「……彼氏と一緒だから……」
まだ気分が悪いのと、面倒臭くて相手にしたくなかった私が素っ気ない態度でそう答えると、
「彼氏? え? ってかこんなところに彼女一人待たせるとか無くない?」
「そんな男放っておいて俺らと回ろうよ」
「そうそう、行こうよ」
三人のうちの一人が強引に私の腕を掴んで来る。
「ちょっと、やだ、離してよ」
嫌がると、残りの二人は私を囲むように立ちはだかり、
「そんな大声出さないでよ」
「そうそう、別に何かするわけじゃないんだしさぁ」
「ちょっと付き合ってくれればいいから」
私の態度に気分を害したのか、半ば無理矢理ベンチから立たされて男の人たちに連れて行かれそうになった、その時、
「おい、人の女をどーするつもりだよ、クソガキ共が」
飲み物片手に戻って来た律は、もの凄く怖い表情を浮かべて仁王立ちし、ドスの効いた声で男の人たちに向けて、そう言い放った。
「あ?」
「何だよ、もしかして、アンタがこの子の彼氏?」
「マジかよ」
三人はまるで律を馬鹿にするように言いながら依然として私の前に立ちはだかり、律の元へ行けないよう邪魔をしてくる。
「君もさ、こんな冴えねぇ男より俺らと一緒の方が絶対楽しいって」
「そうそう、話も合わないじゃん?」
「つーわけで、アンタはもう用ないってよ」
何も言ってないのに勝手に話を進められ、私の腕を掴んだまま、連れて行こうとすると、
「はあ……黙って聞いてれば、くだらねぇことばっかり言いやがって。コイツが誰と一緒に居るかなんてコイツの決める事だろ? テメェらが決める事じゃねぇんだよ」
「痛てぇ!」
無言で私の前まで歩いて来た律は、溜め息と共に私の腕を掴んでいた男の人の腕を捻りあげながらそう言った。
「律!」
解放された私は一目散に律の元へ走って行き、そのまま抱きついた。
「さっさと散れよ。目障りだ」
そして、私を抱きしめながら律がそう口にすると、
「ッチ、もう行こうぜ」
これ以上は無意味だと悟ったのか、舌打ちをしたり、文句を言いながら去って行った。
「律……」
「平気か?」
「うん……、大丈夫」
「悪かったな。一人にして」
「ううん、律は悪くないよ、元はと言えば私がジェットコースターに乗れもしないのに乗ったからだもん」
律にギュッと抱きついたまま、私が落ち込んでいると、
「ほら、飲み物。それ飲んで、次何乗るか決めろよ」
持っていた飲み物を手渡してくれる。
「律……ありがとう」
飲み物を飲んで少し落ち着いた私は、いつまでも落ち込んでいては、せっかくのデートが台無しになってしまうと気持ちを切り替え、
「それじゃあ次は、ゴースト屋敷に行こう!」
次のアトラクションに行く計画を立てた。
「それ、お化け屋敷だろ? お前幽霊とか苦手じゃねぇのかよ?」
「本物は怖いけど、お化け屋敷は作り物だもん、大丈夫だよ」
「…………まあ、お前が良いって言うならいいけど……」
私が選んだのはお屋敷の中を歩いて回るタイプのお化け屋敷。
怖いと評判だけど、作り物だから大丈夫……なんて余裕を見せていたはずなのに、いざ中に入ってみると作りがリアル過ぎて終始律の腕にしがみついたまま。
「だから言ったんだよ……」
「ごめんなさい」
流石に調子に乗りすぎたと反省した私は出口に辿り着いたと同時に謝った。
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