない
断る力を身につけるんだ。絶対に
この瞬間、羞恥に侵された心で、強く意志を固めるのであった
その日の夕方
会議室には、日本を除いた7人の国が集まっていた
テーブルの上にはコーヒー、書類、そして…一枚の写真
そこには、網タイツに身を包み、レオタード姿で顔を真っ赤にした日本の姿がしっかりと写っている
カメラ目線ではないが、むしろそれが”不意打ちの美”として極まっていた
「いや〜〜〜〜、あの日本、マジで可愛かったなぁ!!」
アメリカがニコニコしながらスマホに保存した写真を眺める
「今回は見事だったな」
ロシアが低く唸るように言った
「まさかあそこまで完璧に、上手くいくとは」
「日本さんが断れないように、全体に“バニーボーイ企画”としてアメリカが提案し、皆で同調圧力を作る。そして、日本さんのものだけガール用にすり替え、着替え終わった所を囲い込む…我ながら、完璧でした」
自分が立案した計画の戦利品、日本の写真を手に取って微笑むイギリス
その両隣に座るドイツとフランスも、写真の中で恥じらう日本を、獲物を見るような目で見つめていた
「日本が着ないことを想定した対策案も考えたしな。日本の更衣室の場所も、ちゃんと隔離しておいたぞ」
「僕が作ったバニー服を着る日本、可愛かった…レオタードのカッティングライン、あれ、凄くこだわったんだよ。肩のライン、ヒップの角度、全部“見せる”用にね」
恍惚とした表情を浮かべる三国
その真正面に座る中国が、パソコンの画面を眺めて誇らしげに笑う
「我が更衣室にカメラを設置しておいたし、服を見て驚く日本を記録できた。恥ずかしがりながら服を着る日本、傑作だな」
「ロシアが日本を抑えてたから、ブレずにバッチリ写真撮れたんね!顔どころか全身が赤くなってる日本…これは永久保存するしかないんね」
無邪気なようで、じっとりとした色気を含んだ、甘い呟き
いたずらっ子のように微笑むイタリアが、スマホをロシアに見せる
様々な角度から撮られた、隠し撮りの日本を見て、先程の感触を思い出したのだろう
ロシアは熱を孕んだ声でイタリアに答えた
「肩とか鎖骨が赤くなってるのエロかったよな。火傷しそうなくらい熱くて、いい匂いして…発情期かと思ったぞ」
スマホを机に置いたアメリカが、メンバー全員の顔を見る
ニヤリと上がった口角。それだけで、アメリカの意図は皆に伝わる
「今度また日本にバニー服着させようぜ!今度は…会社以外でな♡」
魅惑的な提案に、高まっていく熱気
ゴクリと息を飲む音が響く中で、イギリスが続ける
「オスのウサギは年中発情期らしいですからね…メスウサギさんには、頑張ってお相手してもらいましょう♡」
「いい案だ。楽しみだな」
手帳を開きながら、ククッ、と笑うドイツ
つられるように、皆が目の奥を輝かせる
どこからか吹いた風が、ペラリと書類の表紙をめくった
作戦:Bunny Trap
次回が計画されたそれに、日本が振り回される日は、そう遠くないのかもしれない。
コメント
6件
これを見たからには、一生の悔い無し、、、┏┛墓┗┓
鼻血出そうです…