テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第14話 〚動き出す警戒網〛(担任&大人側)
その日は、
最初から「おかしい日」だった。
四時間目で授業は終了。
給食なし。
清掃なし。
生徒たちは、
理由を知らされないまま下校した。
「ラッキーじゃん」
「なんかあった?」
そんな軽い声が、
廊下に残って消えていく。
――その中に、
りあも、恒一も、確かにいた。
◇
最後の生徒が校門を出たのを確認してから。
職員室の奥、
普段は使われない会議室の灯りが点いた。
担任が、一人、また一人と集まってくる。
澪の担任は、
最後に扉を閉めた。
「……今日は急で申し訳ありません」
その声は、
いつもの柔らかさがなかった。
校長、学年主任、養護教諭。
必要な大人だけが、席につく。
「理由は、ただ一つです」
担任は、机の上に資料を置いた。
「生徒・澪の安全確保」
空気が、張り詰める。
◇
養護教諭が、口を開いた。
「今日、澪は授業中に倒れました」
「強い胸痛と意識混濁。原因は、精神的負荷の可能性が高い」
校長が、眉をひそめる。
「いじめ、ですか?」
「現時点では、断定できません」
担任が、続けた。
「ただし――」
「本人の証言と、周囲の状況から」
「特定の生徒による執着・接触の兆候が見られます」
名前は、まだ出さない。
だが、
全員が“誰か”を思い浮かべていた。
◇
学年主任が、静かに言う。
「最近、廊下や図書室での目撃情報が多い生徒がいますね」
担任は、頷いた。
「ええ」
「複数名です」
りあ。
恒一。
「直接的な違反行為はない」
「ですが――」
担任は、一呼吸置いた。
「違和感が、重なりすぎている」
沈黙。
それが、
大人たちにとって一番重い材料だった。
◇
校長が、決断する。
「対応を始めましょう」
「まず、澪の行動範囲の把握」
「登下校、休み時間、放課後」
「必ず誰かの目が届く状態を作る」
担任が、すぐに言う。
「クラス内の配置は維持します」
「信頼できる生徒が周囲にいます」
養護教諭が、頷く。
「体調面のフォローは、こちらで継続します」
「少しでも異変があれば、すぐ共有を」
学年主任が、静かに付け加える。
「問題のある生徒には――」
「“何も起きていない今”だからこそ、目を向ける」
◇
会議の最後。
担任は、資料を閉じて言った。
「これは、まだ“未然防止”です」
「でも」
「未然で終わらせるために、全力を尽くします」
誰も、反対しなかった。
その日から。
・校内の見回りが増え
・澪の周囲には必ず大人の視線があり
・些細な報告も、共有されるようになった
生徒たちは、
まだ何も知らない。
だが――
水面下で。
確実に、
警戒網は張られ始めていた。
そして同時に。
その網の“外側”で、
気づかれぬまま動く影がいることを。
この時、
大人たちはまだ、知らなかった。