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コメント
7件
太宰さんお暇なら私共と一緒にお茶でもしに行きましょう!(?) 最後のセリフがすきぃ ちゅやーーーん(謎)
駄々こね太宰さん♀︎カァイイ!! エリスちゃんにまで嫌われるシチュが中々なくて新鮮でした!! でも、最後のセリフが1番好き!! 蛞蝓(中也)に会いたがってるような言葉か最高!
みぅです🤍🥀 14歳の太宰、めっちゃ可愛いんだけど、その目が虚無……!「同い年の少年でもいないかな」って最後の呟き、ここで伏線撒いてくるのずるいよ。森さんのロリコン発言に「通報する先が身内しかいないのがバグ」って返す太宰、最高に乾いてて好き。エリスちゃんに嫌われる太宰、なんか新鮮でじわじわくる…続きが気になる🌙
あーーーーもうやだ最近何をやっても上手く行かない……………
あ、14歳の太宰です
鴎太♀じゃないです。
エリ太♀じゃないです(何言ってんだこいつ)
薄暗い首領室には、いつも薬品と古びた書物の匂いが混ざり合って満ちている。
窓の遮光カーテンはきっちりと閉め切られ、外が昼なのか夜なのかすら、ここからでは判別がつかない。
その部屋の片隅、豪奢な革張りのソファに、十四歳の少女――太宰は、文字通り「死体のように」へたり込んでいた。
全身に巻かれた包帯、サイズの合わない大きめの黒い外套。生まれながらに女の子であるはずの華奢な身体つきは、そのぶかぶかの衣服のせいで余計に小さく見える。
「はぁ……」
引き千切った紙屑を放り投げるように、太宰は本日何度目かもわからない、深くて重い溜息を吐き出した。
天井をじっと見つめる。退屈すぎて、視界の端がちかちかとしそうだ。
ポートマフィアの先代首領が病床で息を引き取り、その主治医であった森鴎外が新たな首領の座に就いてから、まだ一年も経っていない。
当時、その暗殺とも言える現場に「証人」として居合わせたのが、この太宰だった。
それ以来、彼女は森の側近というか、監視役というか、あるいはただの話し相手というか――とにかく、非常に曖昧で、それでいて奇妙に強固な立場でこの部屋に留まり続けている。
ころん、と太宰はソファの上で寝返りを打った。
視線の先には、執務机で何やら書類に熱心にペンを走らせている新首領、森鴎外の姿がある。
マフィアの首領、という肩書きから連想される禍々しさや威厳は、今の森からは微塵も感じられない。なぜなら、彼のすぐ傍らでは、金髪洋装の幼い少女――異能生命体のエリスが、床に画用紙を広げてクレヨンで派手な落書きをしているからだ。
「ねえ、エリスちゃん。次の任務の帰りに、あの老舗の洋菓子店に寄ろうか? 新作の苺のタルトがとっても美味しそうだったんだ。それを着て、お店の特設スペースで写真を撮らせておくれよ。きっと天使のように愛らしいに違いない!」
「いや! エリス、いまは絵を描くので忙しいの! リンタロウの着せ替え人形になる気分じゃないわ!」
「そんなこと言わずにさぁ……。ほら、このフリルいっぱいのドレスなんて、君の瞳の色に絶対に似合うと思うんだよね。ね、おねがいだから着ておくれよぅ」
両手を合わせて拝み倒すように懇願するマフィアのトップ。
それを見て、太宰の目は完全に据わっていた。
(……引くわ。本気で引く。何回見ても慣れないし、むしろ見るたびに不気味さが増してる気がする)
太宰は心の中で、全力で引き攣った表情を浮かべていた。
森鴎外という男の、常軌を逸した「ロリコン」趣味。彼の守備範囲が「十二歳以下」であることは、この一年近くそばにいて嫌というほど理解させられている。
現在の太宰は、十四歳。
つまり、森のストライクゾーンからは、めでたく(あるいは忌々しくも)外れているわけだ。
おかげで、太宰は森からそういった「そういうこと」――つまり、エリスに向けられているような、ねっとりとした、かつ執拗な衣装の押し付けや、歪んだ愛情表現の対象になることだけは免れていた。それだけは、不幸中の幸いと言えた。
しかし、当の森は、時折ふとした瞬間に、とんでもない爆弾発言を落としていく。
ペンを置き、エリスに袖を振られて落ち込んでいた森が、ふとソファの上の太宰に視線を向けた。
そして、顎に手を当てて、実につまらなそうに、しかし心底惜しそうに、ぽつりと呟いた。
「あーあ……。太宰くんが、あと数歳若ければなぁ……。そうしたら、その包帯姿も、もっとこう、背徳的で愛らしい少女の魅力に溢れていたと思うのだけれど。実に惜しい。なぜ女の子は成長してしまうんだろうねぇ」
しーん、と部屋の空気が凍りついた。
太宰は無言で、持っていたクッションを自分の顔の上に載せた。
完全に、引いていた。ドン引き、という言葉すら生ぬるい。
「……森さん」
「なんだい、太宰くん」
「今すぐその口を縫い合わせるか、私の目の前で自決するか、どちらか選んでくれない? 脳みそが腐りそうなセリフをこれ以上聞かされたら、私の清らかな精神が汚染されて死んでしまうマニュアルが完成しちゃうんだけど」
「手厳しいねぇ。私はただ、率直な感想を述べただけだよ。男のロマンというやつさ」
「ロマンじゃなくて犯罪の間違いでしょ。通報する先がマフィアの身内しかいないのが、この世の最大のバグだわ」
ふん、と鼻を鳴らして、太宰はクッションを退けた。
森は悪びれもせず、けらけらと笑っている。
まったく、この男は。
太宰は、そもそも自分がなぜここにいるのかを思い出し、再び盛大な溜息を吐いた。
「そもそもさぁ!」
太宰はソファから勢いよく起き上がり、不満を爆発させるように声を荒らげた。
「話が違うじゃない! 私は、森さんに協力すれば、確実に、痛くなく、苦しまずに死ねる特製の薬をくれるって言うから、あの汚い先代の暗殺の証人になってあげたんだよ!? それなのに、一年経っても薬どころか、毎日毎日、こんな薄暗い部屋に閉じ込められて! 死なせてくれないどころか、私の貴重な時間を盛大にドブに捨てさせてるじゃない!」
「おや、人聞きが悪いね。薬の調合には、緻密な計算と貴重な材料が必要なのだよ。それに、今のマフィアは組織の建て直しで大忙しだ。私の大事な証人であり、唯一無二の相談相手である君に、今すぐ死なれては困るのさ」
森は至って平然とした調子で、のらりくらりと躱す。
「嘘ばっかり! 本気で探せば、私を死なせる方法なんていくらでもあるはずだよ。森さんがケチで、私の労働力をタダで搾取しようとしてるだけだわ。ブラック企業もいいところ。労働基準法って知ってる? マフィアにはないの?」
「あいにく、我が組織の法は私だからねぇ。それに、君には期待しているのだよ、太宰くん。君のその、物事の本質を見抜く目と、冷徹なまでの思考力は、マフィアの幹部にだって引けを取らない」
「褒め殺して誤魔化そうとしても無駄だから。私は早く、綺麗なお姉さんと心中するか、あるいは一人で苦しまずに世界からログアウトしたいだけなの。森さんの小難しいマフィア経営ごっこに付き合うために生きてるんじゃないんだよ」
ぷい、と太宰は横を向いた。
完全に拗ねていた。十四歳の少女らしい、と言えばらしい態度だが、その瞳の奥にある虚無感は、およそ子供のそれではない。
今の太宰には、本当に、話し相手が森しかいなかった。
先代暗殺という「トップシークレット」を共有している都合上、彼女の存在は、組織内でも極一部人間にしか知らされていない。おまけに、森の直属という扱いのため、一般の構成員が気軽に話しかけてくることもない。
結果として、太宰はすこぶる暇だった。
信じられないほどに、暇を持て余していた。
任務があれば、その天才的な頭脳で適当に作戦を立てて終わらせるが、それ以外の時間は、ただただ首領室のソファの番人になるしかない。
「あーあ、つまんない。つまんないつまんないつまんない!」
太宰はソファの上で、ジタバタと暴れた。
長い手足が、ぶかぶかの外套の中で泳ぐ。
「エリスちゃん、森さんが遊んでくれないから、私と心中しない?」
「絶対にいや! オサム、あんた暗いし、いっつも死ぬことばっかり言ってるから嫌い!」
「ひどいなぁ、エリスちゃん。女の子同士の心中なんて、ロマンチックの極みだと思わない?」
「思わない! リンタロウ、オサムをどこか遠くにやって!」
「おやおや、エリスちゃんに嫌われてしまったね、太宰くん」
森はどこか楽しそうに、親子喧嘩を見守る父親のような顔をしている。その生ぬるい視線が、また太宰のイライラを加速させた。
はぁ、と本日何度目か数えるのも馬鹿らしくなった溜息が、口から漏れる。
太宰はソファに仰向けになり、天井の模様を数え始めた。
一、二、三……。四十三、全て数えて、飽きる。
首領室の静寂が、余計に彼女の退屈を際立たせる。
外の世界には、きっと、もっと刺激的な何かが転がっているはずなのに。
それこそ、マフィアの抗争だの、血生臭い事件だの、そういうものでも構わないから、この退屈を木っ端微塵に破壊してくれる何かが欲しかった。
思考が、ぐるぐると同じ場所を回る。
もしも、この退屈な空間に、もう一人、自分と同じくらいの人間がいたら。
「はぁ〜ぁ」
太宰は、天井に向かって、誰に届くともない声をぽつりとこぼした。
「同い年の少年でもいないかな。どんな蛞蝓でチビなやつでもいいから。あー、つまんない!」