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第26.5話「アメリカのニュースと碧族の立場」
🚀 シーン1:静寂の中の報道
ヴェール・バインドの基地戦が終わった翌日。
ゼインたちは碧族の隠れ里に戻り、一息ついていた。
ナヴィスがカウンターに腰かけ、碧素で作られたモニターを見上げる。
画面には、アメリカのニュース番組が映し出されていた。
「速報です。日本国内で活動していたヴェール・バインドの拠点が壊滅しました。」
キャスターの女性が、冷静な口調で報じる。
背景には、戦闘の爪痕が残る基地の映像が流れていた。
「米政府はこの件について『碧族による武力行使』と断定。
今後、対碧族政策の強化を図ると声明を発表しました。」
ゼインは腕を組みながら、画面を睨む。
ナヴィスが苦笑いしながら言った。
「あーあ、これでまた碧族への風当たりが強くなるな」
ジェイコブが手を組み、呆れたように鼻を鳴らす。
「アメリカの対応なんて予想通りだろ。
『銃撃、銃撃、銃撃』。
『排除、排除、排除』。
『壊せ、壊せ』。
それしか考えてねぇんだからな」
画面は別の映像へと切り替わる。
アメリカのニュースキャスターが、政府高官にインタビューしていた。
「碧族の州の存在をどう考えますか?」
高官は表情を崩さず、静かに答える。
「そんなものは、我々の地図には存在しない」
ゼインはその言葉に眉をひそめた。
ナヴィスが呆れたように笑う。
「あいつら、本当に“なかったこと”にしてやがるな」
ジェイコブが画面を見ながら肩をすくめる。
「まぁ、俺がいた頃から変わっちゃいねぇ。
碧族が“州”を作って住んでるのに、政府は完全に無視してる。
でも、刺激されると一気に潰しにかかる。
結局、アメリカは“碧族をどう扱うか”すら決められてないんだよ」
ゼインは拳を握った。
碧族を兵器として利用しようとする動き。
碧族の存在そのものを否定する政府。
そして、ヴェール・バインドのように碧族を狩る組織——。
「……くだらねぇ」
彼は小さく吐き捨てた。
🚀 シーン2:碧族の未来
ニュースはさらに続く。
キャスターが映し出したのは、アメリカ国内の抗議デモの様子だった。
一方では、碧族を支持する研究者や市民たちが声を上げている。
「碧族も同じ人間だ! 生きる権利を認めろ!」
だが、反対派の暴徒たちは叫ぶ。
「碧族はバットバクテリアだ! 地球の病原菌だ!」
ゼインは無言のまま、その光景を見つめた。
ナヴィスがため息をつきながら、飲みかけのグラスを置く。
「結局、どこに行っても碧族の扱いはバラバラってことか」
ジェイコブが苦笑しながら頷いた。
「まぁな。アメリカじゃ、碧族の一部が“支配するべきだ”って思ってるやつもいる。
でも、日本の碧族は“放置するのがいい”って考えが主流だろ?」
ゼインは無言のまま頷く。
確かに、碧族は人間に干渉しないことを基本としている。
だが、そうしない碧族もいる。
「……どっちが正しいんだ?」
ゼインの呟きに、ナヴィスとジェイコブは答えなかった。
沈黙が流れ、ニュースの音声だけが響く。
「——米政府は今後、ヴェール・バインドへの支援をさらに強化し、
碧族の脅威を徹底的に排除する方針を固めました。」
「アメリカは、碧族を使おうとは絶対に思わない。
ただし、側近が碧族だった場合、核以上の力を振りかざす可能性がある——。」
画面のテロップに、ゼインは静かに目を細めた。
🚀 シーン3:束の間の休息
「……もういいだろ」
ゼインがリモコンを取り、画面を消した。
彼は深く息を吐き、椅子にもたれかかる。
「今考えても仕方ねぇ。次の戦いに備えるだけだ」
ナヴィスが笑いながら立ち上がる。
「お前が冷静になってるの、珍しいな」
ゼインはナヴィスを軽く睨むが、すぐに小さく笑う。
「ま、たまにはな」
ジェイコブは立ち上がり、腕を組んだ。
「休憩は終わりか。次は……どうする?」
ゼインは拳を握り、青白い光を灯した。
「ヴェール・バインドの次の動きを探る。
それに、俺も……もっと強くならなきゃならねぇ」
ナヴィスとジェイコブが、それぞれ頷いた。
静かに流れる空気の中で、ゼインは再び前を見据えた。
戦いは、まだ終わらない——。