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1.夢のはじまり
「あーあ、つまんない」
わたしはベッドのうえでつぶやいた。
今日は学校あるけど、ズル休みしちゃった。
ぐうぜん昨日お熱でたから今日も休ませてもらったけど、パパとママは今日お仕事。
ママはすぐ帰ってくるって言ってたけど、まだ帰ってこない。
「──次は、バドアイドルの登場です!」
つけっぱなしのテレビから音声が聞こえる。
消そうかな、と、リモコンを手に、テレビ画面を見上げた時だった。
「この子、すごい…!」
えっ!?
すごい…!歌もうまいし…ダンスもキレッキレ…。
そして何より、この笑顔。明るくてかわいくて…、はじけるような笑顔が、わたしに元気をくれた。
柳江優羽(やなえ ゆう)ちゃん。
この子の隣に立ちたいって、思ったんだ!!
2.大大大チャンス!
「はーい!わたしから!自己紹介やりますっ!」
今日は高校1年の新学期!私立花畑学園高等部に通っています!
元気いっぱいがモットーのわたし!新学年デビューしちゃいまぁーす☆
「あ、それなら葉咲さん、お願いします」
「はいっ。わたし、葉咲花芽(はさき はなめ)です!今熱中してるのはバドミントンです!1年間よろしくお願いします!」
「…ゆぅ!ゆ・う!優羽〜!!」
「へっ!?…明歌」
「…ったく。あんた全然気づかないんだから」
「大音量で音楽流しても気づかなかったね☆」
「えぇ!?ちょっと愛歌!?私に変な事してないよね!?」
「うーんと…まあ、してないよ」
「………………怪しくない?」
「何の事っ?」
「ほぉら!あんたたち!じゃれてないで控室行くわよ!」
「「はーい」」
「イチ、ニ、サン、シ!よっ、ほっ、はっ」
わたしは今、校舎の屋上におります!
太陽さんが降り注ぐ中、素振りのバドの自主練中!
「ほーんとさ、花芽、よくつづくねぇ」
「でもわたし、続くのバドに関することだけだよ」
わたしを眺めるように日陰で雑誌を読んでいるのは、淀川(よどがわ)こずえちゃん。
「あたしもだなー。ホント、バレーのためにボールは毎日触るけど、勉強とかしないよ」
「でもいいよねー、成績いいほうじゃん」
「うーん、まあまあな方だよ?」
そう言って、2人で話していると。
ピロリン♪
スマホが鳴った。
「花芽の?」
「うん…、通知かなぁ」
ポチッと電源を付ける。
とたん。
「…っ!?は、はああああああああ!?」
わたしの声が、屋上中…、いや、学園中にこだました!!
「うわああああ!花芽、うっさいよ!」
ベシっとつむじをチョップされながら答える。
「こっ、こずっ、こずえっ、ちゃんっ!!これっ、「大人気バドアイドルグループ『Fan☆hundred』新メンバー追加オーディション開催決定!」って、こ、これって○▽%§∀✕✔◎…!」
「あわわわ花芽ぇ!日本語になってない!!」
「み、見てよこずえちゃんっ!『Fan☆hundred』、新メンバー追加オーディション開催決定だって…!」
「ふぁん、はんどれっど…?…ごめん、バドアイドルというものを知らない…」
「知らないのっっ!?」
「う、うん…」
「バドアイドルの『バド』はバドミントンのこと。アイドルは分かるよね。つまりっ、バドミントンができて、歌も歌えてダンスも踊れる、っていうこと!」
「へぇ…多才な子たちなんだね」
「うんっ!でね、わたしの推しの柳江優羽ちゃんは、シングルスでめっちゃ強いの!そいで双子の音名明歌ちゃんと音名愛歌ちゃんはダブルスでもう王者!!的な強さ!モチロン三人とも歌唱力もあってダンスも上手くってね、紅白に出るって、今から決まってるほどなの!すごいよねぇ。しかもたまに、自分たちで作詞作曲ダンスの振り付け考えちゃうんだよ!?」
思わず顔をズイッと近づけながら熱弁する。
「お、おおお…すごいんだね、その子たち」
「うんっ、…でもね、結成当時はもう一人…サヤマ…イロハ…?って子がいたんだって」
「へぇ。その子やめちゃったの?」
「うん…そうらしいよ、4ヶ月くらいで」
「何かあったのかねぇ」
「さぁ…」
ハッ!
そんなことよりも早く応募しなければ!!
優羽ちゃんにお近づきになれるチャンス!二度と逃すまいっ!!
…最初は書類オーディション(いや、ネットオーディション!?)…なのかな?あ、でもネットで顔写真と住所に電話番号、名前や性別とか、色んなもの記入するみたい。
「見せて見せて」
「こずえちゃんもきょーみあるの?」
「いや、イトコがアイドルだったから…」
「えっ!?そうなの!?」
「うん、でも今大学4年生で現役だったのが高1までだったから、そんな知らないと思──」
「──なんて名前っ!?」
「……遊上琉留(ゆかみ るる)」
「はえ…っ!?あ、あのルルちゃん!?」
「し、知ってるの!?」
「そりゃもう!アイドル界じゃ有名中の有名!大センパイだよっ!」
「へぇ…。そうだったんだ。でもルル姉、現役のこと全然教えてくれないんだ」
「えー!なんでだろーねぇ」
ポチポチと生年月日、名前を入力していく。
「あ」
これ、写真欄だ。
んーと?『制服で撮ってください』…?
ならちょうどいいや。今撮っちゃおっと。
時間制にして…、3、2ぃ、1!
カシャっ