テラーノベル
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「本当に正装じゃなくていいんですか?」
「世界中、北アメリカ、アジア、ヨーロッパとかで、それぞれドレスコードが違うんだ。オーストラリアではビジネスカジュアルと言われているが、前に涼と来た時は、もっとカジュアルな服装の人が大勢いたな。一応、俺は革靴にシャツ、チノパンで行くけど、朱里はワンピースとヒールのある靴ぐらいで大丈夫だと思う」
「そうなんですか」
旅行に出る前、もしかしたらかしこまった場所で食事をするかもしれないからと、ドレスコードのある場所対応の服は持って来た。
世の中、色んなワンピースはあれど、私はデザインを誤るとどすこいになってしまうので、思い切って襟ぐりの広いタイトワンピースを持って来た。
黒地にホットピンクや白の花柄がついていて、セクシーながら華やかさがある。
襟ぐりが広いと言っても谷間が出るほどじゃなく、胸元が詰まって見えない程度のデザインだ。
「あんまりこういう服、着る事はないと思ってたんですが」
「海外じゃあ、年齢問わず谷間出してるし、大人しいほうだと思うよ。似合う」
尊さんは私が髪を纏め直している間、後ろに立ってネックレスの位置を直してくれていた。
私は軽くメイク直しをし、少し濃い目のリップをつける。
「ん、世界一可愛い」
尊さんは私を頭のてっぺんからつま先までチェックし、なんと、親指と人差し指をクロスさせて指ハートしてきた。
「どこからそんな情報仕入れるんですか!」
「こないだ、たまたま牧原さん達と出くわした時、教えてもらった」
「あざとい……! あざとミコ!」
「可愛いおっさんにならねぇと」
「急にそんな仕草されると、ギャップで心臓おかしくなりますよ! あ~、心臓に悪い! もう一回!」
「青汁のCMみたいだな」
尊さんは笑いながら、今度は両手で指ハートしてきた。
おまけにちょっと首を傾げて笑うので、あざとさMAXだ。
「くうぅう……っ! あざミコ!」
「はいはい、行くぞ」
彼はケラケラ笑い、私の背中をトンと叩いた。
「わー! 恵、可愛い!」
「ぐぬぅ……」
ロビーに行くと、ペールブルーのフィッシュテールワンピースを着た恵が、今にも噛み付いてきそうな顔で立っていた。
生地は無地でシンプルなんだけれど、Aラインのシルエットがとにかく格好良くて、恵のスラリとした脚が際立って見える。
おまけに彼女は要所に花のモチーフがついたコイルストラップサンダルを履いていて、膝から下が非常にゴージャスになっている。
「さっすが涼さん! ナイスプロデュース!」
「イエーイ!」
私は涼さんとハイタッチを交わし、彼と二人でニヤニヤして恵を見て、おもむろにスマホを取りだす。
ちなみに涼さんは白シャツにベージュのタックパンツと、シンプルな装いだ。
「撮影禁止! 金取るぞ!」
「はい、喜んで~!」
恵が毛を逆立てた猫みたいに怒っても、涼さんはどこ吹く風という感じで連写しまくっている。
「ほら、いつまでもじゃれてないで、行くぞ」
「はーい!」
尊さんに声を掛けられ、私はタタッと小走りに彼の隣についた。
カジノは、すぐ近くの『プルマン・リーフ・ホテル』という五つ星のホテルに入っている。
二〇二三年の秋まで最上階に動物園があったらしい、色んな施設の入った大規模なホテルだ。
ホテルの前にはどでかいネオンでカジノというロゴがあり、分かりやすい。
無料で作れるカジノのメンバーズカードは、パスポートを持っていて、住所などを書けば簡単に作れるそうだ。
そのカードを持っていれば、カジノの中での飲食が割引になるらしい。
日本ではカジノに馴染みがないので、及び腰になってしまうけれど、こちらでは十八歳以上なら誰でも気軽に入れるらしい。
カジノの入り口はホテルのロビーの反対側にあり、巨大スクリーンを背後にしたステージにはDJ用の機器がある。
長方形のパネルにはグレートバリアリーフの美しい海の中が映され、その周囲の床の上にもパネルがあり、まるで海の上に立っているような気持ちになった。
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