シルベストル伯爵の領主館は、都市の河岸沿いにある切り立った崖の上に建てられているとのことで――
わたしたちは、町の城門前で出迎えてくれた兵士さんたちに馬をあずけてから、領主館を目指して急勾配の階段をのぼっていた。
というのも、町はずれの岬の先端部に構えられている領主館は、狭くて急坂な階段をのぼることでしかたどり着けないようになっているのだ。
「なんか、領主館ってずいぶん端に建てられてるんですね」
てっきり都市の中央広場に近いところに建てられるものだと思っていたから、伯爵の居館が郊外にあるのは意外だった。
わたしのつぶやきに、前をのぼっていたサフィヤが振り返って快活に笑う。
「そりゃそうさ。ライオネルは領主館が落とされたら都市ごと陥落するからな。だから、あえてこういった足場の悪い場所に居城を構えて、地の利を得てるってわけだ」
「地の利……?」
どういうこと、と首をかしげれば、****************************
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