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光一の為じゃない。綺麗だった自分を取り戻したい。
「調査をお願いしていた秋山ですけど、前回までの調査で終了して下さい」
まずは調査会社の解約を電話ですませる。
次はダイエット。
「ダイエットにエステは高すぎるから、○イザップンで、一気に痩せてやる」
結局、2ヶ月で12キロ落ちて、清香は160センチ、52キロと働いていた頃と同じ体型に戻っていた。
「お金は少しかかったけど、筋肉もついて体も凄く軽くなったわ」
○イザップンの帰り道、ショーウィンドウのガラスに映る自分は、少し綺麗になっている気がする。
◇◆◇
「ただいま。あれ、美香、来てたの?今日は留守にするって言ったじゃない」
清香は勿論、監視カメラで美香が来ていることを知っていたが、わざと驚いてみせる。
「え~お姉ちゃんが留守だと来たら来たらダメなの?ねえ、お義兄さん、美香が来たら迷惑?」
「そんなことないよ。いつでも遊びにきて。お前も妹相手に意地の悪いこと言うなよ」
「私が何言ったって言うのよ」
「ほら、そうやってすぐムキになるんだから。そんなだから、お義兄さんが、疲れちゃうんだよ。ねえ」
「なあ」
クズ男は、やはり美香の肩を持つ。
「私が悪かったわ。あなたたち2人が、あんまり仲が良いから焼きもち妬いちゃったみたい」
これは友美と決めた作戦の一つ。清香は光一が好きで、美香とベタベタされることに焼きもちを妬いていると言うアピールを監視カメラに残しておく。
これなら、妻の目の前でも2人がベタベタして、嫌がらせをしていた証拠になる。
「おばさんの焼きもちとかって、最悪なんですけど。お姉ちゃんのことじゃないよ。でも、気を付けた方がいいよ。焼きもち妬いて可愛いのは、美香みたいに若い子だけだから」
「それは言えてる」
「ねえ」
「なあ」
マジでこいつら、頭に虫わいてるんじゃないの?自分達が不倫してるとか、悪いことしてるって自覚がないの?
「うん。気を付けるね。いつもアドバイスくれてありがとう」
「いいんだよ。姉妹でしょ。お姉ちゃんの物は美香の物。美香の物は美香の物」
「あはははは、何だよ、それ。美香はジャ○子だな」
「やだ、美香はしず○ちゃんだもん」
お前らいくつだよ。何が面白いんだ、浮気野郎。
清香は思わず監視カメラを振り返りそうになるのをグッとこらえる。
『カメラ目線にならないようにね』と友美に注意されていたから。
◇◆◇
元同僚の友美から連絡が入り、駅の裏通りの比較的、客の少ない午後に喫茶店で待ち合わせる。
「超金持ちのハイスペック君が、妹の写真をみて、協力してくれるっていうんだけどさ」
「無理、私、お金ないよ」
友美の話しから、ただでは協力しないと言ってるのを察して、清香は先に牽制する。
「違う、違う。妹と一緒に写ってる清香の写真を見て、気に入ったみたいよ」
「いや、いや、いや。ありえないでしょ。妹に旦那を寝取られてる私を気に入ったとかって、それこそ詐欺だよ」
清香は、友美こそしっかりして、目を覚ましてと力説した。
自分のことを分かっているって悲しい。
「気持ちは分からなくもないけど、嘘じゃないと思うよ。嘘つく理由がないし、この時の写真はダイエットして綺麗になった今の清香と同じくらい綺麗な時のでしょ」
「もう、友美が旦那だったら浮気されなかったのに」
会うと励まし優しい言葉を投げかけてくれる友人に、清香の瞳は潤んでしまう。
「ほら、また泣かないの」
小さな手が、素早くテーブルの上のナプキンを2枚取り出して、清香に渡す。
「ありがと」
清香は涙を拭きつつ、鼻からでた鼻水もこっそり拭き取った。
「それで旦那には内緒で、妹に話してごらん。超金持ちが、恋人募集中だけど、会ってみるかって」
「光一がいるのに、他の男に興味なんて持つかな?」
「もう一つ、余計なお世話に聞こえるかもしれないけど、急激に痩せると肌がボロボロになる人もいるから、気をつけて」
「ええ?」
痩せてショーウィンドウに映る自分はスマートだから、綺麗になった気でいたが、もしかしてと急いで顔を触ってみる。
「どうしよう。肌がゴワゴワしてる」
「やっぱり。果物食べるかコラーゲンサプリ飲んで、化粧水を肌に叩き込むのよ」
「こうやって」と言って、小さな両手で頬をパタパタパタパタと音がでるくらい強く肌を叩いて見せる。
「ご注文のアイスコーヒー2つでございます」
その時、注文していたアイスコーヒーが運ばれてきて、店員が一瞬、頬を叩く友美を横目で見たのを清香は見逃さなかった。
2人は顔を見合わせて「クスリ」と笑う。
「うん。分かった。果物とコラーゲンサプリと化粧水ね。帰りに買って帰るよ」
「人が目に目えて綺麗になっていくのって、なんか感動する。うん、ハイスペック君に、会ってみるのもいいんじゃない?」
「でも旦那もいて、美香のことも頼まないといけないでしょ。付き合うわけでもないのに、会うなんて時間を無駄にさせてしまうし」
「私は新しい恋もいいと思うけどね」
友美とは喫茶店の前で別れて、清香は駅から少し離れたライプと言うスーパーに向かった。
さすがに頑張って痩せても、肌がボロボロじゃ意味ないし、今日からまた頑張ろう。
◇◆◇
美香が家に来ていないことは監視カメラを確認して分かっていたので、実家に向かう。
合鍵で家の中に入ると、玄関で美香が靴を履いているところだった。
「今からお姉ちゃんのとこ行くつもりだったんだよ」
「待って、美香に話しがあるから、リビングに行こう」
「え~お義兄さんが待ってるのに」
清香はスマホをこれから座るソファの前のテレビに立てかける。録画機能をオンにして。
美香は清香がいてもいなくても暴言を吐いてくるので、録画は必須だ。
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