テラーノベル
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これは物語ではありません。設定に触れた瞬間、実際に生じた体感・記憶・感情をリアルタイムで記録した体験の痕跡です。
このシリーズでは、
「”ナニカ”に近づくたび、記憶が静かに塗り替わっていく」
という設定のもと、
毎回異なる人物が、“存在の揺らぎ”を体験していきます。
《接触記録:001 老婆視点》
瞼の裏が、なぜかずっと明るかった。
目を開けた時、眩しさよりも“息の通らなさ”に気づいた。
はーー…、死後の世界って、やつなのか。夢か…。死後の世界にしちゃあ、三途の川もありゃしないし、なんなんだろね。
膝も痛くない、姿勢は、…痛くなくても良くは出来ないね、ずっとこうだったからこの位置で固まってんのか。
辺りは、白い、白い床、淡い自然光のような黄色の混じった光。
天井のあちらこちらから淡く光が差し込んで、ここが現実でないのは明白だ。部屋だ。と思うのに、壁が見えない。
天井はあると感じるのに天井は見えない。
ただ、何か途中にあって、それのせいで光が淡くなると感じるだけ。
おっとさんのとこに行くのかと思ったら全くあの人も意地悪だねー全く。さっさと天国に行かせてくれりゃァいいのにね。
少し左に首を倒すと、痛みは無いがハリがある。
ふと、首に手をやる。相変わらずのシワシワの手筋張ってるのに皮の余る首。昔は指が長いと褒められたもんだが、今の歳になっちゃあ手の綺麗さも何も無い。
両の手のひらを広げて見てみると、焼けた手の甲と酷く色の差がある、白いしっとりとした手のひらの左の薬指に視線が移る。
まぁ出来れば若い頃の姿であの人のとこへ逝きたかったけど、まぁあの人は、「そんな君も素敵だ」と、言ってくれるだろうね。
指輪、あの人もまだ付けとるかね。
少し感傷に浸って、辺りを見渡す。
はっきり見えないが、少し離れたところに、なにかが見える。気がする。分かるのは、おっとさんじゃあ無いって事だけ。
見た目はなんとも半透明のような…なにかなそれを、目を凝らして見ようとするが、視力は良くならないのか、あまりよく見えない。
いつものように、右のポケットに入れているメガネを探そうと、手を入れるが入っていない。
あー寝る時に持ってきてなかったからかね。なるほどねー。意外とまぁなんていうか、現実的なのか…
そのモノに向かって、
進む あーあのバカ息子。死んだらちゃんと、すぐ見つけて、おっとさんの墓に入れてくれるだろうね。
進む ちょっとはびっくりするんかね。あの子。私がいつまでも死なんと思ってるみたいにしとるし。
進む
あん子ひとりでほんとに生きてけるのやろか
彼女の1人もおらんで50も過ぎて
進む
足が、もつれる。いつもは倒れるような絡み方も、今は右足の膝を少し踏ん張るだけで倒れない。
体は使い方覚えてるもんだねぇ。痛みがないなら、そのほうがええな。
進む
さて、あれはなんかしら
進む
おっとさん、多分もうすぐ来てあげるよ
進む
あぁ、愛しい
進む
あぁ、早く、
進む ありがとう
そう思った。いつの間にか、形が変わっている気がした。
ソレは、どこからか垂れるように溶け、上からぽたぽたツーと黄色のような色のソレ降ってくる。大量のスライムを、上からゆっくりと流してるみたいに。
あぁ、良かった、報われた。
ぁぁ、一緒に。
顔にそれが上からかかる。
手にも、足の裏にも
でも、気にならない。なんとも思わない。ただ、頬から耳横に
顎から鎖骨に
おでこから、目に、それも耳横に
垂れる。
少し手を広げ、上を向いたまま口を開けた
ありがとう。この世界。
あたしはそれを、食べる。
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