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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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②過去〜実は僕、輝はアメリカで生まれた。


母は世界で活躍するモデルの純日本人、父はハリウッド俳優のアメリカ人だった。


だからフルネームはゲミノールム・ノヴァ・輝。


たまたま母の遺伝子の方が強く、僕はほぼ日本人の顔をしているけれど、眼の色は父と似たどす黒い赤色。周りのみんなからは距離を置かれていた。


日本に来たのは僕が6歳になった頃。もちろんあの頃は英語なんてぺらぺらだったが、今はもう…忘れてしまった。


日本に来てからは東京ど真ん中のタワーマンションで過ごす…はずだった。


マンションまでもうすぐというところで両親は亥嚙赤褄(いかみあかづま)という人物に殺された。


なぜ殺されたのか、今でも分かっていない。


僕はいきり起きた事実を受け止めきれず、記憶の一部をなくした。


アメリカで過ごしていたということ、両親の職業、2人が殺されたことは覚えている。でも、両親の顔とアメリカで園児の頃どこで過ごして、どんな友達がいたのかは今でも全く思い出せない。もちろん、あれだけぺらぺらだった英語も。



ー1番重大なのは両親を殺した人物を、今はもう覚えていないこと。ー



あの時の僕は両親が息の根を引き取ったこと、目の前の男に殺されたことをなぜか理解できた。


赤褄は僕を酷く怖い顔で睨みつけ、いきなりニヤリと笑い去り際に呟いていた。


アカヅマ「さて…あの子はこれからどうなるかな。」



僕はその後両親と一緒に薄暗い路地裏で寝ようと、2人を静かに見つめた。


不思議なことに悲しい、憎いという感情が全くなく、まるで両親がただ寝ていると思い込んでいるかのように冷静だった。


「…?」


2人のポケットが膨らんでいたのが見えた。


僕は興味本位で中にあるものを取り出した。いつも2人がこのポケットは絶対触るんじゃないと言っていたから余計興味が湧いた。


「…!!」


そのあるものとは散弾銃だった。


僕は武器が大好きでいつも図鑑を読んでいた。だから僕にはそれが人を殺すための銃で、散弾銃だということも理解ができた。


僕の親は人を殺したことがあるのだろうか。


もしそうだとしたら僕の両親を殺した人は警察官で、あの場で死刑と判断して殺したのかもしれない。そんなことをまだあんな幼かった僕は考えていた。


銃を見つめてかちゃかちゃといじくっていた。


すると突然、お腹がなった。


両親の死となぜか2人のポケットに入っていた散弾銃で頭がいっぱいで、自分の身体のことなんて気にしていなかったのかもしれない。


空腹の限界だったのか、いきなり気持ち悪くなった。


僕は2本の銃をポケットにしまい、もう2度とここには戻ってこないという予感がしたため、2人に口付けをして歩道を歩いた。


10分ほど歩いた先に森はあった。


立ち入り禁止と書かれた看板を無視し、僕は森に突っ込んだ。


少し歩くとクマが見えた。


「…食べられるのかな…」


ーバンッ!ー


そして僕は銃を撃った。


クマが…倒れた。


大きなクマだった。だけれどさっきの弾丸でクマは死んだ。


何メートルも離れているところから、僕はクマの心臓を狙ったのだ。


思い出すだけでもなぜあの時の僕がクマを一撃で、しかも正確に心臓を狙って撃ち抜くことができるのだろうかと、バケモノすきで鳥肌が立つ。


僕がそのクマを食べようとした時。


ーパチパチパチパチー


拍手の音がして僕はばっと振り返った。


それはついさっき両親を殺した赤褄だった。


アカヅマ「ゲミノールム輝くん、素晴らしいよ!君は殺しの才能を持っているようだね。それに…君は…」


僕は人間を忘れ、人になりたての狼のようにクマの腕を引きちぎり噛みつこうとしていた。


赤褄はそんな僕を見て、今日見た中で1番不気味な笑顔で僕を見つめた。


アカヅマ「君は波瀾焼になれる器だ。1000年に一度と言われる波瀾焼の器。君はきっと今までの誰よりも波瀾焼をコントロールできるようになるだろう。」


あの時の言葉を幼い僕は理解ができなかった。


でも、これから何かが始まる予感はあった。


アカヅマ「さぁ輝くん。そんなもの捨ててわたしと一緒に行こう。」


僕はこくりと頷き、黙って赤褄の手を取って歩いた。



ーここからだった。僕の人生が歪み始めたのは。ー



少し歩いた先で赤褄は立ち止まった。


目の前を見ると一軒家があった。


赤褄の家なのか、電気をつけ僕をお風呂まで連れて行き、丁寧に洗って服を用意してくれた。


その後温まったスープを出してくれて一息ついた時。僕は赤褄に初めて言葉を発した。


「ぼくの親を殺したのは亥嚙赤褄って名前の人だよね。貴方はその赤褄でしょ?」


目の前にいた僕が赤褄だと思っていた人はびっくりした顔をした後、にこやかに笑った。


???「ううん、わたしの名前は12°(7だよ。君の両親なんて見ていないけど…。わたしは君が餓死寸前だったから助けてあげただけさ。命の恩人ってところかな。」


「…?」


赤褄ではないその男性の名を僕は聞き取れなかった。


たまたまじゃない。“一瞬耳が聴こえなくなった”ような感覚だった。


「ごめんなさい。ぼく、顔を見ただけで名前の予想がつくんだけど、貴方の名前はもやがかかっててよく分かんない。9割の確率でいつも当たるんだ。貴方のことはなんで呼べばいいの?」


男性はほう…と言って考え込んだ後、僕を見つめた。


???「君は今日からわたしの赤いディナーという殺し屋に入ってもらう。でもボスもあれだしなぁ…。わかった、お父さんでいいよ。」


その時の僕はなんだか狂ってしまっていて、にぱっと儚い笑顔を見せていった。


「新しいお父さんうれしい。」



ーそれから6年後ー



僕は12歳になり、歴代最年少で次期ボス候補となった。


10歳になってから僕は波瀾焼の器として完璧に機能するようになった、らしい。ボスはそう言うが、僕はその波瀾焼が何者なのかすらよくわからない。


ボス「…ウラン」


スナイパーの扱い方を教えてもらっている時に、ボスは突然その言葉を口に出した。


「ッ…」


僕は何かに反応したように目を見開いた後、3秒ほど気絶してまた意識を取り戻した。が、それは明らかに輝とは違うオーラを放っていた全くの別人だった。


ボス「やっと来てくれた…」


「ボス、はじめまして。」


輝じゃない、一時的にウランとなった僕はボスににんまりと笑いかけた。



それから僕はウランというもう1人の自分ができた。


最初は変な感覚だったが、段々と慣れていき体の一部となって、身体の主導権を持つ輝の言うことを聞いてくれるようになった。


でも、ボスに名を呼ばれると、いくら輝で抵抗しても出てきてしまう。現在の主導権はウランになってしまったが。




長い長い話が終わり、僕はニコアよりも一歩前に出て振り向いた。


「これが僕の過去。僕は命の恩人であるボスの目的のために動いてるだけ。殺すっていう行為を楽しいと思ってしまうのは今でもよく分からない。でも…ニコアもそうでしょ?」


ニコアは背筋がゾクっとした。なにか、とんでもないモノが自分に話しかけているような感覚だった。


ニコア「…まあ俺もボスには色々と助けられたしなぁ。俺は殺しやってる時人が殺されるって確定されてんのに、変えられない運命なのに、それでも逃れようとしてる姿を眺めるのが好きやから、今でも殺し屋やってはるのかもな。」


「相変わらずサイコパスだね。」


僕はそう言って、もうすぐそこにある目的地の僕たちのカフェまで急いだ。


ニコアはカフェに入っていくウランを見届けたあと、真上にきている月を見上げながら呟いた。


ニコア「お前の親を殺した奴がボスなんじゃないかっていう説は、思い浮かばなかったんかなぁ…」


ニコアはボスの本名を知っている。


生まれつき耳が良く、洗脳などに強い耐性を持つニコアは、入りたての頃ボスが自分の名前を言った時聞こえてしまったのだ。


さっきウランの話を聞くまではみんな知っているモノだとばかり思っていた。


ボスの名は


ー亥嚙赤褄ー


ニコア「…ウランの、輝の両親を殺したのはボスやで。」


ニコアはウランが入っていったカフェをもう一度見つめて、弱々しい笑顔を見せた。

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