テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#にょたスト
238
#溺愛
オレンジ
53
冷たい夜風が頬を刺す。いつもの外套に身を包んでいても、芯から冷え切った身体は震えを止めてくれなかった。ここ数日、組織の業務は澱みなくこなしているはずなのに、視界はどこかモノクロで、喉の奥には鉛を飲み込んだような苦みがこびりついている。
誰かの死、あるいは裏切り。そんなありふれた日常の断片が、今日の太宰の心には重すぎた。暗い部屋で独り、意識が底なしの泥へ沈んでいくのを感じるたびに、誰かの温もりが恋しくてたまらなくなる。
迷いなく足を向けたのは、バーの隅、いつもの定位置に座る織田作之助の元だった。
店の扉を開けると、安らぐ蒸留酒の香りが鼻をくすぐる。織田はいつものように琥珀色の液体を口に含み、何か思索に耽っていた。太宰の姿を見つけると、その温和な眼差しがわずかに揺れ、すぐに柔和なものへと変わる。
「太宰。ずいぶんと遅い時間だな」
言葉に甘えるように、太宰はそのまま織田の隣へ滑り込んだ。返事をする代わりに、背後から無防備に身体を預ける。織田の背中は広く、厚く、そして何よりも温かい。
「……織田作……」
掠れた声で名前を呼ぶ。太宰は織田の背中に顔を埋め、その両腕で彼を強く抱きしめた。織田がグラスを置く気配がした。
「どうした。珍しく甘えたな」
「……ただ、ぎゅーってしたかっただけ」
「そうか。少し疲れているのか」
織田は否定も拒絶もせず、太宰の頭を大きな手でゆっくりと撫でた。その不器用でいて優しいリズムが、荒れた心を少しずつ鎮めていく。太宰は意識して呼吸を整え、織田の鼓動を背中で探した。トク、トク、と刻まれる規則正しい音。それが、自分がまだ生きてここにいることを教えてくれる唯一の標だった。
どれくらいそうしていたのか。時が溶けるような静寂の中、太宰の指先が織田のシャツの裾を掴む。ふと、心に浮かんだのは、今の自分を繋ぎ止めてほしいという強い焦燥感だった。
「……ねえ、織田作」
「ん?」
「幹部命令なら、私とえっちしてくれる?」
ふざけたような口調。けれどその瞳には、救いを求める子供のような色が濃く混ざっていた。織田は太宰の腕を解き、正面からその顔を覗き込んだ。困ったような、それでも深い愛情を湛えた瞳が、太宰を射抜く。
「……悪いな。今日のお前は様子がおかしい。そんな状態のお前に手は出せない」
淡々とした拒絶。太宰の肩が小さく跳ねた。期待はしていなかった。それでも、一番欲しい温度で温めてもらえないことが、どうしようもなく悲しくて、胸の奥がキュッと締め付けられる。
太宰はしょんぼりと俯いた。長く伸びた睫毛が影を落とす。
「……じゃあ、せめて。織田作からちゅーして……」
消え入りそうな声。甘えを許された子供のように、太宰は唇を少しだけ突き出した。織田は溜息をつきつつも、ゆっくりと顔を寄せてくる。
触れるだけの、優しい接触。熱を持った唇が合わさった瞬間、太宰の身体から力が抜けた。温かくて、柔らかい。それだけで十分なはずだったのに、触れ合う場所から全身へと熱が伝播していく。足りない、もっと欲しい。そんな飢餓感が太宰を突き動かした。
「ん……もっと……」
自分から織田の首に腕を回し、その唇をさらに強く求めた。今度は、拒む理由などなかった。織田の手が太宰の頬を包み込み、先ほどとは違う熱を帯びた口づけが深くなる。舌が絡み合い、呼吸の音が混ざり合う。織田の匂いに包まれ、太宰の心から黒い澱が少しずつ晴れていった。
キスを終え、虚ろな目で見つめ合う。織田は何も言わず、太宰の膝裏と背中に腕を通すと、軽々とその身体を持ち上げた。
「……帰るぞ」
太宰は何も言わず、されるがままに織田の首に額を押し当てた。
織田の寝台へと運ばれ、横たえられる。毛布にくるまり、織田が隣に座ってくれるのを待つ。織田は太宰の髪を優しく梳き、寝かしつけるようにゆっくりと背中を叩いてくれた。
「大丈夫だ。ここにいる」
その言葉を子守唄代わりに、太宰は深い眠りへと落ちていった。夢を見ることもない、安らかな時間だった。
朝の光が、カーテンの隙間から差し込む。
意識が浮上して最初に感じたのは、自分の背中に触れる確かな体温だった。寝台のシーツがしわになり、織田の腕が太宰の身体に重なっている。太宰は息を止めた。昨晩の記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
まさか、本当に隣で寝ているなんて。
心臓が早鐘を打つ。鼓動の音があまりにうるさくて、織田を起こしてしまうのではないかと冷や汗が出る。ゆっくりと振り返れば、そこには普段と変わらない穏やかな寝顔があった。
夢じゃ、ない。
朝っぱらから心臓が爆発しそうだ。太宰は顔を真っ赤に染め、再び織田の腕の中に潜り込んだ。このまま、今日という一日が始まらなければいいのに。そう願ってしまうほど、今の幸福はあまりにも眩しかった。
はい、どうも期末試験終了してハイな気分の夏の穂です!!
2科目赤点確定()
皆さんに質問!(なぜ質問するのかって言うと、コメントが欲しいからです。最近同じ人からしかコメント来なくて悲しいです。いつもコメントしてくれる3人マジでありがとう)
太太♀を書こうと思うんだけど、どの太宰とどの太宰♀を出す?どんな話にしたい?
それじゃあまたね
コメント
11件
どの組み合わせも神だから決められないいい BEAST×18とかどうでしょう 織田作を失ってなにもかも喪失している18太とその苦しみがわかってるいBEAST太が心の傷を埋める的な… 自分同士だからしっかり分かり合えるし甘やかし方もわかるという意図です!!
夏の穂さん、期末テスト終わったんですか!? うちは、明後日に控えていて 赤点私も取りそうで💦 太太の組み合わせ 15歳と18歳(織田作を失ったばかりの頃)をリクエストさせてもらいます!! 難しければ、作りやすいように変えてもらって大丈夫です!! これからも、新しい作品を楽しみにしてます!!
やー!!もう最高でした。 織田作(大切な人)の心音を聞いて、自分もまだ生きていると実感する太宰さん♀︎の姿が尊すぎる。 そしてそれを当たり前のように拒絶することなく、受け入れる織田作の姿がカッコよすぎる(まぁ、織田作が太宰さん♀︎を拒絶するなんてそうそう有り得ないけど) 一生、幸せに生きて欲しい