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宇津Q
2,015
#いじめ
るあ🩵🦊🌙
31
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3月の初旬、沙織は国立大学の入試の合格通知を受け取った。天にも昇る気持ちだった。クラス担任も跳び上がらんばかりに喜び、貸与型奨学金の申請手続きのために、沙織の父親を学校に呼んで三者面談の場を設けた。
だが、沙織の父親は思いがけない言葉を放った。沙織を大学に行かせるつもりはないと言い出したのだ。
担任の男性教師は面食らって父親を問いただす。
「どういう事ですか、お父さん? 沙織君が受験する事には賛成だったはずでしょう?」
沙織の父親は椅子にだらしなく座って面倒くさそうに答える。
「ああ、だから、いい思い出になっただろうさ。それでいいじゃねえですか」
沙織は思わず大声を上げた。
「思い出作りで受験したんじゃないわよ! あたしの頑張りは一体何だったの?」
「おめえがいい成績取ってる間は俺も周りに鼻が高い、いい思いが出来た。けど、実際に大学へ行かせてやると約束してたわけじゃねえだろ?」
たまらず担任が口をはさむ。
「いえ、お父さん。沙織君は実際に合格しているわけですし、今後の事を考えても、学歴は無いよりあった方がよろしいですよ」
だが父親は首を横に振り続ける。
「うちにそんな金はねえんですよ」
「いえ、ですから、大学の学費は奨学金で賄えます。沙織君の成績なら申請はまず通ります。入学金さえ出していただければ」
「入学金? いくらだい?」
「国立大学ですから、29万円あれば十分……」
「そんな大金あるわきゃねえだろ。なあ、沙織、いい夢見られたと思って、それで満足しろや」
沙織は真っ青な顔で担任に訊く。
「入学金って、奨学金で払えないんですか?」
担任も青い顔で言う。
「奨学金は入学手続きが完了してから受理される物なんだ。入学金を払い込まないと、奨学金の申請は受理されない」
父親は何がそんなに問題なんだと言わんばかりの表情で言う。
「だから大学なんて諦めて、就職しろや」
沙織の声色が段々と悲鳴のようになっていく。
「大学受験しろと言ったから、就職活動はしてないよ! 今から間に合うわけないじゃない!」
担任も言う。
「そうですよ。お父さんだって、高校3年の時に就活はなさったでしょう?」
「自慢じゃねえが、俺は高校中退だ。あの、ところでよ、そのシュウショクカツドウって一体何ですかい?」
「もういい!」
部屋中に響き渡る大声で沙織が叫ぶ。沙織はカバンから合格通知書を取り出し、縦に二つに引き裂いた。二枚を重ねてもう一度引き裂く。さらに重ねて引き裂く。
担任は沙織が涙を流しながら合格通知書を引き裂き続けるのを、茫然と見ているしかなかった。
数日後、沙織は家族の誰にも告げず、家を出て行った。
コメント
1件
第46話、読み終わりました……。沙織が合格通知を自ら引き裂く場面、胸がぎゅっとなりました。あれだけ頑張ったのに、父親の「いい思い出になっただろう」という言葉が、あまりにも残酷で。最後の「家を出て行った」という一文に、沙織の静かな決意と寂しさが滲んでいて、続きがすごく気になります。親のエゴが子どもの未来を歪めてしまう、その切なさが心に残りました。