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明日の朝、新幹線で向かっても余裕は充分にありそうだったが、万が一を考慮して今日中に首都入り、所謂(いわゆる)前乗りする事にしたようだ。
善悪が持ってきたタブレットを使って、今夜の宿泊先を選んでいた二人であったが、最終的に善悪が結論を出した。
「うん、やっぱり近さとお値段、両面から考えた場合、やっぱり(二度目)名物の女性社長の特製カレーで有名なここでござるな」
「そうね、気楽に泊まれてポイントも貯まるからいいわね。 ほらあの浜松出身の俳優さんも、倫理に反する行為をする場所に選んだんでしょ?」
「!」
「ポイント欲しかったんだっけか? あの、なんだっけ? あ、そうだ、確か袴田(ハカマダ)吉ひ――――」
「そこまででござるっ! それ以上は言ってはいけない!!」
「えー! 何でよ?」
「武士の情けでござるよ、コユキ殿! 同じ県で生まれた者として、気持ちはどうあれ、応援するでござるよ!」
「…………分かったわ」
無理やりでも、優しい目線で応援して行く事を決めた二人は、次なる議題に向き合う事とした。
タブレットを操作していた善悪が呟いた。
「う~ん、どう考えても同室で一緒に宿泊した方が良いであろうな~」
コユキは驚いて言葉を返した。
「え! な、何言ってんのよ、善悪! そんなふしだらなっ!」
慌てまくるコユキに対して、当の善悪は落ち着き払ったままで自分の考えを告げた。
「いや、お値段的には大差ないのでござるが、只の旅行ではなく、悪魔と対する為の謂(い)わば『遠征』でござろう? やはり通常とは違うのでござる」
そこで一旦言葉を区切り、タブレットから視線を外し、神妙な面持ちをコユキに向けてから言葉を続けた。
「ほら、創作物の中のパーティーだって、普段は別行動をしていても、討伐任務中だったり、ダンジョン攻略中とかでは、一緒に野営して過ごすでござろ? 今回の上野行きも、言って見れば敵地に乗り込むのでござるから、パーティーは何が起きてもすぐさま連携が取れるように、一緒に居たほうがいいのかな、と思ったのでござるよ」
「…………う、うん、理屈は分かったわ…… でも、それってつまり……」
「理解してくれて良かったでござる。 問題はツインの部屋がそもそもデラックスツイン一室しか無い様で…… 生憎(あいにく)本日の空きは無い事でござるな…… 尤も(もっとも)ダブルの部屋だっら、何部屋か空いている様ではあるが――――」
「そ、そんなのだめよっ! 何考えてんのよ、善悪! ツインでギリよ、ギリ! とは言っても変な事したら法的手段に訴えて、社会的に抹殺するからね!」
コユキの焦った様な言葉を聞いた善悪は、その目を氷点下の冷たさに変えて言った。
「絶っ対っ! 頼まれても、脅されても、洗脳されようとも、な~んにもしないでござる! 馬鹿にするもんじゃないでござるっ!」
言い切った顔には、何、気持ち悪い事言ってんだこのバカ、とでも表現するしかない表情が貼り付けてあった。
まだ自分の肩を抱いて、懐疑的(かいぎてき)な視線を向けて来ているバカは放って置く事にした善悪は、再びタブレットを手に取って考え始めた。
「となると、ツインの部屋が余っているホテルを探す所からやり直し、っと…… 丁度あれば良いのでござるが?」
その呟きを聞いたコユキが、何か思い付いた様に、座卓の下で戦っていたオルクスとモラクスの方へ顔を向けた。
そこでは、勝負が付いたのか、うつ伏せに倒れこんでいるオルクスと、その背中にドッカリと腰を下ろして足を組む、ケンシロ、いやモラクスの姿があった。