テラーノベル
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「日織さん、怒ってしまわれましたか?」
心配そうに修太郎さんがそう問いかけていらっしゃるから、私は窓のほうを向いたまま「お、怒っては……いません」とお答えした。
本当に怒ってはいないのです。ただ、恥ずかしくて修太郎さんの方を向けないだけで――。
ひざに載せた手で、スカートをギュッと握ってしまったのは……仕方ないですよね?
「では、照れていらっしゃる?」
ズバリ心のうちを言い当てられてしまった私は、ぴくんっ、と肩を震わせてしまいました。
うー。分かりやすく反応してしまう自分が、すごくすごく恥ずかしいですっ。
「……だって、修太郎さんが……いきなり……その、耳に……」
言って、先ほどの感触と、耳元で聞こえたチュッと言う、濡れたリップ音を思い出した私は、より一層照れてしまう。
「僕もね、とてもドキドキしています。こうして日織さんと二人きりになるのは本当に久しぶりですし……」
おっしゃってから、少し沈黙。
私はその沈黙が気になって、恐る恐る修太郎さんの方を振り返りました。
そうしたら、修太郎さんがじっと私の目を見つめておられて。眼鏡越しの真剣な眼差しに縫いとめられて、私は身動きできなくなってしまいました。
きゃー、心臓が持ちそうにありませんっ。
「日織さん、実はこのまま一旦市役所へ戻りたいのですが、よろしいですか?」
問いかけられた言葉に、お仕事が終わっていらっしゃらないのに無理をしてお迎えにきて下さったのかも?と思った私は「もちろん構いません。――あ、でももしあれでしたら……私、家でお待ちしても……」とお答えしたのですが。
修太郎さんはゆるゆると首をお振りになられて、「日織さんと一緒がいいのです」とおっしゃった。
私は不思議に感じながらも、もしかしたらお手伝いが必要なのかも?と思い至って、「はい、修太郎さんが望まれるなら喜んで」とにっこり微笑む。
お話ししている間に、さっきまで照れていたことなんて、すっかり吹き飛んでしまいました。
***
市役所に着くと、修太郎さんはいつも停めていらっしゃる月極の駐車スペースではなく、利用者用の駐車場に車をお入れになられました。
終業時刻が過ぎているからかな?と推測しながら、私は修太郎さんに手を引かれて車から降りました。地面に立つと同時に、修太郎さんが当然のように腕を出していらしたので、私は戸惑いながらも彼の腕に掴まったのですが――。
厚底シューズのお陰で、いつもよりほんの少し修太郎さんのお顔が近くて、何だか照れくさくなりました。
(職場なのに……こんなイチャイチャして大丈夫でしょうか?)
嬉しく思いながらも、ついつい気になってしまいます。
まだ都市計画課の皆さんで、残っていらっしゃる方もおられるかもしれませんしっ。
修太郎さんに至っては、きっと私よりお知り合いが多いので、他の課にも知人がいらっしゃると思います。
「あ、あの……修太郎さん」
私が恐る恐る呼びかけると、修太郎さんは笑顔で「はい?」と私の顔を見つめていらして。
その表情に、ソワソワと人目を気にしている私の方がおかしいのかな?と思ってしまいました。それでもやっぱり気になったので、「腕とか組んでいても……その……大丈夫でしょうか?」と小声でおうかがいすると、クスクスと笑われてしまう。
コメント
2件
大丈夫だから組んでるんだよ、きっと♥
みぅです🥀 うわ……もう、この2人の空気感、尊すぎて息するの忘れた🤍 耳にキスされた後の照れ方がすごく可愛くて、スカートぎゅっと握っちゃう日織さんの心情がもう痛いほど伝わってくる…! 修太郎さんの「日織さんと一緒がいいのです」って台詞、何気なく言ってるようでいて、すごく重みがあるよね。職場に連れて行く腕組みイチャイチャも、人目を気にする日織さんとの対比がたまらない…尊い。 この後、どうなるんだろう。ドキドキが止まらないよ…!
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