「やーめーろー!」
ぼくは叫んでいた。
子供たちはどこへ消えたの……。
街の人たちもいっぱい関わっていたし、もう黒い街に呑み込まれてしまったの……。
あばら家の奥まで、ぼくは歩かされた。そこは一段と暗く。腐臭の臭いが殊更強かった。
「坊主。お前一人か? そうじゃなくてもいいが、どうせ、村田先生か羽良野先生がいるんだろう?」
三部木さんが、古い木々の香りのするあばら家の柱へとぼくを、きつく縛った。でも、丁寧な縛り方だったけど、何故かしら? 優しさもあったかも知れない。
それは、ぼくの体を極力傷つけたくないのだろう。
ぼくのおじいちゃんの部屋より三倍もある部屋。黒く燻っている藁が目立ち。農具が壁に至る所に立て掛けられてある。
この集落で、もっとも古い農家のようなあばら家だった。
ぼくの体はグルグル巻きみたいだけど、顔と口は無事で何でも見たり話せたりできた。
「あの人たちはなあ……悲しいのさあ……人を食わぬ」
村の人が呟いた。
「食わねばのう……。食わねばのう……。生きていけない体じゃのう……」
「違う! そんなわけない! 羽良野先生たちは悲しいわけじゃないんだ!」
ぼくは叫ぶと、ひどい空腹感が一時だけなくなって両腕に力が戻った。それらを一杯に動かそうとした。
何故? それはぼくの心が叫んでいるからだ。
「悲しい人は、きっと自分では気が付かないんだ! 羽良野先生は気が付いていたんだ! 人を殺したって、殺さなきゃならないんだって、きっと、ずっと悲しんでいたんだ!」
目の前の四部木さんと三部木さんが、一瞬、笑うのを止めた。
二人はびくびくと頬が痙攣してきた。
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