少女を見送ったあと、俺は倒れかけたおどろくちゃんの体を受け止める。
「っと…」
「ごめんね凸先輩…」
「いいんだって、今はゆっくり休んでて。」
俺は顔色の悪いおどろくちゃんを、彼女の部屋まで運んだ。
「…ふう」
「あ、凸さん、おどろくさん寝ましたか?」
リビングに降りた俺に、しぇいどさんこと華乃しぇいどが話しかけてきた。
「うん、調子悪いのに無理に動いたから、顔色が悪くなってたけど…」
「………これでも昔よりは良くなってる方ですよね。」
「……………」
おどろくちゃんは生まれたときから病弱だ。
調子が良いときは動けるけど、調子が悪いときに無理に動くと、体調が悪化してしまう。
さっきも俺は休んでてって言ったのに、無理に動いたからか体調が悪化していた。
「………体を良くする魔具があれば、少しは楽になるのかな…」
ぼそっと俺は呟く。
「………この街のほとんどの魔具は、政府に奪われちゃったしね…」
いつの間にかいたべるちゃんこと紅森べるが、少し悲しそうに言った。
…そこで俺は昔おどろくちゃんが言っていたことを思い出した。
「……………俺達の目的は政府から奪われた魔具を取り返すこと、それを忘れてちゃいけない…おどろくちゃんも言ってただろ?」
「………そうだね。私達はおどろくちゃんから数え切れないくらいの恩を貰ってる。」
「その恩返しをしないとですね。」
俺達は政府に比べれば弱いかもしれない。
けどそれでも逆らってみせる。
「はあっ!はあっ!」
逃げなきゃ、逃げなきゃ…
俺は抱えている幼馴染を見る。
お腹が痛々しく抉られてて、思わず目を背けたくなる。
後ろから政府の人間が追ってくる。
絶対に、あんな生活には戻らない…
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