テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「へ…っ!?」
なんてメロいセリフ言うのこの子!!とツッコみたくなる。
女の子とこういう風に距離を詰め
甘い言葉を囁くのが、当たり前のように彼の中で染み付いているのだろうか。
(きっと…これまで付き合ってきた歴代の可愛い彼女たちも、こうやってスマートにエスコートされて、連れて行かれたんだろうな……)
そう思うと、胸の奥がキュッと少しだけ痛む。
「そ、そういうわけじゃないけど…と、とにかく、早く行こ……!」
止まらない動悸を抱えたまま、私たちは並んで歩き出した。
彼とこうして、仕事以外のプライベートな雰囲気で二人きりで過ごすのは本当に久しぶりだった。
学生時代叶人くんに片想いしていたあの頃。
学校帰りに、彼と少しでも長く一緒にいたくて
周りの友達を上手に撒いて、わざと放課後に残ってみたりもしたっけ。
そんな憧れの塊だった叶人くんが、今こうして自分の隣にいて
そして恋人のように一緒に歩いてくれている。
それ自体が、まるで夢を見ているかのようだった。
それでも、胸の奥の不安はどうしても拭いきれない。
(…と、とにかく!私の今の目標は、叶人くんとえっちをせずに、彼に『一筋縄ではいかないイイ女』だって思わせること!)
都合のいいセフレじゃなくて、本命の恋愛対象になることのみ……!!
私は隣の彼の横顔を見ながら、心の中で静かに熱い決意を固めて、歩みを進めた。
◆◇◆◇
カフェに入り、案内された奥の席についた瞬間
店内の空気が、どこか現実を忘れさせるような
やわらかなオレンジ色の間接照明に包まれていることに気づく。
窓際の席からは、きらきらとした午後の陽光が優しく降り注いでおり
静かで居心地の良い空間が広がっていた。
「俺は…ホットコーヒーと、このカツサンドにしようかな。…さっちゃんは何にする?」
叶人くんは開いた大きなメニュー表を取り出すと、わざわざ私が見やすいように
目の前の席へと優しく向きを変えて置いてくれる。
「あ、私は…このクリームソーダと、お目当ての蜂蜜パンケーキで!」
私は意気揚々と指をさした。
メニュー表をじっと見つめながら
これから運ばれてくる甘いスイーツへのわくわくする気持ちを抑えきれず、どうしても顔が緩んでほころんでしまう。
すぐに上品な店員さんがオーダーを取りに来て、注文はスマートに済まされた。
お冷を一口飲んで一息ついたとき
叶人くんが尋ねてきた。
「そういえばさ……昨日は、楽しめた?」
「昨日?」
一瞬、なんのことか分からずオウム返ししてしまう。
「あぁ、ほら。昨日の夜、佐藤と食事行くって言ってたからさ」
「あ…っ、ああ!それね……っ!」
#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
30
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!