テラーノベル
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「サチ!私は今日から1000m走を極めるよ!」
「サチって呼ぶな。」
加山第三中学校1年B組倉田ひかる。
運動神経抜群だが性格に少々難あり。座学の成績は底辺。
桃色の髪はすらっとしたストレートで、いつも下ろしている。
ぐんと開いた目には気を抜けば吸い込まれてしまいそうな危うさ。
とはいえ今のこの発言のように、よく言えば不思議ちゃん、悪く言えば変人である。
「勝手にやればいいけどさ、倉田どうせ足速いじゃん。極める必要あんの?」
スマホを片手に返事をしたオレは、サチこと榊原嘉伊千(さかきはらかいち)。
倉田とは保育園は同じだが、小学校はオレが引っ越したため違う。そして現在、再びこの辺りに越して来て加三中(加山第三中学校)に入学したところ、文字通り倉田が“いた”訳だ。
当人の倉田は今、頬を膨らませている。
「私は長距離より短距離の方が得意なんだよ。サチだってそうでしょ?」
「ん、まァな。」
こくりと頷きつつも、オレの目線は右手に持ったスマホ。最近ハマっている無料でダウンロードできたシューティングゲームだ。
「おっ、やっと死んだ…って、オイ取んな!」
丁度ステージのボスを倒したところで、倉田がひょいとスマホを奪った。
眉間に皺を寄せて睨むと、倉田は説教するような口調で説く。
「あのね、サチはゲームに汚染されちゃだめだよ。1回沼にハマると抜けられなくなって、他の人にも迷惑をかけるんだから。」
こんなことを言っている倉田だが、実はつい3ヶ月前…つまり小六の時まではスマホゲームにどハマりしていたと小学校時代の倉田の同級生から聞いた。
コイツがスマホを得たのは中学かららしいので、一体どうやってハマったのかは分からない。そして、中学に入って何がこいつを変えたのかも分からない…。
「さ、スマホの電源は切って!」
「はいはい。」
溜息をつきながら言われた通りにすると、倉田はまた言い出した。
「1000m走を極めよう!」
「だーかーら、勝手にやれっての。」
しっしっと手を振ったが、倉田は「じゃあ今日の放課後、グラウンド集合!」と言い残し、チャイムのきっちり5分前に教室へ戻って行った。
オレは溜息を着く。
……六年経ったらやっぱ、人って変わるものなのだろうか。
幼稚園時代の記憶なんて不確かなもの。でも、なんだか違う気がする。
元気だったのは…うん、元気だった。
我儘なのも相変わらずだ。
でも今みたいに時間を気にしたり、ゲームをやめさせようとしたりは、うん、あんま想像できない。
「(時は金成り、って言うけど)」
やっぱ六年って、結構長えのな。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 読了しました。倉田くん、昔と変わってる部分と変わってない部分のギャップがすごくいいなって思いました。ゲーム依存から卒業して、逆にサチくんを沼にハマらせないように注意するところに「成長」を感じます。でも、無茶な目標を突然言い出すとこは変わってなくて可愛い。サチくんの「六年って結構長え」にじんわりきました。続きも気になります。
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