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【夜と16とハロウィンと】
次はゴーストだ。
広場に付くと、中央にある噴水が目に入る。
ハロウィン仕様のラベルで包まれ、雰囲気が出ている。
「…そコに居るノ、リィラちゃん?」
「うん、私だよ。」
「ちょッと待っテて。えート…よし、こレでOK。」
ゴーストが、ふわふわと浮かびながらこちらへ近付く。
「足が無い」
「幽霊だモん。そレも怨霊」
「怨霊?」
「それヨり、あの言葉は?リィラちゃん」
そう言われ、確か自己紹介のときも言っていた『怨霊』という言葉に疑問を持ちながら、別の質問を彼女に問いかける。
「トリック・オア・トリート」
「トリックもいイけど、お菓子あげル」
そう言うと、ゴーストがネオンピンクカラーの飴玉を1つ取り出す。
「…これ、さっき貴女が舐め…食べていた飴と同じ飴?」
「そうダよ。それ好きでさ、何百個も買い溜めしチゃったノ。」
「そんなに好きなの?」
「ネオンカラーの飴が好キなの。あたし幽霊だからホっぺから透けテいい感じ。」
ゴーストも飴玉を取り出し、同時に口に放り入れる。
私は少しの間転がしたが、ゴーストは最初からバリボリ噛んでいる。おそらく噛むのが1番好きなのだろう。
「…そうダ、さっキ怨霊につイて気になってたヨね。話す?」
「いいの?」
さっきの雪女さんの話があった私は、過去の話についてほんの少し消極的になっていた。
「いいよ。悔いタところデ何も変わらナいし。」
飴玉の包装を丸めながら、ゴーストは話し始めた。
「あたしね、親友が居タの。とっテも可愛い女の子だった。」
「でモその女の子、ヒどく嫉妬深かっタの。だかラかあたししか友達は居なカった。」
「あたししか友達が居ナいから、当然嫉妬の矛先はあたし関連になル。」
「あたしが他の子と喋っテると、そノ子はすぐ怒った。『なんでわたし以外と話してんの』って。」
「あと数日デ冬休みにナる!っていう水曜日、部室で部長と話しテたの。部長は男ノ人だっタよ。」
「その日の帰リに、あたしはその女の子に呼び止メられた。」
「その子ハ何も言わず、たダただあたしの腕ヲ無言で掴んデ、体育倉庫の中へ投げ、鍵を閉めタ。」
「そのマま誰にも気付かれルことなく冬休みに突入シ、あたしは飢えか凍えのドっちかで死んだ。」
「あたしはソの子のことをひどク恨み、怨霊になり、しバらくの間憑き纏った。けど、ある夜突然ここに来て、何トなく未練が晴れたような気持ちにナった。」
私が飴を舐め終わる頃、丁度ゴーストも話を終えた。
「…っテこと」
「そうだったんだ」
…でも、未練が晴れたなら、もう成仏してもおかしくないはずだ。
どうしてまだここに居るんだろう?
「…ねぇ、その出来事があったのはどれくらい前?」
「2年くラい前」
「それなら、成仏しないの?」
「しなイよ。といウか、でキない」
できない?
「どういうこと?」
「未練が晴れたような”気持ちにナった”とは言え、まだ恨んデるよ。だから、あたしはあの子ガ死ぬまで、あの子があたし以上に苦シんで死ぬまでは成仏デきない」
その瞳には、『自分を殺した親友への恨み』と、『怨霊としての覚悟』が映っていた。
「リィラちゃん」
瞬きを数回し、ゴーストがいつもの表情になる。
白と濃い水色が混ざったような色の霊体の手が、私の両頬を包む。
「トリック・オア・トリート」
「……、トリート」
「トリックじゃなクて?」
「トリート」
「つれないナぁ。じゃあホら、何くれルの?」
私は、ネオンパープルカラーのグミを取り出す。
「こういう色が好きなんだよね?」
「…!キレイなグミ。本当にいいノ?」
「チョイス、これで合ってた?」
「正解だよ、リィラちゃん」
今までで1番の笑顔に、どことなく生前の彼女の面影?が見える。
生前の彼女を知らないから、何となくなのだが。
「ありがトう、リィラちゃん。…次はヴァンパイア、路地裏だよ。このまま真っ直グ行けば、ヴァンパイアが誘導してくれルらしい。」
「ありがとう。行ってくるね」
「行ってらっしゃい。またね」
噴水の横を通り、ヴァンパイアが居るであろう路地裏へ向かう。