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エルル様
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第一話 「戦力外」
「――黒瀬朔。お前は今回の作戦から外れろ」
作戦会議室に、冷たい声が響いた。
言われた本人――黒瀬朔は、特に反論することもなく、
「……わかった」
とだけ答えた。
神代蓮が眉をひそめる。
「ちょっと待てよ。朔は俺たちと一緒に――」
「足手まといだ」
天城迅が遮った。
「戦闘能力もない。判断も遅い。あいつを連れて行くくらいなら、荷物を一つ減らした方がマシだ」
朔は何も言わなかった。
ただ、隣にいた白峰澪だけが、じっと朔を見ていた。
「……また、そうなってる」
「何が?」
蓮が聞く。
澪は小さく首を振った。
「ううん。何でもない」
その日の夜。
蓮たちは敵の本拠地へ突入した。
相手は――夜凪零王。
一人で国を滅ぼしたとまで言われる、史上最悪の怪物。
そして戦闘が始まって、わずか三分。
「……弱いな」
零王が笑った。
天城迅が斬りかかる。
「舐めるなッ!!」
――ドンッ!!
次の瞬間、迅の身体が壁まで吹き飛んだ。
「迅!!」
蓮が叫ぶ。
だが、零王は止まらない。
「次は誰だ?」
誰も動けない。
そのとき。
零王の視線が、倒れている蓮の後ろへ向いた。
「……ん?」
そこにいたのは――黒瀬朔だった。
「お前は?」
「……黒瀬朔」
「そうか」
零王は興味なさそうに笑う。
「ならば死ね」
巨大な一撃が朔へ向かって放たれた。
誰もが目を閉じた。
――しかし。
「……うるさいな」
朔の声が変わった。
蓮が目を開く。
「……え?」
朔の右目から、光が消えていた。
そして彼は、迫り来る攻撃を――
指一本で止めた。
「な……」
零王の表情が初めて崩れる。
朔はゆっくり顔を上げた。
「お前……」
「俺は朔じゃない」
静寂。
「――零だ」
次の瞬間。
零王の頬に、一筋の血が走った。
誰も見えなかった。
ただ、朔――いや、“零”だけが立っていた。
天城迅が震える。
「……今、何をした?」
零は答えない。
その代わり、口元だけが僅かに笑った。
「こいつは強いな」
そして零王も笑う。
「……なるほど」
二人の最強が、初めて互いを敵として認識した。
だが。
朔の頭の中では、別の声が響いていた。
『次は俺にやらせろ』
『いや、まだ早い』
『殺せばいいだろ』
『……起こすな』
四つの声。
そして、そのさらに奥。
誰にも聞こえない場所で――
五人目が目を覚ました。
『……零王』
その声を聞いた瞬間。
ラスボス・夜凪零王の笑顔が消えた。
「……まさか」
零が振り返る。
「どうした?」
零王は、初めて恐怖を見せた。
「お前……」
「その奥にいる奴を――」
零王の声が震える。
「絶対に起こすな」
コメント
3件
読み終えました!「戦力外」と言われていた主人公が、実は複数の人格を持つ最強存在だった——その構造の提示がめちゃくちゃかっこいいですね。特に「指一本で攻撃を止める」シーンと対照的な「起こすな」というラストの緊張感が、設定好きとしてたまらなかったです。五人目の存在がどう物語を動かすのか、続きが気になります!