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《神話を超える双星の勇者》


第3話:「試練の始まり」





翌朝、カイ、リナ、セリアの三人は早々に支度を整え、北に位置するベルナ村へと向かった。

朝靄に包まれた森の中、リナは昨夜の決意を胸に、静かに歩を進めていた。


「昨日の戦い…少しは役に立てたかな」

小さな声で呟くリナに、カイは優しく微笑む。


「お前がいなかったら、危なかったよ。自信持てって」


その言葉に、リナは少しだけ笑顔を見せた。


セリアはそんな二人を見て、微かに微笑む。

「兄妹の絆か…。だが、これからはそれだけじゃ戦えないかもしれない。ベルナ村に待つ魔物は、昨日の比じゃない」


セリアの言葉に、リナは表情を引き締めた。

「それでも…私は戦う。自分の力で!」


その言葉は、かつて弱さに怯えていたリナからは想像できないほど強く響いた。





■ 魔物の襲撃


ベルナ村に到着したのは、昼を少し過ぎた頃だった。

しかし、村の空気は異様だった。人々は怯え、家々には戸板が打ち付けられている。まるで「何か」から逃れるように。


村の長老に話を聞くと、事情が明らかになった。


「……ここ数日、夜になると魔物が村を襲い、家畜や作物を奪っていくのじゃ。多くの者が傷つき、犠牲も出た」


カイは静かに頷いた。

「分かりました。俺たちが、その魔物を倒します」


だが、長老の顔には悲痛な表情が浮かんでいた。

「それはありがたい…だが、気をつけろ。あの魔物は尋常ではない。夜になると、より強力な力を振るうのじゃ」


その言葉に、リナは決意を込めて答える。

「それでも…戦います。私にも、できることがあるはずだから」





■ 迫る夜


太陽が沈み、夜が村を覆い始める。

静寂が辺りを包む中、三人は村の中心で待機していた。


「リナ、怖くないか?」

カイが静かに問いかける。


リナは、真っ直ぐに兄を見つめた。

「怖い。でも、兄さんと一緒なら、どんな試練だって越えられる」


その言葉に、カイは安心したように微笑む。


「頼もしい妹だな」


セリアも頷きながら言葉を添える。

「自信を持ちな。努力は必ず実を結ぶ。私はそう信じてる」


その瞬間、地面が震え、闇の中から巨大な影が現れた。





■ 魔獣との死闘


現れたのは、鋭い爪と黒い鱗に覆われた巨大な魔獣、グリドラス。

夜の闇に溶け込むような巨体が、村を襲わんと迫る。


「来るぞ!」

カイは即座に剣を抜き、魔獣に立ち向かった。


「リナは援護だ!セリアは後方から支援を頼む!」


リナは震える手で剣を握りしめる。だが、目には恐れではなく、決意が宿っていた。





カイが魔獣に斬りかかる。しかし、グリドラスは圧倒的な防御力を誇り、剣が通じない。


「硬い…!?」


その瞬間、グリドラスの尾が鞭のようにしなり、カイを弾き飛ばした。


「兄さん!」

リナは叫び、駆け寄ろうとしたが、魔獣の咆哮が彼女を押し留めた。


「ダメだ…私が…私がやらないと!」


震える足を抑え、リナは剣を構える。

セリアの魔法が魔獣の動きを封じる隙に、リナは必死で考えた。


——硬い鱗に剣は通じない。でも、動きの鈍い場所なら…!


「…足元だ!」


リナは魔獣の足元に走り込み、渾身の一撃を放った。

剣が足の関節に突き刺さり、グリドラスが呻く。


「兄さん、今だよ!!」





カイは立ち上がり、全身の力を込めて剣を振り下ろす。

「リナ、ナイスだ!」


放たれた一撃が魔獣の喉元に突き刺さり、グリドラスは崩れ落ちた。





■ 努力の証


戦いが終わり、リナはその場に座り込んだ。

「はぁ…はぁ…私…やった、よね?」


カイはリナの肩に手を置き、優しく笑う。

「ああ。お前の努力が勝利に繋がったんだ」


リナの瞳には、達成感と喜びの涙が浮かんでいた。


「…やっと、少しだけ…兄さんに追いつけた気がする」


その言葉に、カイは強く頷く。

「お前はもう、立派な戦士だよ」





■ 旅の決意


戦いが終わり、村人たちは深く感謝を述べた。

リナはその言葉を胸に刻み、静かに呟く。


「私は、もっと強くなる。兄さんと、もっと並んで戦えるように」


カイはその言葉を噛み締めながら、リナの手を握る。


「共に神託を超えて、未来を変えよう」


セリアは微笑みながら、二人の背中を見守っていた。


「この旅、きっと面白くなるよ」


そして、三人は再び歩き出す。

その先に待つ試練が、いかなるものであっても——。





第3話・完

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