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まばゆい光が静まった部屋で、“ないこ”はそっと目を開いた。
ないこ:「……」
声は、まだかすれていたが、確かに“ここにある”。
ないこ(心の声):(これが……俺の“声”)
鏡は、粉々に砕けていた。
そして、その前に立っていたはずの“闇ないこ”の姿は、もうない。
けれど、確かに感じる。
“闇”は、俺の中に戻った。
ないこ(心の声):(これで、全部終わった――…)
そう思った刹那、
部屋の天井が軋み、低く唸るような音が響いた。
ないこ:「……なに?」
異変は、部屋の“外”からだった。
ギシッ……ギシッ……ギシィッ……
まるで、空間そのものが歪んでいくような音。
ないこは立ち上がり、扉を開ける――
目の前に広がっていたのは、いつもの廊下ではなかった。
灰色の空間。
浮かぶ階段。
反転した景色。
そして、遠くで嗤うような“声”。
???:「やっと、目を覚ましたか。声を取り戻して、満足したか?」
ないこ(心の声):(……誰……?)
ないこが一歩踏み出した瞬間、背後の扉は音もなく消えた。
完全に、“現実”から切り離された世界。
???:「ようこそ、次の“層”へ。
ここは、お前が“表現者”である限り逃げられない場所だ」
声の主は姿を見せない。
ただ、声だけが重く響く。
ないこ:「……何が、したい」
???:「お前がどれだけ“自分”を取り戻したつもりでも――
本当に世界に立てるかは、また別の話だ」
???:「“過去”と“責任”と“願い”を背負って、まだ立ち上がれるか?」
ないこ:「……やってやるよ。逃げねぇ。もう」
その瞬間、足元が崩れた。
落ちていく。
けれど、今度の“ないこ”は叫ばなかった。
落ちる中で、ポケットの中のスマホが震える。
画面には――
初兎「生きてたら、返事くれ」
いむ「お前が歌わなくても、俺たちは待つ」
いふ「そろそろ戻ってこい」
悠佑「おかえりって、言いたいんだけどな」
りうら「無理でもいい、でも、また会いたい」
その言葉に、喉が再び震えた。
ないこ(心の声):(世界は待ってくれない――…でも、仲間は、待っててくれる)
暗闇の底に、淡い光が見える。
ないこ:「……行くよ。俺の“歌”で、全部ぶち壊して、繋げてやる」
強く、強く、目を閉じて――
次回:「第三十一話:この闇がすべて、俺だったとしても」