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うおお、第28話めっちゃ読み応えあったわ!潤の冷静なカウンターエグすぎる。「録音してる」からの逆転劇とか、まさにネットの「ザマァ」を武器にする展開がめちゃくちゃ爽快。知佳のとこに届いたメッセージの連続で、潤の疲れと「知佳に会いたい」って気持ちが伝わってきてキュンときたし、しょんぼりスタンプに笑ったw 次、スカイホテルでの再会がどうなるのか気になる🔥
「未来のことなのだから、仮定して喋るしかないだろう。ただ、そんなに的の外れたことは言ってない」
「だったら、特定班が潤さんを特定したら困るのはやっぱりそっちで──」
「そのタイミングで私が新しく作ったアカウントで、全ては上原杏莉さんから結婚を迫られ、既婚者である理由から断ったら事実無根のAI動画を流された。誠に不愉快であり、弁護士を雇い法的措置を取ると表明する」
「ほ、法的措置っ!?」
声のトーンが大きくなり、今度はスタッフだけではなく、周囲の入園者たちがぎょっとこちらを見ていた。それを横目で流し見したあと、信じがたい表情をしている彼女を見据える。
「当たり前でしょう。なぜ、こちらが大人しく黙っていると思っているんだ?」
「そんなことをしたら、知佳ちゃんが困って──」
「困らない。君の言う知佳像は、私の経済力に惚れている女なんだろう? 今の生活環境をそれなりの期間、維持できるだけの貯蓄はある。SACRAを辞めても他の仕事のアテは山ほどある。だから、君の教えてくれた通りの『知佳』は何も困らない」
「……!!」
「困るのは君だけだ。何しろ卑猥な動画が流出して、弄ばれたと被害者ぶった矢先に、それら全てをひっくり返されるんだ。そうなると君は、 SNSのユーザーのオモチャになる。結婚を断られ、自ら卑猥な動画を作ったさもしい女だと──」
「勝手なこと言わないでっ! そんなこと皆が信じるわけがないっ!」
彼女はバンッと乱暴にテーブルを叩いた。
このままグラスなどを倒されて、端に置いてあるスマホに被害が及ぶのを回避したい。
そう判断した俺は、これ見よがしにスマホをゆっくりと手に取り──動揺を隠そうともしない彼女へ、スマホを見せ付けた。
「信じると思いますよ。何故なら、今までの会話は全てこのスマホで録音している」
「は?」
彼女の言葉と同時に、テーブルの上に置かれたグラスの中で、氷がピシッと小さく割れる音がした。
氷が割れた音は上原杏莉の心にも響いたようで、彼女は目に見えて顔を引き攣らせていたが、構わずに言葉を続ける。
「話す前に連絡を入れた相手は知佳だ。知佳には、私がどのような理由で君とここで会話をするのか、事前にすべて伝えてある。だから知佳を抱き込めると考えるな。そして、このあと君の父親である上原専務にも、この音声データを添付した上で、今回の件をすべて報告する」
「パパにも言うのっ!? 酷い! ってか、勝手に録音だなんてプライバシー侵害とか、人権侵害でしょ!? 名誉毀損で、逆にこっちが訴えてやりたいんですけどっ!」
ふざけるなと、彼女は息を荒くして睨んでくるが、そんなものは痛くも痒くもない。言っていることがあまりにも無茶苦茶だった。
だからこそこちらは、より冷静に見えるよう、ゆっくりとスマホを手元に引き寄せながら、冷笑を浮かべた。
「君、インフルエンサーなのに知らないのか? ネットは、被害者ぶった人物が正しい力でやり返される『ザマァ』が大好きなんだよ。画面の向こう側にいる人間は、真実かAIかなんてどうでもいい。ただエンタメに興味があるだけだ。インフルエンサーが炎上していれば、よってたかって面白がる。卑猥な画像があればそれを勝手に広める。時間が経ってもデジタルタトゥーとしてwebに永遠に残る──これはすべて、君がさっき言った言葉だな」
「──っ!」
「君に本当に好きな人ができたとき、子供が生まれたとき、きっと困るだろうね。でも、私には知ったことではない。だから──上原杏莉さん。今すぐに動画をアカウントに公開したらいい。さぁ、どうぞ」
最後にわざとニッコリと微笑んでみせると、上原杏莉は周囲をキョロキョロと見回した。
頭上に天の助けでも乞うかのように高い天井を見つめたあと──すべてを諦めたかのようにガックリと頭を落として、小さな声で、
「……すみませんでした」
と、初めて謝罪の言葉を口にしたのだった。
※
備品室での潤とのキスは正直、ときめいてしまった。
でもその後一件がときめきの余韻を消し去るほどに堪えたが、残りの仕事を疎かにする訳にはいかない。
あのあと、潤はどうしたのだろう。
上原専務とインフルエンサーの『Uehara』の関わりなど、気にしたらキリが無い。
気持ちはずっと落ち着かないではいたが、表面的には長年培ってきたクールさで、なんとかボロが出ずに定時を迎えた。
先輩たちに挨拶をしてから部署を出て、さっとスマホを見ると、潤から怒涛の連続メッセージを受信していてびっくりした。
「わ。えーと、最初のメッセージが……って、ぇえっ!?」
その内容に驚き、自らの口をパシッと抑えて廊下の隅に身体を寄せる。
そして、深呼吸してもう一度潤からのメッセージに目を通した。
『今、上原専務の娘でもある、結婚を勧められた相手、上原杏莉(インフルエンサーの『Uehara』)と会っている。俺のことを諦めていなかったそうだ。断るために話す。やましいことはない。俺が好きなのは知佳だけ』
『今、上原杏莉との会話が終わった。念書を書かせて、署名と母印済み。もう大丈夫』
『疲れた。知佳に会いたい』
『ことの顛末を話したいから、スカイガーデンがあるスカイホテルまで来て欲しい。部屋で待ってる』
そして最後にまた、『知佳、早く会いたい』だった。
「こ、これは潤に一体何があったの? 念書を書かせた……インフルエンサーの『Uehara』が上原専務の娘さんって……」
今すぐに潤に電話をして何があったのか確かめたくなるけれど、これは会って話したほうが良いだろう。
素早くスマホをタップして、潤に送るメッセージを口にしながら返信する。
「今から、行きます。待っててね」
すると直ぐに潤から返信が来て、部屋のナンバーと『知佳に癒されたい』というメッセージ、そして珍しくスタンプが送られてきた。
しょんぼりしているスタンプを使うあたり、潤は相当疲れているのだと思った。
スマホを鞄の中に入れて、素早くエレベーターへと歩き出す。
「私と別れたあと、何があったのかしら……」
今日はもう、気になることだらけの一日だ。
けれど、そんな慌ただしい中でも、潤がずっと私を好きだと言ってくれたことはとても心強い。
潤は本当に、私のことが好きで結婚をしたのでは──。
そんな甘い妄想が広がり切る前に、必死に足を動かして思考を振り切る。
私は急ぎ足で、彼が待つスカイホテルへと向かうのだった。