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いや、慣れたらダメなんだけどな。
でもこっちでは転移すれば簡単に密入国出来ちゃうから、 倫理観が……
まぁ俺も地球人ではなく異世界人になりつつあるって事なんだろうな。
「では、聖奈さんはもう少し向こうに留まるという事ですね?」
「そうだな。俺はその間にダンジョンで修行してくるよ」
俺達は無事に日本へ帰り、その夜に聖奈さんを残して転移した。
聖奈さんは地球での仕事を優先してくれたんだ。
ミランにそう伝えると・・・
「私もお供します!」
「ありがとう。でも、危険だから…」
「それは以前に…!」
「違う…俺の魔法が暴発すればどうなるかわからんからだ。
俺は地上では環境破壊になるから魔法の訓練はしてこなかった。
だが、ダンジョンなら気にせず撃てるんだけど、仲間が近くにいたら怖くて全力が出せないからだ。
すまんな」
これはエリーから教えてもらった事だから、エリーはもちろん付いてはこない。
俺は魔法だけで二層と三層を無双するんだ!
ソロだと厨二病を爆発させられるぜっ!
悪いなミラン!次のダンジョンは一人用なんだ!
「それでしたらお邪魔ですね。わかりました。気をつけて下さいね」
うん。もうちょい粘ってくれてもいいんだよ?俺は構ってちゃんだから。
翌日、ライルにも帰還を報せてからエトランゼのダンジョンの三階層へと転移した。
二階層だと狭いので、他の冒険者を巻き込みかねんからな。もちろん魔力波は欠かさないけど。
「おっ!反応はあっちだな。魔法の練習だから魔物はどうでもいいけど、人が通らないところに行かないとな」
現在は2階層に程近いところだから、まずは3階層の真ん中を目指すことにした。
「魔物に5回遭遇したけど、3体以上の群れには遭わなかったな」
ボスのような存在がいるって話だったけど、この様子だとレアな存在のようだな。
「この辺りでいいか。『魔力波』うん。危険は無さそうだな」
俺はあの時と同じように、遥か上空を意識してアイスブロックを発動させた。
「大分調整出来る様になって来たな…なんかアレだな。
自転車に乗るみたいな感じで、出来なかった時は全く出来る気がしなかったけど、出来るようになれば何故出来なかったのかわかんない感覚だな…」
自分で言ってて、何言ってるのかわからなくなってきたぞ……
「多分、身体強化魔法を使い続けていたから、魔力操作がそれに伴い徐々に出来る様になってきたお陰だな。
特に5倍の身体強化が出来る様になってからは、自分の使っている魔力がよりわかるようになったし」
裏を返せば微量な魔力操作が苦手ってことだな……
「発動高度もそうだけど、作り出した氷の硬さ…硬度っていうのかな?それの調整も出来る気がする。
密度が高いとその分重たいはずだから、聖奈さんが言ってた質量攻撃に有効だろうしな」
昼過ぎにはきっかけを掴めていた。
「さて、それじゃあそろそろ帰って商品の納品を済ませてしまうか」
俺は冒険と荷運びの二足の草鞋を履いているからな!こう見えて忙しいんだ!
夜になると地球へと向かい、荷物と聖奈さんを連れて帰ってきた。
俺にとっては凄く大切な2日後に向けて、しっかり準備をしないとな!
翌日も昼間はダンジョンで過ごして、遂に当日を迎えた。
「セイくん。人員輸送は任せたよ」
「人員輸送って…まぁ間違いじゃないが」
今日はリゴルドーではなく、水都の屋敷にみんなを集めた。
準備が終わった後、本日の主役であるミランと一緒に水都の屋敷前に転移した。
「あれ?今日は外ですか?」
普段は屋敷の中へと転移していたから、ミランがこの光景を見て疑問に思ったようだ。
「ん?ニアミスかな?」
んなわけあるか、と自分でも思ったが、上手い言い訳が思い浮かばず、これで押し通すことに。
俺はミランの後ろについて、ミランに玄関扉を開けさせた。
パンッパンッパンッパンッ
『お誕生日おめでとう!!』
「えっ!?」
扉の向こうには、パーティメンバーとミラン家族が勢揃いしていた。
「ミラン。14歳の誕生日おめでとう」
俺はミランの頭を後ろからポンポンしつつ、祝いの言葉をかけた。
「あ、ありがとうございます?」
ミランはまだ状況を掴めていないようだ。
「こっちでは誕生日じゃなくて誕生月なんだってな。
ホントは5月に入ってからすぐに祝おうと思っていたんだが、バタバタしていて遅くなってしまった」
王国に誕生日なんて正確なものはないのだ。ミランは5月生まれ。
それがわかっていれば事足りるようだ。
「ミランちゃん!お誕生日おめでとう!
さっ!リビングでパーティをするから、入って入って!」
「はい!ありがとうございます!お父さんもお母さんも、忙しいのにありがとう!」
バーンさんとか泣きそうになってるぞ……
人の事は言えんが、流石に誕生日では俺は泣かないな。
パーティでの食事も終わり、ミランの家族を送った後、プレゼントタイムになった。
この国の一般人は、毎年プレゼントを渡す習慣などない。成人の祝いの時くらいだ。
しかし、俺達にはそんなものは関係ない!
普段遠慮するミランに物をあげられる数少ないチャンスの為、ここぞとばかりに用意した。
「はい!ミランちゃん!これ、プレゼント!」
聖奈さんは可愛くラッピングされた包みを7つ渡している。
恐らくプレゼントと言う名の、聖奈さんの趣味だ!
「ありがとうございます…まさか、全て服ですか?」
「そうだよ!可愛い服を選んだから着てね!」
「ありがとうございます。着る機会があるでしょうか…?」チラッチラッ
これはお出かけしたいということだな。
もちろんおめかししたミランと出かける事に、俺は異論無いぞ。
バーンさんが睨んできているのを幻視したけど。
「おい。やるよ」
ライルはぶっきらぼうに渡すが、何を渡すか悩んでいたのを知っているぞ!
「これは…」
「俺が昔使っていた短剣だ。今は重さもサイズも合わなくなったからな。ミランには合うだろうよ」
えっ!?なにそのカッコいいプレゼント……
思い出の品なんてイケメンにしか許されないやつだぞ……
「ありがとうございます!大切に使わせて貰いますね」
ライルは照れているようで、そっぽを向いている。
「次は私です!ミランにはこれをあげます!」
エリーは何か箱のような物を渡した。何が入っているんだ?
「これは何が入っているのですか?」
「何も入ってないです。その箱がプレゼントです!」
まさか……
「それは本人にしか開けることの出来ない魔法の箱です!
セーナさんの悪口を書いた日記とかを入れるのに使うですっ!」
「…エリーちゃん?どうやらケーキがいらないみたいだね?」
「なぜですっ!?」
エリー。アホの子や……
「ありがとうございます。大切な物をしまいますね」
「ん?ミランの大切な物ってなんだ?」
まさか、その短剣じゃないよな?
そもそもその箱には入らんか……
「セイさんがくれたアクセサリーです」
ん?そんなのあげたっけ?
いや、あげた気がするな……
「そ、そうか。大切にしてくれて、ありがとうな」
「それよりセイくんのプレゼントは?まさか俺自身だ!とか言わないよね?」
誰だよそいつ…俺が言わないやつやん。
「ちゃんとあるぞ。これだ」
俺が渡したのは髪飾りだ。
「可愛いです…ありがとうございます…」
「うわぁ。フェ◯ガモのバレッタだ…奮発したね!」
「フェ◯ガモですか?鳥でしょうか?」
「違うよ。私達のいた世界の高級ブランドの名前だよ」
ミランの金髪に映える黒の髪飾りだ。流石聖奈さん。すぐにバレたな。
バレッタだけに……
「そんなに高級品なのです?」
エリーはこういう時ばかり食いつくな。
「そうだよ。プリンアラモード100個分くらいかな?」
うん。大体あってるから。値段を当てるのはやめて?
「セイさん!私の誕生日にはバレッタではなくデザートで下さい!」
「なんでだよ…そもそもエリーの誕生日はいつなんだ?俺と聖奈は来月だが」
「ひどいです…知らないなんて…」
いや、知らないものは知らんがな。
「悪いな。それでいつなんだ?」
「8月です!プレゼントはお忘れなくです!」
「ちなみに俺は7月だからな」
ライルもさり気なくいうなよ…まぁ祝うけど。
「ライルは何か欲しいものがあるのか?」
長くBランクをしているから、金だけは持ってそうなんだよな。
「あるぞ。店で使っているソロバンって奴が欲しい」
「算盤か。確かにあれは俺が持ち込んだ物だからこっちでは売ってないな。わかった。楽しみにしていてくれ」
「えっ!?私のデザートは!?」
それは流石にやれんわ……
まぁ何かはあげるから勘弁してくれ。
それにしても、ライルが算盤とは…この世界では学ぶ機会が少ないからな。
ライルは元々勉強家だったってことだな。
しかし、冒険者は辞めさせないぞ!うちはブラック企業だからな!
最後は色々とあったが、無事にミランの14歳を祝えた。
次は日にち的に俺だけど、もう祝われて喜ぶ歳じゃないからな。
聖奈さんのは祝わないと後が怖いから忘れないようにしよう…日にちまでは知らんけど……
ちなみにミランにあげた初めてのプレゼントは、金のブレスレットだった。
そういえば、二人で出かける時には必ず着けてくれていたな。
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???「はっはっはっ」
聖「な、なんだ!?」
聖奈「わかんないよぉ…聖くんどうにかしてぇ!」
聖「どうにかって…そういや携帯が…」
俺は見たくないが、明かりをつけた。
聖「犬…?何で?」
聖奈「わあ!可愛い!ポメラニアンかな?」
箱の中の住人は、どうやら俺たちだけじゃなかったようだ。
ポメラニアンのポメ子は、その後、武器の密売人のボスが物凄く気に入り、譲ることになった。
聖奈「ハナコは大切にされそうだね」
聖「そうだな。デレデレだったからな…あの顔で…」(何だよハナコって。ポメラニアンなんだからポメ子だろ)
聖奈「私も欲しいな…」
聖「会社で面倒みたら飼えるんじゃないか?みんなの同意がいるけど」
聖奈「子供が…」
聖 (うん。無視しよう。だいたい俺達に子供が出来たら、間違いなく名前で虐められるからダメだな)
長いっ!小話が長い!