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また担任と二人きりになってしまった。
なんか言えやい。…ここで黙られても困る。あたしゃ生来、重っ苦しい空気は苦手なんだい。
はぁ。
「……何で『迷惑』だって思うんですか?」
今日初めて視線が重なった。
「成瀬さんは私のことを避けていらっしゃると思いまして。私の好意を不快にお思いになっているといったところでしょうか」
「避けてないです。…ただ、接し方が分かんないだけで。不快だとも思ってないですよ」
担任が僅かに目を見開く。
「でも、上から目線だとは思うんですけど、…私を好きになるのは止めた方がいいと思います」
「そんなことー」
「だって、傷ついてるのは先生の方じゃないですか」
「どういう意味でしょうか?」
「普段無口で無表情だけど、時々すごく悲しい目をしてますよね」
「……」
「それって片想いの弊害じゃないですか。…私は気持ちに応えられていないし、これから先も応えられないかもしれない。…ごめんなさい。多分、恋愛に向いてないんだと思います」
「諦めろと仰っているのですか?…全く成瀬さんは優しい人ですね。恋に傷みは付き物ですよ。たとえ成瀬さんの気持ちが伴わなくとも、私は貴女を想い続けて差し上げます」
「理解らないです、その気持ち。結局、気まずいのは変わらないってことじゃないですか!…どうすれば良いんですかーー」
煮え切らない気持ちを抱えたまま、私は気付けば教室を飛び出していた。
それを言葉に出来ないのが悔しくて、未だ渦巻くような違和感が残っている。
校舎の外には時雨が降り続けている。静寂な廊下に張り詰める澄んだ空気はやや冷たくて、暗い影が胸中に入り込んでくるかのようだった。