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「デェン師、なにか欲しいものはありませんか?買い出しに行ってきます。 」
リンシィーが聞く。
「昨日、なにか買い物に行っていたと思っていたよ。」
笑いながら答えた。
すると、リンシィーは不思議だと言う。
「私、デェン師に言いましたか?」
どうして、 と。
リンデェンは簡潔に説明した。
「リンシィーが掛けてくれた布は見たことがなかったし、比較的綺麗だったから。
それから、この食器だって リンシィーが作った訳ではないでしょう?」
的確に当てられ、その通りだ と関心した。
「デェン師は何でも分かるのですね……
少し、買い物に行きました。デェン師の欲しいものも、買いますよ。」
すると、リンデェンは首を振った。
「私は別に物欲もそこまで無いしね。 好きなものを買ってくると良いよ。」
そう言って、リンシィーを見送った。
なにかほしいものがあったのか、リンデェンに
気を使ったのだろう。
好きな買えばいい。
そう思っていた。
「私に気を使うことなんてないのにな……」
リンシィーが出ていったあと、思わず独り言を幾つか零した。
1人になって弐時程たったころ、突然扉を叩く音が鳴った。
思わず身体が飛び跳ねる。
3回、ノック音がなる。
コンコンコン ̄ ̄……
ぼーっとしていたが、慌てて扉を開けた。
「どちら様ですか?」
扉を開いた先に居たのは、1人の老人だった。
服装を見るに、けっこう金をもっていそうだ。
この時代、なかなか持てない杖を、
しかも木の素材はそこそこ高くて質感も良い。
「少し……彷徨っていて、休ませてほしい」
震える声を何とか抑えるように話す。
悪いようには見えないし、ひとまず中へ入れてあげることにした。
布を引いた床に老人を座らせ、水を出す。
「飲んで落ち着いて下さい。」
そう言って渡した。
すると老人は、
「親切にどうもありがとう。」
と言いながら、一口で飲み干していった。
相当彷徨い歩き、喉が乾ききっていたのだろう
先日のあのことを経験した後、喉の乾きには敏感になっていた。
喉が渇くこの賎しさがよくわかる。
少しの間深呼吸させ、落ち着いた表情になった
老人は、リンデェンの方を向く。
リンデェンが老人へ聞く。
「名前を聞いても?」
すると老人は、先程よりも随分元気そうに話し始めた。
「儂の名はイヂィン。旅人じゃ。 本当は旅仲間もいたのだが……皆、もう人界には ̄」
言葉を詰まらせた。
きっと口に出したくないのだろう。
「私は言いたくないことを、説明させる気はないので……申し訳ない。
どこを旅してきたのですか?」
少し頭を下げ、謝礼の気持ちを表意する。
申し訳ない、と思っていた。
「気にしないでください。
私たちは、ここから東にある山奥に住んでいました。同じ同居人です。 ただ、私含め6人居たうちの1人が、突然姿を消しました。」
1人の男が消えたのは、雪が降っていたころ。
今はもう、暑くて仕方がない程だから、相当前のことだろう。
朝、皆で机を囲んで朝食を食べる時、その男がいなかった。
居なくなった男の名前を仮名:イミン として説明してくれた。
イミンと同じ部屋で寝ていた同居人が言うには
目を覚ました時にはいたという。
それは、もう空が明るくなっていたぐらいで
朝だったらしい。
となれば、居なくなったのはそれより後だ。
イミンは一体何処へ行ったのか。
それから話し合いを重ね、探しに出よう という結論に至ったそうだ。
「もう何年か旅をしている。探し回ったが、
一向に見つかりやしないよ。」
イヂィンは、
はぁ……とため息をこぼした。
もしこの話が本当ならば、そうとう歯痒い
つらい思いをしてきたのだろう。
それが、どうして今では1人にまでなってしまったのか……
聞きたいのは山々だった。
だが、聞きづらく少々気まづい。
「何故、今は儂1人なのか…… 話せば長くなるのじゃが、他4人共年齢はバラバラだった。
ただ、最年長のあいつは もう歳だったからの……。 仕方がないわ。」
衰退していったのだろうか。
ある程度察しはついた。
「貴方は今、何歳なのでしょう?
差し支えなければ、お教えいただきたい。 」
躊躇うことなく、イヂィンは教えてくれた。
「儂はもう82での。歳も歳じゃな。」
俯くイヂィンを見ると、なんだか申し訳ない気持ちになる。
すると、イヂィンはリンデェンに向かって、明るい様子で言った。
「自分は何歳なんだ?若くて、活きのいい青年じゃな。未来が明るいわい。」
心苦しい という思いでいっぱいだった。
20代だと思っているのだろう。
本当はもう、数百年生きている 貴方よりも遥かに年上だと言うのに。
苦笑いしつつも、適当に躱した。
「あはは……そうですね。」
勝手に気まづくなり、目配せをしたとき、
古屋の扉が開いた。