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《神話を超える双星の勇者》
第2話:「旅立ちと仲間との出会い」
夜明けとともに、双子の兄妹は村を出た。
カイの背には剣、リナの腰にも小さな剣が揺れる。まだ未熟なリナの剣は軽く、頼りなさを隠せなかったが、それでも彼女は決意に満ちた表情で歩き出していた。
二人が目指すのは、「神の試練」が行われるとされるルミナスの神殿。そこには、神の加護を強めるとされる聖なる泉があるという。
リナは、その泉で何かを掴めると信じていた。
■ 道中での決意
「リナ、無理はするなよ」
歩きながら、カイが優しく声をかける。
「大丈夫。私、強くなるって決めたんだから」
リナは頷く。今はまだ弱くても、努力を重ねればきっと兄のように強くなれるはずだと信じていた。
けれど、内心は不安だった。
——もし、自分がどれだけ努力しても、神託に勝てなかったら?
——もし、本当に滅びの存在だったら?
それでも、兄の優しさに応えたい。その一心で、リナは歩き続けていた。
■ 魔物との遭遇
昼過ぎ、森の奥で二人は初めての「試練」に直面する。
黒い毛皮に覆われた獣魔・ダルゴンが、道を塞いでいたのだ。
「来るぞ、リナ!」
カイは即座に剣を抜き、リナの前に立った。
だがリナも、恐怖に震えながらも剣を構える。
「私も…戦う!」
兄に守られるだけじゃ、意味がない。自分の力で、少しでも前に進むために。
カイは一瞬、迷った。リナを守るべきか、信じて戦わせるべきか。
だが次の瞬間、彼はリナの覚悟を信じた。
「じゃあ、俺は前に出る。リナは後ろから援護してくれ!」
「うん!」
戦いは、カイの圧倒的な剣技で進んだ。
一振りで魔物の腕を斬り、二振りで足を断つ。
その姿はまさに最強の剣士だった。
だが、魔物は倒れず、凶暴な反撃を始める。
カイが押し切れない瞬間、リナは必死に考えた。
「…いま!」
リナは勇気を振り絞り、魔物の死角へと回り込み、渾身の一撃を振るった。
剣が魔物の腹に突き刺さる。小さな傷でも、リナの覚悟が込められた一撃だった。
その隙をカイが逃さない。
「リナ、ナイスだ!」
カイは最後の一撃で魔物を斬り倒した。
■ 初めての勝利
「や、やった…!」
リナは思わずその場に座り込んだ。肩で息をしながら、それでも目には達成感が宿っていた。
「よくやったな、リナ。お前がいなかったら、危なかった」
カイは優しく微笑む。
リナは泣きそうになりながらも、必死に堪えた。
「…私、少しは役に立てたかな」
「もちろんだ。お前は強い。努力の力を、ちゃんと見せてくれた」
その言葉に、リナの胸は熱くなった。
自分も、兄と並んで戦える。そう信じることができた瞬間だった。
■ 仲間との出会い
その夜、二人は森の中でキャンプを張った。
焚き火の明かりが揺れ、暖かな空気が辺りを包む。
ふと、茂みの奥から声が響いた。
「おや、こんなところで野営とは珍しいな」
現れたのは、一人の女性だった。長い銀髪と凛とした瞳。
彼女の名はセリア・ルヴィアン。王国の宮廷魔術師だという。
「旅の者か。なら、教えてやろう。これより北にある村が、魔物の襲撃に苦しんでいる。神の試練を受けるなら、避けては通れまい」
その言葉に、カイは眉を寄せた。
「村の人々を助けないと。俺たちにできることはないか?」
リナも力強く頷いた。
「私も戦います!もっと強くなりたいから!」
セリアは微笑んだ。
「なら、私も協力しよう。お前たちの力、試させてもらうよ」
こうして、新たな仲間が加わった。
■ それぞれの想い
リナは小さく拳を握りしめた。
「絶対に…負けない。私は、兄さんと並んで戦えるようになる」
カイは焚き火を見つめながら、心に誓った。
「俺はリナを守る。そして、二人で神託を超えてみせる」
その夜、三人は静かに眠りについた。
翌日の戦いが、彼らの絆を試すことになるとは知らずに——。
第2話・完