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中学二年生の冬、三学期に入った頃。この日の三時間目は理科で、実験室で行われた。 実験の時は、六人一組でグループを作ることになっていて、理科の担当であり担任でもある中田先生は生徒の自由を重んじる先生で、好きな者同士でグループを作って良いと決めていた。
みんな仲良し同士でワイワイとしているけど、ボッチの私からしたら自由ほど辛いものはない。
出席番号順とかにしてくれたら、みんな最初から期待とかせず普通にグループになってくれるのに、自由になった途端にアタリハズレが出てくる。
私というハズレを引き受けないといけないグループは明らかにテンションが下がっていくから、ジャマにならないようにイスを机から離して息を潜めて座らないといけない時間が何よりも苦痛だった。
せめて私を押し付け合っている場面を見なくて済むようにと、こうゆうグループを作る時はギリギリの行動を心掛けている。いつものように教室で本を読んでいると、崩壊の音が教室内に小さく響いた。
パリン。
『……あっ』
音がした教室後方に顔を向けると、こっちに顔を向けて泣きそうな顔をする、同じクラスの伊藤さんと目が合った。
生徒用ロッカー上に飾られていた、金色の高さ三十センチほどの細長いトロフィーが見当たらず、落として壊してしまったのだと思った私は目を逸らし、黙って教室から出て行った。
授業が終わってから、どうしたのだろうと一番乗りで教室に戻る。いつもの定位置にトロフィーは飾られているも、少し斜めに傾いていて、上部が折れたのを無理やりに押し込んでいるのだと鈍い私にも分かった。
こんなんで、ごまかせる?
そう思ったけど他に方法なんてなく、クラスの子たちの笑い声が聞こえてきて、慌てて自分の席へと戻っていく。
みんなトロフィーの前を横切っていくけどわざわざ見る人なんていなくて、誰も気付かなかった。
四時間目、給食の時間、昼休み、五時間目、六時間目と平和な時間が過ぎていて、誰にも気付かれず終わってと願ったけど、神様はこんなモブの願いは聞いてくれないらしい。
『えっ、これ、折れてない?』
掃除という分かりやすい時間割に、全てを暴かれてしまった。
『誰が壊したんだよっ!』
『しかも、ごまかしてんよね? マジでありえないんですけどぉ!』
壊れたトロフィーは陸上部が春の大会で優勝した時に授与した物で、怒るのは無理なかった。
先生は陸上部員を宥めつつ、壊した人や、何か知っている人は正直に話すように言われたけど、私は黙っていた。
トロフィーを壊した伊藤さんは、いわゆる二軍女子と呼ばれる人。
陸上部はクラスで目立つ存在とされる一軍の男子女子で、もし壊したと分かればおそらく目を付けられるだろう。
二軍だからって、友達がいるからって安全ではないこと。たった一つの失敗で、一気に底辺まで落ちぶれてしまうこと。
スクールカースト底辺の私ですら、それぐらい分かっていたし、おそらく理科の教科書とかをロッカーに取りに戻ってきて、引っ掛けたか何かの理由で落として壊してしまったのだろう。
わざとではない、悪気はなかった。だから言わないと決めていた。
陸上部がフィートアップしていき一人一人に問い詰めていく中、「知りません」と平静と答える自分を、脳内でイメージしていく。
すると。
『ごめんなさい……、私』
教室内がピリつく中、問われた伊藤さんはそう答えて、次に室内はざわつきに包まれていく。
ホントのことを言ってしまって大丈夫なのかと、関係ないはずの私の心臓までドクドクと鳴っていた。
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だけど、これが今後の学校生活に大きく影響していくなんて、この時の私には全く予想出来なかった。