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「ノート、出してください」 次の日の昼休み。当番の麗華は一人一人に声を掛けて、ノートを集めていく。
みんなグループを作っているのだからまとめて声を掛けたら良いと思われそうだけど、名指しで声をかけないと返事をしないとかいうメンドウなことをしていて、生徒三十四人に声を掛けさせるという地味な嫌がらせだ。
本来、提出物は教室後ろのロッカー上に各々が置いていくと決まっていて、当番はそれを職員室の先生の机に置いていくだけで良いと決まっているのに、ノートは一冊も置かれていない。
普段はみんな出しているからこそ全員で示し合わせていると分かり、それに気付きながら声を掛けなければならない麗華を見て笑う。最低な遊びだ。
「はい、ノート。失くさないでよぉ」
「ありがとう。……気を付けるね」
莉乃からノートを受け取った麗華はより表情を険しくし、クラス全員から集めたノートをギュッと握りしめている。
自分を見てクスクス笑う異質さに、淀んだ教室の空気感。
麗華は既に、何かを察しているのかもしれない。
「さあ、文」
後ろから聞こえる、試すような声にハッとなった私は、段取り通り前に進んでいく。
「西条さん……、話があるんだけど」
「……あ、うん」
ケガをさせた負い目があるからか麗華の瞳は明らかに揺らいでいて、ノートを職員室に持っていかず、先に私の話を聞くと言ってくれた。
一瞬、麗華は自分の机にかけてある学生カバンに目をやるけど、手元にあるノートに視線を戻すと、どこか諦めた顔をする。
私物を教室に置いて行くと、ろくなことにならない。だけど、みんなのノートを失くす方が大問題。
それが分かっているからこそ、三十五人分という重たいノートを抱えて付いてきてくれた。
「こないだは、ごめんなさい」
屋上に続く階段に行き顔を合わせると、麗華は頭をガパッと下げてきた。
何で、麗華が謝るの?
夏休み中は仲良くしてたくせに転校してきたら知らないフリとかして、クラスに馴染めない麗華をフォローすることもしなくて、友達やクラスの子と仲良くしたくないと言う私に寄り添ってくれたのに麗華の意見を散々否定して、私のせいでいじめられているのに、どうして謝ってくるの?
ああ、ダメだ。
喉がヒリヒリとして、声が出ない。
本当ならここで、「気にしてないよぉ」とか調子良いこと言って、ノート出しといてあげると受け取る手筈となっている。
麗華を嵌めるために。
後にノートがないと騒ぎになって、麗華は私が運んでくれたと主張するけど、友達三人が「文はずっと私たちと居た」と言ってくれることになっている。
西条麗華はクラス全員分のノートを失くし、その罪を他人に押し付ける酷い奴。優等生の麗華を貶める、陰湿すぎる計画だ。
だから私はおどけて話さないといけない。麗華を信じさせて、拒否した場合は「私のこと疑うの?」とか罪悪感に付け込まないといけない。
だから、だけど……。
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