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「羽良野先生? この人は?」
「しっ、隠れて!」
ぼくはひやりとした。なぜなら小声だったけど、よく耳に入る声で、後ろから複数の声が聞こえている。
慌てて柱を避けて藁に身を隠したけど、とても薄暗い空間で静かだから隠れなくても同じ意味だった。
ぼくは腐臭を我慢して、体の震えを抑えた。
「いやー、二部木が死にそうだっていうから。来たんだが。こりゃ、死人が出るな」
知らない声だ。
ぼくは震える体を摩って、この声の主は誰だろうと考えた。
急に空想が頭に溢れた。
そうか!
三部木さんには会っているから、この声は四部木さんか田中さん一家の人だ。
「また食うか!」
すぐに荒っぽい笑い声がする。
この声の主は三部木さんだ。
ぼくは悲しい。
涙が次から次へと流れても、とても悲しかったから胸が熱くなった。
また悲しい歌を心の中で歌っていた。
涙を拭いても拭いても、嗚咽しそうでしばらく両目をごしごし拭いていた。この惨劇を呼んでいる事件は、一体何?
真相は何?
「まあ、夜だな。夜に見つかるよ。ほんじゃ、お前。夜にまたガキたち連れてくるからな」
「俺。死なねえから、腹減って腹減って」
三部木さんの声ともう一人の声が、大笑いしていた。豪快な笑いで、二人は本当の意味で悲しかったんだとぼくは思った。罪の意識もなにもないんだね。
ぼくはその時、二人以外の人が一度も笑ってもいないし、話してもいないことに気が付いた。
でも、確かに誰かもう一人いるんだ。
足音がしたからだ。
「次はあの学校か。確か稲荷山小学校だな。あの俺たちを嗅ぎまわっているガキがいる学校だから、食うのはいつまでも覚えてって腹が膨れるかもな!」
三部木さんの声の後の四部木さんの笑い声で、ぼくはさすがに空想がなくなりカチンときた。
すぐに藁から這い出て、あばら家から外へ歩き出した。
静かに呼吸を整えて、三人の間へ向かった。初めて見る四部木さん。と、もう一人は村の人だった。