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マフィアパロ
雨の夜だった。
銃声は聞こえなかったが辺り一帯は血の匂いが蔓延していた。
「……藤澤涼架」
高級な革靴が水たまりを踏みしゃがみ込む。そこには路地裏で血を流して倒れている少年。
「ボス……」
かすれた声で倒れている少年ー藤澤がボス、大森の名を呼ぶ。
「言ったよね? 勝手に死ぬなって」
大森は溜息混じりに上着を脱ぎ藤澤の肩に掛けた。どこを撃たれたのかもろくに確認しないまま彼は藤澤を抱き上げる。
「……僕使い物にならないって兄貴たちに言われました」
「知ってるよ。だから捨て駒としてこの組の入れられたんでしょ?」
「はい。でもボスだけは……怒鳴らなかった…人間として扱ってくれた」
藤澤の声は震えていた。寒さか、恐怖か。あるいは嬉しさか。
「涼ちゃんはガキだね」
大森はふっと笑って額にかかる血の混じった前髪をそっと拭う。
「俺の下にいるってことは俺のものって意味でしょ?勝手に壊れないでよ」
「ボス……」
「いい?涼ちゃんは他の誰でもない。俺が拾った。だから死ぬときは俺の手の中で死ね」
それは優しさじゃない。
ただの独占欲。
ただの狂気。
けれど藤澤は微笑んだ。
「はい」
血まみれの口元で、小さく、微かに笑った。
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抗争のたびに藤澤は最前線にいた。前の抗争では壁に縛られ背後で爆弾が爆ぜた。その前は人質と間違われて撃たれた。
生きてるのが不思議なくらい死にかけて、死にかけて、また戻ってくる。
だから今日も。
「また藤澤かよ……」
ソファに腰をかけて葉巻をくゆらせていた大森が面倒そうに顔をしかめる。その足元に血の跡を引きずりながら倒れ込む藤澤。
右腕はぐちゃぐちゃ、顔も切り傷だらけ。立ってるのが奇跡。
「ただいま、ボス」
藤澤はにこりともせずへたり込んだまま頭を下げた。
「爆弾の壁にされてまた生きてるの?」
「運が良かっただけです」
「本当に捨て駒にしてはしぶといよね。……壊れないオモチャって怖いよ」
そう言いながら大森は立ち上がって藤澤の前にしゃがむ。ポケットからハンカチを出し無言で藤澤の顔を拭った。
「他の奴らは壊れたら替えが利くって思ってるだろうけど……俺はそう思ってない」
「ボス?」
「涼架は俺が拾ったんだ。誰にどう言われても、俺の命令だけ聞いてればいい」
指先が頬にかかった髪をそっとどける。その手は温かくて、でもどこか冷たい。優しいようで壊してしまいそうな不安もある。
「死ぬな。生きて帰ってこい。俺のために」
「……はい」
藤澤はどこか虚ろな目で微笑んだ。
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お久しぶりです。ゆずりはです。
まずはフォローを外さず待ってて下さりありがとうございます。とは言ってもまだしばらく休止する予定です。
今回はこんなパロがあったら読みたいなぁと自分の欲に応えるため筆を取ってみました。いかがだったでしょうか…笑
まだもう少しお休みさせていただこうと思いますのでのんびり気ままに待っていただけると幸いです
この短編集は活動再開と同時に消します
2025.08.21 ゆずりは
コメント
1件
お話ありがとうございます😊 のんびり待ってます💕 めっちゃ刺さりましたー❤️💛🥹 もう、狂気のような関係性、大好きです✨ 夜更かししてて良かった😆